9月30日から10月4日まで開催された「CEATEC JAPAN 2008」で『最も賑わった展示スペース』と言えば、おそらく村田製作所(以下ムラタ)のブースだったと思います。来場者のお目当ては、本イベントが初めての一般公開となる、電子部品PR用一輪車ロボット『ムラタセイコちゃん』でした。
| ムラタブース内のステージ上に並ぶムラタセイコちゃん(左)とムラタセイサク君(右)。 | ムラタブース内の実演ステージ前には黒山の人だかり。セイサク君とセイコちゃんが登場すると、誰もその場を離れようとしません。 |
私は、『ムラタセイコちゃん開発プロジェクト』において『筐体製作プロデュース』を担当したこともあり、感慨深くムラタブースを訪問しました。社員の皆さんはとても誇らしげで、また、感謝の言葉もたくさんいただきき、喜ばしい気持ちで一杯になりました。
今月のコラムでは、ムラタセイコちゃんの初期の開発過程を紹介するとともに、本プロジェクトを通じて感じた、企業PR用ロボットを開発するうえでの重要なポイントを説明します。
ムラタセイコちゃん開発プロジェクトのキックオフ
私が本プロジェクトのキックオフミーティングに呼ばれたのは、今年の6月上旬でした。CEATECの開幕まで、すでに4カ月を切っていました。その時点で、一輪車の自律安定走行に必要なメカ/制御機構の研究開発は、ムラタ社内ですでに着手されていました。その一輪車ロボットには、ムラタ製のジャイロセンサが2個搭載されるなど、ムラタの優秀な部品/モジュール類が各種搭載され、一輪走行の機能を十分備えていました。
また本ミーティングで、私は開発プロジェクトリーダーが描く「成功ストーリー」を深く理解し、当社の役割を明確に把握することができました。
当社の役割と目標!?
キックオフミーティングを終えた時点で、私は2つの目標を掲げました。
ロボットの機能価値を構成する『保全性』『耐久性』に重点を置き、外装を装着しても機能価値が損なわれない、むしろ向上するロボットに仕上げること。これが第1の目標でした。例えば『保全性』の観点で言えば、「日常のバッテリー交換をいかに容易に短時間で実現できるか」も検討課題の1つでした。
第2の目標は、ムラタの女性デザイナーさんたちが描いたムラタセイコちゃん像を3次元で可視化し、表面的な外装デザインだけでなく、裏側にある熱い思いも可能な限りカタチにする。そして、子供から大人まで幅広い層の方々に『共感』と『感動』を伝えられるようにすることでした。
冒頭で言いました『筐体製作プロデュース』とは、具体的にはこれらを指しています。
| どの角度から見ても、デザイナーさんたちが思う“セイコちゃんらしさ”を失わないように努めました。私は、後ろ姿がお気に入りです! |
ムラタのロボット開発体制
個人的な見解として、ムラタがムラタセイサク君やムラタセイコちゃんというロボットの開発により大きな経済効果を獲得している内部要因の1つが、『スムースな社内連携』にあると感じています。
「ムラタセイコちゃんの開発プロジェクトのキックオフミーティングを、広報部が主催する。開発スタート時点から広報部が参加する」
これまで、数多くのロボット開発プロジェクトに関ってきましたが、そのような企業はほかにはありません。ほとんどの場合、「開発部署でプロトタイプが完成した時点で、初めて広報部がそのような話を知る」というケースばかりです。さらに、ムラタでは新商品の企画/開発部門などとも連携を図り、どのような電子部品を「ロボット」という媒体を通してPRしていくかを、広報部が中心となって戦略を練っています。
ムラタの社内連携のイメージを言葉で表現すると、「ゴールへ向かうベクトルの始点は、各部門、各担当者で違えども、その始点は綺麗な輪を描き、そして、すべてのベクトルの先端は、その輪の中心を向いている」といった感じです。
『スムースな社内連携』は、部門間のコミュニケーションが円滑でない企業にとっては実現し難いことです。しかしムラタのように、非常に風通しの良い社風であればこそ、成し得ることができたと感じています。さらに、モチベーションの高い若手メンバーの考えを重視し、各部門の意見を、横串をズバッと挿すかのように一本にまとめ上げられるプロジェクトリーダーがいたことも、大きな強みと言えるでしょう。
以上述べたように、ムラタには『スムースな社内連携』という強みが下地としてあるからこそ、半年間という短い期間のうちに、描いていたコンセプト通りのムラタセイコちゃんを完成させることができたのだと考えています。
一方、私は、そのような環境下で「どのように開発を進めれば、ムラタの開発メンバーが描くストーリーのゴール地点(輪の中心)に、自社のベクトルを合わせ込めるか?」が開発スタート時の大きな課題でした。
自社のPR用ロボット開発に興味がある企業に向けて
企業PRを目的とするロボットを開発する際には、開発初期段階から広報部が関わる体制を構築することをお薦めします。技術者視点ではなく“顧客視点”で、冷静にロボットを分析できる部署が加わることは、ロボットを用いた企業PR戦略の“成功の鍵”と言えるでしょう。開発コンセプトの構築段階で、完成後のメディア戦略が想像できる(「ロボットが登場するこんなCMを制作すれば、自社の思いを伝えることができそうだなぁ~」とか)状況であれば、開発メンバーの意識も統一され、最も理想的であると考えます。
まだまだ書きたい内容が盛りだくさんですが、今月はここまで!とします。
来月も、別の視点からムラタセイコちゃんをテーマにコラムを執筆します。『自社のPR用のロボットを開発したい!』『自社のロボットをより価値あるものにしたい!』とお考えの方々にヒントとなるような話題を提供したいと思います。お楽しみに!!
■コラム執筆担当
小西 康晴さん(Konishi Yasuharu)
(株)ロボリューション 代表取締役
URL:http://www.robot-revolution.com/
■関連サイト
村田製作所
http://www.murata.co.jp/
ムラタセイコちゃんHP
http://www.murataboy.com/ssk-3/
村田“科学少年少女”製作所 エレきっず学園『ムラタセイコちゃん活動記録』
http://www.murataboy.com/diary/archives/cat24/





