長い脚を使って沼や池、水たまりなどの上をスイスイと自在に動き回るアメンボ。沈まずに浮くのは水の表面張力を利用しているためだ。そんなアメンボをモデルにした2種類の水面移動ロボットを工学院大学の三浦宏文・学長、高信英明・准教授、鈴木健司・准教授らが開発した。油による海の汚染のセンサーや玩具などへの応用が期待できる。
【1円玉が浮かぶ感覚】
「1円玉がそっと浮いているようなもの」。水の表面張力を利用し、脚の先だけを水面上に 浮かべるアメンボについて、高信准教授はこう例える。
アメンボには6本の脚があり、前脚と後脚で体を支える。中脚はボートのオールのような役割を果たし、楕円(だえん)軌道を描いて水表面をかき、移動する。研究室での観察によると、滑るような移動とジャンプするような移動の2種類があるという。
脚の先は浮きやすくできている。無数の細かい毛が生えていて、毛の間から油を分泌して水をはじく。この脚の先で、水の表面張力を利用するため、アメンボは水面上にいられる。実際、水面に液体せっけんを注入して表面張力を弱めるとアメンボはおぼれてしまう。
研究ではまずアメンボの脚の先をまねてロボットの脚をつくった。一つはSU―8というエポキシ樹脂でつくった鋳型にシリコーンゴムの一種、PDMSを流し込んで「櫛(くし)形シール」をつくり、真ちゅうの表面にらせん状に巻きつけたもので、表面積を稼いで浮きやすくした。
【中脚を忠実に再現】
また真ちゅうにSU―8をコーティングした後、不要な個所を除去して表面に凸凹をつけた脚や、真ちゅうに直接エッチングして表面を凸凹にした脚もつくった。真ちゅう表面を凸凹にすることで撥水(はっすい)性が高まる。
いずれの脚も本物のアメンボの脚の先よりも浮きやすいことを実験で確かめ、これらの脚を用いてロボットの開発を進めた。
開発したロボットの一つは、アメンボの2本の中脚の動きを忠実に再現した。中脚で楕円軌道を描くため、蒸気機関車などで使われているクランク機構を採用した。ロボットは長さ25センチメートル、幅24センチメートル、高さ7センチメートルあり、重さは5・4グラム。PDMSを巻きつけた脚は長さが13・5センチメートルある。
本物のアメンボは最高で毎秒40センチメートル移動し、このとき1回水をかくのに0・16秒しかかからないという。開発したロボットの移動速度は平均で毎秒4センチメートル、最高で9センチメートル。1秒間で2回水をかいている。水を1回かくのに時間がかかるぶん、かく間にスピードが落ちている。また速度が本物のアメンボと隔たりがあるが、「ハの字型の前脚が抵抗になっているのでは」(高信准教授)とみている。
ほかにも、まっすぐにしか進めないなどの課題がある。これらを克服しようと、よりシンプルな形のロボットも開発した。機体の中央上部に振動モーターを1個だけ配置し、振動させると脚が揺れる仕組みだ。
長さの違う脚が6種類12本、機体中央から放射状についている。最も短い脚は7センチメートル、長い脚は9・5センチメートルだ。短い脚は速く、長い脚はゆっくり揺れる。この性質を利用し、振動モーターの揺れる周波数を任意に変えることで、どの脚を揺らせるかを制御できる。「モーターの回転数を変えるだけで行きたいところに行ける」(高信准教授)のだ。
【大きさ3cm目指す】
例えばまっすぐ進めたいときは進行方向からみて横の4本の脚を揺らせる。右に旋回するときは左の2本の脚を、左旋回では右の2本の脚を揺らせるといった具合だ。
このロボット全体の直径は約20センチメートルで、重さ7・85グラム。エッチングして凸凹にした真ちゅうの脚を使った。まっすぐ進むときの速度は毎秒約7センチメートル、左右に旋回するときの速度は毎秒5センチメートルだ。
応用はまず、油による海の汚染のセンサーが挙げられる。海の表面が油で汚染されたらロボットが沈むので目印になる。また子どものオモチャとしての用途も考えられるという。
高信准教授は「今後は小型化を図る。本物のアメンボは脚の長さを入れても3センチメートルぐらいのボディーなので、その大きさを目指している」と話す。
-「水面を自由移動するアメンボロボ」の記事全文は、5月21日(月)付の日 刊工業新聞をご覧ください-
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