甲南大学 知能情報学部の中山弘隆教授らは、音声による質疑応答や移動指示などが行えるコミュニケーションロボット「ii-1号」を披露した。特定のWebサイトなどを読み込んでデータベース(DB)および応答用の辞書を自動生成し、ロボット自身の知識としたうえで応答する。特定の質問を自然言語で受け付けて応答する「質問応答システム」を、ロボット本体に実装しているのは珍しい。オープンキャンパスで同学部の紹介に利用している。今後、同学部の研究成果を実装することにより、ロボット同士の会話や、対話者の表情を認識しながらのコミュニケーションの実現を目指す。これを通じて、同大学および同学部のPRに役立てる。
ii-1号は、2008年4月に新設した同学部の研究成果のPRを目的に開発したロボット。知覚情報処理や感性情報処理、人工知能など知的情報処理を専門とする教員およびコースから構成されることから、対話機能をはじめ知能を重視して開発している。また、高校生を対象に開催する「オープンキャンパスでは、わかりやすい研究紹介が求められている」(中山教授)という事情も、開発の背景にある。村田製作所が自社部品のPRを目的に「ムラタセイサク君」「ムラタセイコちゃん」を開発して企業イメージの向上に結び付けているが、開発目的はそれに近い。
音声による質疑応答や移動指示ができ、質疑応答では特定のWebサイトなどに記載されている文字情報を読み込み、DBおよび応答のための辞書を自動生成したうえで、その内容に関する質問に答える。
具体的には、まだ開発途上であるが、質疑応答システムを実装しており、質問内容からキーワードの抽出および質問内容の解析を行い、キーワードと拾い出した単語との関係性を判定して答える。例えば、『ロボット研究をしている先生は誰ですか?』と質問すると、『ロボット研究』というキーワードを抽出して文章検索を開始。質問内容を解析して『誰』という単語から回答部分として、検索した文章から人名を拾い出し、『ロボット研究』との関係性が密接な『人名』として、『中山先生、****先生、****先生・・・』などと回答する(動画上)。
拾い出した人名の近くにキーワードがいくつあるか、また、人名がキーワードにかかっているかどうかといった構文情報などをもとに関係性を判定している。Webコンテンツのように、知識源に答えがあれば応答することができ、「How」と「Why」、「Yes」「No」クエスチョン以外の質問には答えられる。開発は、自然言語処理を専門とする同学部の永田亮(*)講師が担当した。
音声認識・合成ソフトにはオープンソフトの「Julius(ジュリアス)」を使用。移動プラットフォームとして「Pioneer 3DX」を利用しており、追加した北陽電機製レーザ測域センサで障害物を回避しながら音声で指示された方向に移動する(動画下)。
デザインおよび筐体製作などは、アートラボの中山智博代表が協力した。クルマのように曲面を多用したフォルムにすることで威圧感を与えないような印象を持たせている。身長は、三菱重工の「wakamaru(ワカマル)」と同じ100cm。外装のほとんどは、エポキシABSライクの素材を用いて光造形で作製している。
また、音声による対話を重視し、高音質を確保できるバックロードホーン型のスピーカーを搭載している。スピーカーユニットの後方にホーンを折り曲げて取り付けたタイプで、重低音をホーンに逃してから、スピーカー本体下部の穴より出力している(写真下左)。スピーカーの筐体およびバックロードホーンは、石膏粉末を用いて積層造形で作製している。さらに、有機ELパネルを左右に2つ搭載しており、ロボットの感情を表現したり文字や動画による情報を表示したりすることができる(写真下右)。
すでにオープンキャンパスで2回にわたって披露しており、訪れた高校生との質疑応答を通じて、同学部の研究成果の一端を知ってもらうことに役立ったという。
今後は、各研究成果を実装することで、ロボットと人との会話やロボット同士による会話の実現を目指す。例えば、同学部の灘本明代准教授が開発する、Webコンテンツから対話文を自動生成する技術の実装により、ロボット同士に漫才をさせることを構想している。また、画像処理との組み合わせにより、話者の表情を認識しながらのコミュニケーションが行えるようにするなど、「より知的なロボットへと進化させることで、各研究成果のPRに役立てていきたい」(中山教授)という。
■注釈
*:永田講師は、質問応答システムではなく、自然言語処理を専門としており、言語に関する知識の自動発見と文書の自動添削などの研究に取り組んでいる。先月開催された「イノベーションジャパン2009」では、日本人が書いた自由記述形式の英文を添削するシステムを共同出展した。




