今回のコラムでは、電子部品メーカーがロボット開発により、企業価値を向上するために必要なことを紹介します。題材となるロボットは、先月に引き続き『ムラタセイサク君(R)』と『ムラタセイコちゃん(TM)』です。
注)『ムラタセイサク君』は株式会社村田製作所の商標(R)、『ムラタセイコちゃん』は株式会社村田製作所の登録商標(TM)です。
ロボットを製作したメーカーがロボットを売らないロボットビジネス
ムラタセイサク君、ムラタセイコちゃんは企業PR用として開発された、単なるキャラクターロボットではありません。機能価値としてムラタの優秀な電子部品をPRし、同時に、ムラタに所属する技術者の優秀さも十分訴求しています。さらに、さまざまなロジックで、人に『共感』や『感動』を与えています。ムラタのロボットを活用した取り組みは、電子部品メーカーが自社の技術をPRするためにロボットを開発し、成功を収めるための重要な要素が詰まっています。
『ロボットの価値は「機能価値」と「感性価値」の融合/両立で決まる。』と捉える当社のロボットプロデュース事業の理念に当てはめても、ムラタセイコちゃんは見事なまでに感性価値を備えています。過去のコラムで紹介した通り、感性価値とは「デザイン」「こだわり」「調和「共感」「遊び心」の5項目で構成される価値のことです。
それでは、ムラタセイコちゃんに当てはめてみましょう!
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サービスロボットに求められる価値。 |
①デザイン:女性デザイナーさん3名が、女性視点で女の子ロボットをデザイン。まず、見てかわいい! 近寄って見てみたい! デザインコンセプトは、『女性から見て、好感が得られる外観デザイン』。
②こだわり:まず、「なぜその企業が、ロボットを創ったのか?」を明確にすることが大切です。ムラタの開発目的は、『電子部品をPRすること。企業イメージのアップ。CSR活動の一環としての「子供の理科離れ」を抑制する』。この3つが大きなウエイトを占めています。加えて、ロボット誕生の裏側にある開発秘話(苦労)をみなに伝える。「CEATEC JAPAN2008」のムラタブースでは、開発メンバーの生の声がVTRで紹介されていました。誰がどのような思いで製作したのかを『見える化』しておくことは大切です。なぜなら、それが感動の連鎖をもたらすからです。
③調和:セイサク君という存在ありきで誕生したセイコちゃん。矛盾点を感じることなく、2人を受け入れてもらえるよう、バランス・調和にも徹底的にこだわっています。
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セイサク君とセイコちゃんの筐体は、素材、製造方法、塗装方法に至るまで、まったく異なっています。しかし、2人で並んだとき、見た目で違和感が生じないようバランスおよび調和を強く意識しました。 |
④共感:デザイナーさんのこだわりから生まれるストーリーを可視化し、子供から大人まで幅広い層の方に受け入れられるデザインとなるよう工夫されています。また、展示会場では、コミュニケーションデザインの1つとして、『セイサク君の科学』という冊子を配布。『伝えるためのツール』を準備することで企業と顧客との距離が近くなり、より強い共感インパクトを与えています。
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コミュニケーションツールとしての役割も持つ冊子『セイサク君の科学』。 |
⑤遊び心:遊び心とは、『クスッと笑ってしまうロジックを組み込むこと』と言い換えることができるでしょう。例えば、セイコちゃんでは、ほっぺが赤くなったり、青くなったりと、ほっぺの色で今の気持ちを表現することができます。その表情をどのように受け取るかは、各人の自由な発想に任せ、開発側は、その「のりしろ」を持たせることを強く意識します。遊び心は、決して『押し付け』であってはならないのです。
ムラタの電子部品と共感・感動ロジックとの関係
ここで、ムラタの製品について紹介すると、先進の材料技術から生まれた半導体磁気抵抗素子や圧電セラミックス材料を応用し、温度、赤外線、超音波、振動、角速度、加速度、角度、回転、位置、磁気、電位など多くのセンシング素子を提供しています。セイコちゃんは、傾き検出用のジャイロセンサを2個搭載し、前後方向は車輪、左右方向は腹部のホイールの回転制御によってバランスをとっています。
さらにムラタでは、発音部品として圧電スピーカーや製品としてのスピーカー「球形ツィータ」も開発しています。ムラタの電子部品をPRするために、セイサク君やセイコちゃんにしゃべらせることは容易です。しかし、2人はしゃべりません。なぜだと思いますか?
その理由は、2人は、電子部品PR用ロボットであって、コミュニケーションロボットとしての役割を求められていないからです。ロボットに無理やりしゃべらせるとキャラクターが引立ってしまい、親近感が薄れてしまいます。それにより開発目的が大きくブレる恐れがあります。
ムラタは、キャラクタービジネスをしたいわけではありません。キャラクターグッズを開発・販売というビジネスモデルは、ムラタの中にまったく存在していません。そこに陥らないように注意を払っていれる印象さえあります。しゃべることによる自社部品のPR効果と、しゃべることによる感性価値の低下がもたらすマイナス効果とを比較した結果、「しゃべらない」という選択をされたのだと考えています。
セイサク君は、何も言わず直向に自転車をこぎ、たまに倒れて失敗もします。ムラタでは、それも見せます。しかし、必ず再度挑戦します。まさに七転び八起きです。驚くことに、失敗しても観客はステージから離れません。離れるどころか、さらに前のめりになります。見ている観客は、大人も子供も、さらに強く「セイサク君、がんばれ!」という気持ちが生まれてくるのです。失敗しても再度挑戦し、前を向いて進み続ける姿勢が、ムラタの研究開発に対するスタンスを表しているように感じられ、企業イメージアップにつながっていると言えるでしょう。
電子部品のPR媒体としてのロボット
私は、センシング技術に関連した展示会には、できる限り訪問するようにしています。ところが、最近はワクワク感、ドキドキ感を感じることがあまりありません。その原因は、同じような展示会ばかり訪れているからかもしれませんが、展示する側の『伝える行為』にも課題があるように感じています。
例として、動物園を挙げるのは奇異に思われるかもしれませんが、この『伝える行為』の良い例が、北海道の旭山動物園の成功にあると考えています。電子部品メーカーの展示ブースも、「電子部品の姿・カタチを見せるだけの『形態展示』ではなく、ロボットという媒体を用いた『行動展示』に切り換えることで、顧客に新たな多くの価値を提供できる!」と私は確信しています。
『ムラタセイサク君』、『ムラタセイコちゃん』は、その価値を持ったロボットとして、未来に向かって、先頭をきって走り続けることでしょう。
■コラム執筆担当
小西 康晴さん(Konishi Yasuharu)
(株)ロボリューション 代表取締役
URL:http://www.robot-revolution.com/
■ 関連サイト
株式会社村田製作所
http://www.murata.co.jp/
ムラタセイコちゃんHP
http://www.murataboy.com/ssk-3/





