モノづくり推進会議と日刊工業新聞社、日本産業人クラブ連合会(産業人クラブ)は先月、沖縄県名護市の万国津梁館で「地域活性化リレーシンポジウムin沖縄」を開催した。中堅・中小企業の経営者が一堂に会する産業人クラブの「沖縄サミット」の開催に合わせ、不況下でも勝ち残れるモノづくりを共に検討した。
特別講演に「ロボットクリエイター」として活躍するロボ・ガレージの高橋智隆代表を迎え、自身の活動からロボット観までを語ってもらった。ここでは、講演の一部を紹介する。
SHIN-Walkの実証機として開発
私はロボットをデザインして製作し、発表する「ロボットクリエイター」を仕事にしている。また、一般の人にも広くロボットを見ていただく活動をしている。
発表したロボットの中に「Chroino(クロイノ)」がある。幾何形状の工夫により、ホビーロボットなどでも膝を伸ばした歩行を可能にする「SHIN-Walk」の実証機として製作した。もう少し詳しく説明すると、股関節と足首のロール軸をオフセットさせ、体重の左右の移動時に生じる地面と足裏との距離の変化を利用して膝を曲げずに歩行する技術である。静歩行時に、前方に踏み出した遊脚が地面に届かず、それを届かせるために支持足の膝を曲げて腰を下げているのでは、という考えから生まれた。
2004年に「TIME」誌で紹介してもらい、それが縁で世界中にロボットを持って歩くことになった。
私が製作したロボットを発表すると、それを見た企業から「うちのロボットを開発してほしい」「デザインしてほしい」「このロボットを商品化したい」というお話をいただく。それを受託し対価をいただくというのが、当社のビジネスモデルになっている。
これからロボットが1家に1台と言われる時代に、みんなが欲しがるロボットを、何よりも私自身が欲しいロボットをつくろうと思っている。そのときにデザインや自然なモーションが大切になる。なぜ、「ロボットが人や動物の形をしているか?」と言えば、人間が感情移入することができ、コミュニケーションをとろうと思えるからだろうし、それゆえに、デザインやモーションが重要性を増すと考えている。
海外では想像以上に日本のロボットは人気
その後、女性らしさをロボットで表現したいと思い、女性型ロボット「FT (Female Type:エフティ)」を製作した。大人の女性をイメージした6等身で細身のスタイルを持たせた。足を内股に設定し、かつ足の付け根を腰の外側から伸ばすことで骨格的にも女性らしさを表現している。また、動きも女性らしくするため、プロのファッションモデルの方に監修してもらった。発表したところファッション誌で有名ブランドのドレスとともに紹介されたほか、ミス・ユニバースの方とニューヨークで一緒にイベントも開催した。これまでロボットを見る機会がなかった方にも知ってもらう良い機会になったと思う。
海外では、われわれが思っている以上に日本のロボットは人気が高い。日本が得意とする機械・精密分野に、アニメやゲーム、キャラクターの要素も含んでいるからだろう。これら強いもの同士を組み合わせたら“最強の輸出産業”になると思う。世界では「ロボットと言えば日本」で、「日本と言えばロボット」と言われる状況になっている。地域や国と、その特産物や工業製品がつながってブランディングできると、仮に技術的な優位性がなくなったとしても、価値を創出し続けることができる。
ロボットリビングの開発に取り組む
今後、ロボットが家庭に入っていくことを考えると、最初は汎用ロボットになると思う。そこから介護やレスキューに広がっていくのではないか。
ヒューマノイドロボットは何のためにいるかと言うと、コミュニケーションのためだと思う。そのロボットを介して、他のネットワークでつながった家電製品やホームセキュリティに指示がなされ、実際に稼働するのは家という空間全体になるだろう。私は、それを「ロボットリビング」と表現しており、モデルルームをつくろうと考えている。
まず、オーディオルームやホームシアターを持っている富裕層をターゲットに、高級インテリア雑誌や家電メーカー、ロボットメーカーとタイアップしたい。新しいテクノロジーを最初に使い始めるのは富裕層である。彼らは好奇心から新しいモノを買い、それに合わせたライフスタイルを生み出してくれる。自動車も昔はそうだった。また、携帯電話も最初は、富裕層が性能の割に高い製品を買ったお陰でダウンサイジングし、普及モデルへと進化した。ロボットもそうなればと思う。
ただ、正直に言って「ロボットが必要か?」と聞かれたら、「いまの生活では必要ない」。しかし15年後ぐらいには、「ロボットがないと暮らしていけない!」と、みなさんも思うようになるはずだ。ロボットがないいまは不幸ではないし、ロボットが普及した未来が特別幸せになるわけでもない。われわれのライフスタイルが変わっていき、ロボットのある生活が当たり前になる、そんな時代を迎えるのではないかと思う。
■関連サイト
2008.10.31 もっと野心と知的好奇心を持つべき。ロボ・ガレージ高橋代表
http://robonable.typepad.jp/news/2008/10/20081031-a24e.html
ロボットのグッドデザインを考える
第3回 「人と心地よい関係を築くことができるデザインを」ロボ・ガレージ 高橋智隆さん
http://robonable.typepad.jp/trend/2007/08/post_2e9a.html
人とロボットのより良い関係
第1回「大人の女性をイメージしてー ロボットの半分は女性型に」
http://robonable.typepad.jp/column/2006/11/__e5ac.html
第2回「ロボットヒーローが作りたい」
http://robonable.typepad.jp/column/2006/12/post_b893.html
第3回 「人とロボットは共存する」
http://robonable.typepad.jp/column/2007/01/post_5a49.html


