9月14日、日本ロボット学会学術講演会では、トヨタ自動車の井川専務による特別講演「ロボット開発の現状と未来」が開催されました。工場設備で働くロボットやパートナーロボット、介助犬ロボットなど、未公開映像がふんだんに盛り込まれた講演に、来場者は興味津々の様子でした。今回から2回に分けて、講演内容を紹介します。公演中の様子はお見せできませんが、ご了解ください。
モビリティロボットの開発など、講演は非常に興味深い内容でした。
次世代工場のロボット
トヨタの次世代工場は、シンプル・スリムで、車種変更に強く、環境や人にやさしいプラントを目指しているようです。
従来の溶接工程では、車種ごとに専用の治具をボディの外側に配置することにより、ラインを共通化していました。ところが、治具が邪魔になり工程を短くできないという欠点があったのです。そこで治具を内側(車体下)に配することにより、ラインをどのような車種にでも対応することができるようになりました。また、ボディの周囲にあった治具がなくなったことにより、小型ロボットをボディ周囲に配置、作業効率を上げることにも成功しています。
設備のデジタル化
塗料を塗る際には、ロボットが塗装ガンを持ち、車体に対して垂直になるような向きに吹き付けて無駄を少なくしています。
素材を搬送するコンベアは素材の大きさに比べて大きなスペースが必要となります。コンベアをロボット化し、バケツリレー方式で素材を運ぶことにより、スペースや電力を削減し、品質を上げることに成功したそうです。
以上のようにロボット化が進むことにより工場設備をデジタル化し、そのデータを元にバーチャル設備で不具合がないか確認することができるようになりました。また、設備ができる前にバーチャル設備に立ち会い、作業性までも事前に確認ができるため、設備立ち上げとともに素早く稼働することができるのです。
今後はパワーアシストも導入
工場設備での今後の取り組みについては次のように言及しています。組み立ての工程で、50kgのインパネを車体に搭載するのは人手によっていますが、ロボットでパワーアシストすることによりわずかな力で素早く搬送、正確な位置決めができるのです。
ほかにもウインドシーラ塗布のように、熟練した技能が必要な作業はロボットにアシストさせることにより、初心者でも高品質な結果を出すことができるようになります。
パートナーロボット
愛・地球博のトヨタグループ館に登場したロボットバンド「コンチェロ」、搭乗二足ロボット「アイ・フット」の開発コンセプトについて説明がありました。
コンチェロでは道具を器用に使いこなせること、人のような身軽さ、柔らかさが披露されました。アイ・フットでは3次元での移動が可能な未来型のモビリティとして提案したとのことです。
愛・地球博では上記のロボットたちによるショーが行われました。一日あたり13~14回、会期中休みなく185日間で2,555回ものショーを行ったことになります。これは生産ラインにおける車両生産にも匹敵する回数だそうです。
ショーの初期には徹底的に品質を造り込んで故障率を下げています。ところが、故障率を下げても偶発故障は起きます。そのために耐久試験を行って重要メンテナンス項目を選択、そこを定期的に点検・交換することのより2,555回のショーで一度も大きな故障を起こさずに済んだそうです。
トヨタヒューマノイドの二足走行技術
今回の講演で、トヨタヒューマノイド(人間型ロボット)の走る様子が映像で初お披露目されました。以下、その技術を紹介しましょう。
車のサスペンション制御である「スカイフック制御」は、上下方向の車体制震に使われているものですが、これをロボットの前後左右の姿勢安定に応用しています。
また、つま先を付けることにより重心を高く保持でき、その結果、膝への負荷を低減させ、歩幅を広げることができたそうです。
走行の際に発生する関節への衝撃により、姿勢が不安定になりがちになります。そこで、関節を柔らかくする制御で衝撃を吸収し、安定的に着地しているのです。足首と膝関節を柔らかくする制御により、スローモーション映像で見ても、着地の際の足裏のバタツキが見られませんでした。
速く走るための技術
速く走るためには膝を速く振り出す必要がありますが、このときモーメントを打ち消さないとバランスを崩してしまいます。この問題は、手を振り、体をひねるといった全身協調制御技術によって解消しています。
また、リアルタイム制御により着地位置を補正していますので、姿勢が変化しても安定して走ることができます。足踏み状態のロボットを人が押しても倒れない様子が映像で紹介されました。
これらの技術により、トヨタヒューマノイドは時速7kmで走行することができるようになったのです。ホンダのヒューマノイド「ASIMO」は走行速度が時速6kmですから、ヒューマノイドでは世界最速といえるでしょう。ただし、トヨタの場合は実験室での記録映像ですから、早く一般にも公開して欲しいものです。
モビリティロボットのある生活
トヨタモビリティロボットの開発ロードマップも示されました。ベッドから起きたらロボットに搭乗、家の中から公道、スーパーやアウトドアといったあらゆる環境で移動できるモビリティロボットを開発していくとのことです。
2009年までに病院等の施設内の移動ができるようにし、2013年ごろまでに雑踏に出て人を回避したり、自分の位置を高精度で計測できるようにする予定です。さらに2016年ごろには、ITS協調により公道で危険予知などの人に近い判断能力を持ったモビリティロボットを作ることを目標としているそうです。
(次回に続く)


