2007~2011年度までの5年間のプロジェクトとして取り組まれている「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」(知能化プロ、NEDO)の方針が転換される。当初、開発したRTコンポーネント(RTC)はインターフェースの公開にとどまるはずだったが、一部をオープンソースソフト(OSS)として提供をする。複数の関係者への取材で明らかになった。例えば「作業知能」や「移動知能」など、各研究開発項目で作成した各種RTCを「機能」でパッケージ化(「知能化パッケージ」、ロボナブルで付けた仮称)する方法と、「実サービス」を想定してRTCを組み合わせた方法の2パターンでの提供を予定する。
今回の方針転換は、昨年秋の事業仕分けによる開発予算の削減と、米Willow Garage社による「PR2 Beta Program」の影響によるもの。米Willow Garage社はロボット向け基本ソフト「ROS(Robot Operating System)」をオープンソースソフトで公開し、それを使ったロボットプラットフォーム10台を世界の研究機関に無償で提供することを表明している。知能化プロを含む一連の「RTミドルウエア」プロジェクトにとって最大の敵となることが想定され、同様に、オープンソースソフトでの公開に踏み切ることにした。
ただ、企業が開発したRTCをオープンソースソフトで公開するのは難しく、大学などの研究機関が開発したRTCのみの公開にとどまる見込み。これらを包含したRTCを、インターフェースを揃えたうえで知能化パッケージとして整理・統合する。
現在、RTCを開発する研究開発項目には、「作業知能(生産分野)」「作業知能(社会・生活分野)」「移動知能(サービス産業分野)」「高速移動知能(公共空間分野)」「移動知能(社会・生活分野)」「コミュニケーション知能(社会・生活分野)」があるが、重複するRTCの整理・統合にも取り組む。公式な知能化パッケージは、「RTC再利用技術研究センター」で検証作業を行う富士ソフトを経由して開示される見込みだが、大学で開発されたRTCも独自の知能化パッケージとして公開されることもあるという。
また、システム構築の経験がある研究者に依頼してRTCを利用したサービスシステムを構築してもらい、実サービスを想定したRTCのパッケージの提供にも取り組む。サービスロボットのデザイン見本として提示することが計画されている。
これまで過去3年間は、個別にRTCを開発するボトムアップ的な取り組みだったが、残り2年では具体的な機能もしくはサービスを想定した整理・統合というトップダウン的なアプローチへと変更すると言える。
なお、企業がRTCを利用する場合、実装するロボットシステムの安全認証を受けるとなると、動作保証に加え、開発プロセスも問われることになる。機能安全規格IEC 61508はプロセス重視であるため、同規格の認証を受ける場合は要求される。ゆえに、開示されたソースコードを参照しつつ、ソフトウエア開発管理を実践したうえでつくり直すのが現実的な方法になるという。
今回の方針展開について、ロボットビジネス推進協議会のある主査は、「本来、国プロほどきちんと腰を据えて取り組むべきなのに、特定企業の動向に振り回されているのはいかがなものか?」と疑問を投げかける。
■「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」事業の平成21年度実施概要
(基盤技術の開発)
◎研究開発項目[1]-1「ロボット知能ソフトウエアプラットフォームの開発」
(委託先:産業技術総合研究所、日本電気、セック、ゼネラルロボティックス、前川製作所、東京農工大学)
◎研究開発項目[1]-2「ロボット知能ソフトウエア再利用性向上技術の開発」
(委託先:産業技術総合研究所、富士ソフト)
(知能モジュール群の開発)
◎研究開発項目[2]「作業知能(生産分野)の開発」
(委託先:IDEC、三菱電機、共同委託:京都大学)
◎研究開発項目[3]「作業知能(社会・生活分野)の開発」
(九州大学、九州工業大学、産業技術総合研究所、安川電機、東芝、首都大学東京、東京大学、東北大学、再委託先:ライテックス、Robotic Space Design研究所、バイケーク)
◎研究開発項目[4]「移動知能(サービス産業分野)の開発」
(委託先:筑波大学、富士ソフト、富士通、豊橋技術科学大学、セック、電気通信大学、九州先端科学技術研究所、環境GIS研究所、奈良先端科学技術大学院大学、大阪大学、東京理科大学、富士重工業、再委託先:千葉工業大学、明星大学、トヨタ自動車、筑波大学、和歌山大学、大阪電気通信大学)
◎研究開発項目[5]「高速移動知能(公共空間分野)の開発」
(委託先:慶應義塾大学、アイシン精機、日本自動車研究所、再委託先:アイ・トランスポート・ラボ、NECソフト、北海道大学)
◎研究開発項目[6]「移動知能(社会・生活分野)の開発」
(委託先:セグウェイジャパン、東北大学、国際レスキューシステム研究機構、京都大学、芝浦工業大学、千葉工業大学、NECソフト、再委託先:ピューズ)
◎研究開発項目[7]「コミュニケーション知能(社会・生活分野)の開発」
(委託先:日本電気、ATR、イーガー、オムロン、三菱重工業)
次世代ロボット知能化技術開発プロジェクトに関する情報収集研究および情報発信
(委託先:日本ロボット工業会)
■関連サイト
2010.02.04 実サービスをイメージしてRTCを統合へ、デザイン見本として提示も、平井fuRo副所長
http://robonable.typepad.jp/news/2010/02/04rtc.html
2010.01.05 富士ソフト、RTCの再利用性を紹介、第三者によるレビューで技術的な底上げが必要
http://robonable.typepad.jp/news/2010/01/05fujisoft.html
2009.09.18 富士ソフト、RTC再利用センターの活動を紹介、教育分野に向けたRTCの提供を検討
http://robonable.typepad.jp/news/2009/09/20090917-rtcrtc.html
2009.05.27 前川、知能化プロのリファレンスハード紹介、来年度には無償の貸し出しを予定
http://robonable.typepad.jp/news/2009/05/20090527-5922.html
2008.10.16 NEDO、知能ソフトウエア再利用性向上技術の開発、産総研と富士ソフトに委託
http://robonable.typepad.jp/news/2008/10/20081016-nedo-4.html
トレンドウォッチ
「いまのロボット市場は『作って喜び、売って苦しみ、買って苦しい』状況なのでは」
-サービスロボットの市場の堅実な発展に向けた提言- 産業技術総合研究所 荒井裕彦
http://robonable.typepad.jp/trendwatch/2009/03/post-5587.html
学会発表で理解する 次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト
-着々と進むRTM化、目標の完遂には再利用技術研究センターの活動がカギに-
(2)ロボット知能ソフトウエア再利用性向上技術の開発
富士ソフト、RTC再利用センターの活動を紹介、教育分野に向けたRTCの提供を検討
http://robonable.typepad.jp/trendwatch/2009/10/rtm-4e27.html#p001
「ソフトウエアベンダーに引き継ぐか、OSSとしての提供が考えられる」-UCROAおよび知能化プロの成果物の提供について- 産業技術総合研究所 比留川研究部門長に聞く
http://robonable.typepad.jp/trendwatch/2009/05/ossucroa-acdf.html

