短期連載となる本コラムの最終回では、サービスロボット市場を取り上げます。
サービスロボットは、既存産業の多くが世界的な景気後退の影響を受け深刻な市況にある中、数少ない日本発の新市場の1つとして期待されています。ですが毎年、様々な企業が新規参入を発表し、様々なロボットが開発され、かつユーザー側からもサービスロボットへのニーズも高まっているにもかかわらず、事業化に成功している企業は、ほんのひと握りです。いまも一大産業になり得ていないのが現実です。
このようなサービスロボット業界の最新動向を把握するため、「2009ワールドワイドFAロボット/RT関連市場の現状と将来展望」では、2008年版の17品目から品目の追加やカテゴリの見直しを行い、「業務用ロボット(9品目)」、「医療・介護・福祉用ロボット(7品目)」、「家庭用ロボット(4品目)」の3カテゴリ計20品目のサービスロボット市場を取り上げました。
以下、これら20品目の市場を積み上げたサービスロボット市場規模(日本国内市場規模)の推移を紹介します。
表調査対象サービスロボット一覧
サービスロボットのカテゴリ別市場規模推移(2007年実績~2012年予測 金額ベース)】
サービスロボット市場の概況(主要分野の動向を整理)
今回対象にしたサービスロボット20品目の市場規模は2008年実績で77億円となり、2012年には2008年比で3倍の231億円になると予測しました。
現在は、掃除ロボットやホビーロボットなどの「家庭用ロボット」市場が約80%を占め、同市場の中心を担っています。すでに個人ユーザー向けに一定規模の市場を確立しており、安定した推移が見込まれます。現在はコミュニケーション機能をはじめ、実用性だけでなくエンターテインメント性を重視したものが多いですが、将来的には家事の代行など生活支援も担えるような高度な機能も要求される見込みです。
【2008年62.5億円 → 2012年109.6億円(2008年比175.4%)】
清掃ロボットや施設点検ロボットのような「業務用ロボット」は、人や既存機器が行う業務やサービスの代替、もしくは支援するロボットと見なされています。ゆえに、作業品質の向上や作業員の負担軽減、コスト削減、さらには、新たなサービス提供といった実用的な効果が求められます。
現在は、単一業務(例えば製造業務)に特化したタイプのものを中心に、実用化されているロボットが多数あります。景気後退の影響により、労働者の代替としてのニーズは弱まっているものの、実用性の高いロボットとして今後も、様々なシーンで様々なユーザーに採用される可能性があり、2012年にかけて市場拡大が期待されます。
【2008年10.2億円 → 2012年48.6億円(2008年比476.5%)】
パワーアシスト・増幅スーツや移乗支援ロボットのような「医療・介護・福祉用ロボット」は、高齢者や身障者の生活支援や、介護する側や治療する側の負担軽減を目的に開発されたものです。安全性や法制度などの問題があり、また、要求される技術レベルが非常に高いため、現在の市場はごくわずかです。
しかしながら、少子高齢化が過度に進む中、BtoBとBtoCの両方で、その期待度とニーズは非常に高いです。しかも、実用化に向けた様々な取り組みが展開されていることから、2012年にかけて市場の急拡大が期待されます。
【2008年4.3億円 → 2012年72.8億円(2008年比1693.0%)】
サービスロボット市場に求められる取り組み
本レポートで毎年取り上げているサービスロボット市場ですが、2008年における市場規模は77億円という、依然として小さな規模にとどまっています。わが国は、サービスロボットという新市場を立ち上げる産みの苦しみを味わい続けていると言えるでしょう。
一方、海外に目を向けてみると、米国や欧州、韓国などでも積極的にサービスロボットの開発や普及に向けた環境整備に積極的に取り組まれており、サービスロボットの分野によっては、日本以上に進んでいるところが見られます。『サービスロボット先進国』と言われて久しい日本ではありますが、このままでは、その地位も危ういものになりかねません。海外の取り組みも参考にしつつ日本ならではの特徴を付加することで、日本発のサービスロボット市場の立ち上げ・拡大につなげていくことが必要と思われます。
では実際に、どのような取り組みが求められるのか? 3つほど例を挙げてみます。
(1)企業/研究機関のアライアンスの推進
日本ではこれまで、サービスロット市場に対しロボットメーカーそれぞれが単独で取り組むことが中心でした。しかし、個々での取り組みには限界があり、なかなか事業化に至らないという課題がありました。
単純に販売や製造を外部委託するといったものだけでなく、産学連携やスピンオフベンチャー、メーカーとユーザーとの連携(共創)といったかたちで企業の枠を越え、複数企業や大学、研究機関が研究開発や製造、販売などの段階で連携し、事業化を加速する必要があると思われます。欧州では企業の枠どころか国の枠を越え、EUとしてのロボットプロジェクトが進められています。
(2)行政等によるロボット普及に向けた取り組み
サービスロボット市場の拡大にはプレーヤーだけでなく、国や地方など行政からの支援も欠かせません。わが国における支援策は、いまだに基礎研究や要素技術への予算投入が中心です。結果、事業化に向けた支援や、安全基準の策定や法整備などサービスロボットが普及する環境づくりは遅れています。
これに対し、韓国ではサービスロボットの実用化に向けた法整備が進められ、そこに多額の予算が計上されています。米国では軍事ロボットの実用化に多額の予算を費やしています。また、欧州の福祉先進国では福祉に対する意識が非常に高く、メーカーよりはユーザーとして先進的なロボットを進んで導入する環境があります。
日本でも国や地方レベルでサービスロボット普及に向けた具体的な取り組みを推進し、メーカーとして、そして、ユーザーとしての市場環境を整備する必要があるでしょう。
(3)RTによる既存機器の高付加価値化
サービスロボット市場の拡大には課題の克服だけでなく、自分たちの強みを活かしたビジネス展開が求められます。例えば、米国では軍事ロボットでの技術開発がサービスロボットの機能の向上につながっています。
わが国は、ロボットを構成するセンシングや駆動、制御などのロボット要素(RT)においては、世界的に見ても高い技術水準にあり、その強みを生かしたビジネス展開が期待されています。その1つとして、家電や住宅設備などの既存製品や建物にRTを組み込み、多機能・高機能化したRT家電やRT住宅(スマートハウス)などの開発が進められています。また、今話題の植物工場もRTを利用した高付加価値農業と言えます。
これからはロボットの姿形(ヒューマノイドなど)をしたものだけではなく、RTを活用した製品としての市場展開も1つの方向性であることは間違いないでしょう。
確かに、サービスロボット業界も景気後退の影響を受けています。開発費の削減やユーザー企業の業績悪化に伴う開発方針の転換を強いられているロボットメーカーもあり、暗い話が聞かれます。ですが、依然として新産業としての期待値は非常に高いです。また最近は、より具体的で、かつ市場性の高いサービスロボットの開発に絞り込まれているように思われます。以前にも増して、地道な取り組みがなされているような印象を受けます。
当社では、その市場拡大に寄与するよう、国内の市場動向だけではなく海外の市場動向も、さらには、ハードウエア一体型のロボットに加えRTの市場動向も幅広く追跡していくつもりです。来年度のレポートも引き続き、よろしくお願いいたします。
■コラム執筆担当
武林 周一郎さん(Takebayashi Syuichiro)
㈱富士経済 大阪マーケティング本部 第一事業部
URL:http://www.group.fuji-keizai.co.jp

