今回のコラムでは、9月15、16日と立て続けに新型2足歩行ロボットの発表があり、大変注目されましたので、これら移動型ロボットの実用化に向けた考えを述べます。
スリムな外観デザインのHRP-4と超重量級のcore
まず採り上げるのは、産業技術総合研究所と川田工業が発表した「HRP-4」です。「HRP-4」は、身長151cm、体重39kgと、軽量かつスリムなボディを実現し、様々な方向から対象物にアプローチできるよう片腕7軸の構成としており、全身で計34軸を有しています。
| 産総研と川田工業が開発した人型研究開発プラットフォームロボット「HRP-4」 |
まず写真を見て、重厚なロボットのイメージが払拭された威圧感のない外観デザインに感動しました。さらに、HRP-4に注目したのは、産業用ロボットの安全規格ISO 10218(ツールセンターポイントの最大動力は80W以下、最大力は150Nという制御下で人との協調運転を許容)に準拠し、人との協調作業に対応できるよう各関節には80W以下のモータを採用しているところです。
安全性への意識の高さに共感する一方で、機能面から見ると、関節軸を構成するモータの出力を落とすということは、一般的に可搬重量の低減につながります。そのため、HRP-4では片腕の可搬重量が0.5kgと非常に小さくなっているようです。いまあるロボットに関る安全規格を強く意識して開発すると用途・シーンが限定されてしまう典型例といえます。
しかし、私は用途シーンを限定させることがマイナスになると捉えていません。むしろ、そうすべきであり、ロボット実用化への道筋として、あるべき方向性だと感じています。
2足歩行ロボット開発の目的が、人間により近いロボットをつくることより先に、いち早く実用化へのブレイクスルーをつくることにあるのであれば、可搬重量が小さくても活用できる産業分野を具体的に描くこと(ビジネスデザイン)が最優先項目であると考えています。また、実用化に向けた2足歩行ロボットの課題を推察すると、『コスト(イニシャル+ランニング)』と『生産性向上(作業時間短縮)』の2点が大きく、これらを考えるうえでも絞り込める方がよいと捉えています。
次に取り上げるのは、千葉工業大学の未来ロボット技術研究センター(fuRo)が発表した下半身型の大型2足歩行ロボット「core(コア)」です。fuRoの先川原正浩室長から、発表の1週間ほど前に記者発表会の案内を受けていたのですが、あいにく予定が合わず、出席できなかったのは残念です。
| 下半身型の大型2足歩行ロボット「core(コア)」 |
coreは、電磁ブレーキを組み込んだ関節駆動用大型モータシステムと、移動時に足にかかる衝撃を吸収する機構に特徴がある2足歩行ロボットです。下半身のみの構成ですが、全長1,915mm、体重230kgもあります。関節駆動用大型モータシステムは、定格1,200W(最大3,000W)の三相ブラシレスモータと波動歯車減速機、電磁ブレーキ、絶対角度センサからなる関節駆動ユニットとモータドライバユニットから構成されています。
可搬重量が100kgと非常に大きく、近い将来、人を乗せて移動する「介護福祉系パーソナルモビリティ」への活用も視野に研究開発が進められるとのことで、興味深く感じています。
また、YouTubeでcoreの動画を視たところ、トヨタの搭乗型モビリティロボット「i-foot(アイフット)」と同様、鳥脚構造(膝関節が後方へ曲がる)が採用されているようです。非常に滑らかな動作に加えて、衝撃吸収機構による接地時の衝撃力の緩和も、動画から確認することができました。今後、どのような企業と連携を図り、成長過程を経て、実用化に向け進んでいくのかが要注目のロボットと言えるでしょう。
ユーザーが最適な機能を判断できる仕組みづくりを
さて、ここからが本題になりますが今後、2足歩行型を含め移動型ロボットの開発は、『駆動システム研究/開発』と『機能システム研究/開発』に分けて、専門的に進めるべきだと考えています。私が関った開発案件の中で、「システムとしての機能にはユーザーも満足しているのに、駆動系の耐久走破性だけが十分に満たされない・・・」という悔しい思いをしたことがあります。その経験にもとづく提言です。
まず、前者の『駆動システム研究/開発』の目的は、現存する移動機構(脚式やクローラ式、車輪式、体幹式など。加えて、それらを組み合わせた駆動系)に焦点を当て、ロボットメーカーや大学・研究機関が独自の技術を活用し、ロボットの利用環境を想定した最適な駆動システムをつくり上げることにあります。
ここで言う「駆動システム」とは、無線操縦可能なコントロールインターフェースを備えた駆動系のみのシステムを指します。設計の自由度がありすぎると収拾がつかないので、駆動システムのサイズや重量、重心位置などの項目は、ユーザー視点(現場条件)をもとに規定を設けます。さらに、駆動系の走破性や耐久性、安全性を図る統一ルールを設定し、ある基準をクリアすれば、次のステップに向けて(例えばユーザー側から)開発助成金が提供されるような仕組みを構築します。そうすれば、研究者は長期的に開発モチベーションが高くキープされますし、ユーザーにとっても駆動システムの現状が「見える化」され、技術レベルが把握しやすくなる利点があります。
さらに、この『駆動システム研究/開発』の最終目標はその先にあります。それは、『ロボットユーザー自身が、想定される空間環境で使える最適な移動機構がどれなのかを、製品群の中から容易に選択できる仕組みをつくること』にあります。
RT(Robot Technology)の活用が期待されるどのような業界においても、ビジネスでは「スピード」と「タイミング」が重視されます。ユーザー側で「使えそうだ!」という判断が早急にできる仕組みづくりが、ロボットの実用化には不可欠です。したがって、ユーザーが環境条件(屋内or屋外、表面の材質(砂地orアスファルトor絨毯orフローリングなど)、不整地の度合(段差、障害物の想定サイズ)、移動距離、移動時間、通路幅など)の項目を整理すれば、おのずとその環境下で活用できる駆動系を選択できる。そのような仕組みの構築が必要と言えます。さらにその後、数多く採用された駆動系が『標準化』される体系づくりも重要になります。
続いて、後者の『機能システム研究/開発』は、駆動システムに搭載される機能要素を開発することを指します。例えば、移動して地図生成をしながら自己位置推定を行う「SLAMシステム」や、モノを把持する機能が必要であることを見越して「単腕/双腕のハンドリング機構」を開発する、といったことです。
このような機能モジュールの組み合わせで、必要な機能価値をユーザー側で描けるようにするのが理想です。駆動システムと機能システムの選定後は、ロボット・システムインテグレータの仕事となり、2つのシステム群の『統合化』が図られます。そして、試作/アセンブリ業者にて移動型ロボットとして組み上げられます。
上述のような移動型ロボットの開発に至らない背景には、ユーザー視点を兼ね備えたロボット・システムインテグレータがまだまだ少数であることが挙げられます。このような開発の構築に向け、また、移動型ロボットの実用化に向け、このような人材が要とされる間違いないでしょうし、RTシステムを統合的にデザインできる人材育成が、いま強く求められていると考えます。
■コラム執筆担当
小西 康晴さん(Konishi Yasuharu)
(株)ロボリューション 代表取締役
URL:http://www.robot-revolution.com/
■関連サイト
2010.09.17 産総研と川田工業、人型プラットフォームロボ発表、RTCの利用で高効率な開発が可能に
http://robonable.typepad.jp/news/2010/09/17aist.html#tp
2010.09.17 千葉工大、可搬重量100kgの2足歩行ロボ披露、大型モータと衝撃吸収機構で実現
http://robonable.typepad.jp/news/2010/09/17furo.html#tp
Robotコンサル小西の「超・思考法」
第4回 サービスロボットの駆動系はどう考える・・・?
http://robonable.typepad.jp/column/2008/07/robot4-6520.html#tp





































