人の役に立つヒューマノイド(人間型ロボット)を目指して
2月20と21日、横浜スクエアにて「第2回 ヒューマノイドヘルパープロジェクト(以下:HHP)」が開催されました。HHPは人の役に立つロボットを、競技を通して発掘し商品化することを目指すものです。
| 写真1 HHPの合間に「ROBO-ONE軽量級」の認定大会も開催されました。 |
主催は2足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」を運営するROBO-ONE委員会です。ROBO-ONEの目的は、ヒューマノイドによるエンタテインメントを通じ、より多くの人々にロボットを理解してもらうとともに、参加者の意欲や技術レベルを高めてもらうことです。2002年の第1回大会から10年近く経ち、参加者の持つ技術が格段に上がったため、いよいよ人の役に立つヒューマノイドの開発プロジェクトを立ち上げる時期が来たのです。共催が「かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会」ということもあり、本大会からロボットが商品化され、周辺ビジネスが誕生することも期待されています。競技会ではなくプロジェクトと銘打っているのは、こうした理由のためです。
| 写真2 歩行中に倒れそうになる「ドカ はるみ」をレフリーが支えています。初めての大会ということもあってレフリーのサポートは必須でした。 | 写真3 「MUSASHI」が床にお茶を注ぎ始めたため、レフリーが慌ててバケツを持ってきました。操縦者は机の上のコップに注ぐつもりなのです。ロボットに搭載されたカメラ映像だけを見て操作するルールのため、思いどおりに操縦することができません。 |
前回の大会では、川崎の商業施設において「お買い物」をすることがテーマでした。今回は自宅に来客があったときの「おもてなし」がテーマです。予選は「ペットボトルのフタを開けて、コップに水を注ぐ」「ピンポン玉が乗ったお皿をお盆で運ぶ」「30分耐久走レース」、決勝は「ファッションショー」「ダイニングキッチンを使ってのおもてなし」でした。
| 写真4 「THKR-4」がペットボトルのキャップを開けようとしています。 | 写真5(左)、写真6(右) 「THKR-4」を製作したチーム「CAP Project」はマスタースレーブ方式での操縦です。写真6は「THKR-4」から送られてくる映像です。広角レンズを用いているので広範囲を見渡せますが、歪んでいるため操縦は難しそうです。 | |
| 写真7 30分間歩き続ける耐久レースです。途中、倒れるロボットもいましたが、致命的な破損もなく最後まで完走しました。 |
決勝では実際に冷蔵庫を開けてペットボトルを取り出し、ダイニングテーブルまで運ぶことが課題のため、30cm程度のロボットでは手が届きません。必然的に身長が1m程度はないと参加できないのです。このクラスのロボットを製作するには数十万円~数百万円かかるということもあって、今大会の参加数は3体だけでした。
| 写真8 ダイニングキッチンに据え付けた俯瞰カメラの映像です。この映像を操縦者も見ることができればロボットの操作もしやすいのですが、観客用の映像なのです。 | 写真9 「THKR-4」のカメラ映像です。冷蔵庫の中を確認しているところです。右は頭部に搭載したカメラ、左は腰部分に搭載したカメラからの映像でしょう。 |
HHPの将来目標として、単身赴任している家族や一人暮らしの祖父母の手伝いをロボットがする際、操縦は遠隔地にいる家族がインターネット経由で行うことまで考えています。本大会でも、操縦者はロボットを直に見ることはできません。ロボットに搭載したカメラからの映像だけで操縦することが義務づけられているのです。
レスキューロボットでもロボットに搭載したカメラ映像を見て操縦しますが、ロボット自身を俯瞰できるカメラがアームの先に搭載されています。HHPの出場者はロボット自身を俯瞰するカメラはデザイン上、美しくないものと考えるのか搭載を避けています。また、ペットボトルのフタをはずすにも専用の手をつくればよいところを、人の指形状やペンチのような汎用向けの形状で参加しています。競技テーマが変わっても汎用向けの手ならばつくり直さずに応用が利くという長所はあるのですが、現段階の技術レベルを考えると単なる製作者のこだわりなのかもしれません。
さて、結果はチーム「CAP Project」の「THKR-4」が優勝しました。冷蔵庫からヨウカンを取り出し、保温ポットのボタンを押して昆布茶を入れるという難易度の高い技を、お客さんに手伝ってもらいつつも何とかクリアしたのです。チーム「MARU Family」の「MUSASHI」が要素技術大賞を獲得しました。個人的に感動したのはチーム「ドカ プロジェクト」の「ドカ はるみ」によるファッションショーでのデモです。腰の軸を生かしたダイナミックなモーションは見事でした。
来年のHHPのルールは今年とほぼ同様になる予定です。個人での参加だけではなく、景気が良くなり企業からのエントリーが増えることを願ってやみません。
搭乗型ロボットの普及と交通システムの構築、空間知能化について
2月24日、如水会館にてモノづくり推進会議主催による「ロボット研究会 第6回公開討論会」が開催されました。テーマは「モビリティーと交通システムのあり方」です。搭乗型ロボットが普及するためのヒントになる次世代ITSの動向や空間知能化の考え方についての講演が行われました。
| 写真10 ITSとRT、GISについて語る田中敏久氏(東京大学 生産技術研究所 先進モビリティ研究センター客員教授)です。 |
前半の講演は田中敏久氏による「21世紀型社会のモビリティーと次世代ITS」です。ITS(高度道路交通システム)とRT(ロボットテクノロジー)、GIS(地理情報システム)が結び付くと、多くの産業が生まれると確信していると言います。話の中心は「柏の葉地域ITS実証実験モデル都市プロジェクト」での事例紹介と今後の展開についてです。ITS同様、ロボットにおいても特区での実証実験が欠かせないようです。
| 写真11(左)、写真12(右) ITSに自動車の駆動技術が加わればRTと同様の構成になります。 | |
後半は橋本秀紀氏による講演「空間とロボティクス」です。以下、青字部分は橋本氏の講演内容です。
「空間の知能化により21世紀を支える生活基盤ができ、新しいビジネスが数多く生まれます。田中先生の言うようにコンテンツが大事で、入れ物(風景)は変わらず中身が変わるのです。昔、思い描いていた「未来」と現実の「今」は結構違っています。超超高層ビルも空飛ぶ自動車も出できていないし、ロボットも鉄腕アトムのようなものはできていません。建物や交通システムは一気には変わらない。人間はもっと変わらない。時間軸で見るとテクノロジーは月日単位、教育・働くシステムは年単位、建物(構造物)、交通システム、インフラは十年単位、社会システムの変化は数十年単位、人間の生活が変わるのは100年単位、人間が生物学的に変わるのは1000年単位あるいはそれ以上だろうと。
それでは何に注目すべきなのか。遅い時間軸を有する人間の生活に注目してテクノロジーを考える、つまり人間中心への回帰を考えた方が良いのかもしれません。要素技術の時間的進展を中心とした、いわゆる未来予想図よりも、人を中心とした未来予想図のほうが役に立ちそうです」
| 写真13 テクノロジーで空間のあり方が大きく変わっていると語る橋本秀紀氏(東京大学 生産技術研究所 先進モビリティセンター 准教授)です。 |
橋本氏は、周囲の環境(風景)はあまり変わらずにテクノロジーが進化する世界として、たびたびアニメ「電脳コイル」を例にあげて解説しています。興味のある方はぜひご覧ください。
最後に橋本氏は次のようにまとめました。
「空間は賢くなり、人に利便性を与え安全で快適な環境を提供するようになります。そのようにテクノロジーが組織されていきます。要素テクノロジーは着実に進みます。でも、人間はなかなか変わらない。テクノロジーと人間の界面(インタフェース)がますます際立っていきます。同様に、モビリティーを支える技術はどんどん進みます。ここでモビリティーの意味をもう一回立ち戻り、人が動くということがどういうことなのか? それが考えて飽きのこないテーマかな。モビリティーと人間の関係は・・・実はよくわかりません」
講演のあとはコーディネータの石黒周氏(MOTソリューション 代表、ロボットビジネス推進協議会 幹事)と田中氏、橋本氏による簡単な質疑応答がありました。石黒氏から「ロボットを社会に普及させるには道路交通法等の法律を変えなければ難しいが、どのような方法が考えられるか」との質問がありました。
田中氏は「ひとつは特区で搭乗型ロボットを市民に使ってもらい、その良さについて声を大にしていくことが大事だ」と答えました。もうひとつの方法についてはオフレコにして欲しいとのことなのでここには書けません。こうしたオフレコ話を聞けるのもセミナーに参加するメリットのひとつですね。
ATOM設計図やテンマ博士の開発ノート?
映画『ATOM』のDVD&Blu-rayリリースが2010年4月2日(金)に決定しました。5,000セット限定生産の「プレミアムボックス」には次のような特典付です。設定資料集<テンマ博士の開発ノート(仮称)>、ATOM設計図、フィルムブックマーク、本編収録microSDカード(手塚治虫原作「アトム誕生」モーション・マンガ付き)、ストーリーボード収録CD-ROM(美麗画コンテ収録)、アンディ・ウォーホルへのオマージュ”Astroboy”」シルクスクリーン複製ポストカードの6点です。どれも興味をそそられますが、特に「開発ノート」が気になります。
現時点ではサンプルDVD(本編の日本語吹き替え版)しか入手できないため、特典映像の紹介もできないのが残念です。昔見たTVアニメのイメージと違い、大画面向きのそれにしてもテンマ博士のキャラクターに役所広司の声はドンピシャです。
■コラム執筆担当
先川原 正浩さん(Sakigawara Masahiro)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 室長
http://www.furo.org/


