国際電気通信基礎技術研究所(ATR)は、半導体チップ上に集積化したリングレーザジャイロ(RLG)を開発し、リング内を周回する光の強度変化から回転の角速度に依存する信号を検出することに成功した。レーザ媒質の非線形効果により生じる非線形相互作用(*1)を低減させ、光を増幅または吸収する領域と、光と反応しない領域がある構造(アクティブ・パッシブ構造、写真)を持つRLGを作製。これにより超小型・高精度で量産可能な角速度センサチップの実現につながるという。半導体チップ上で世界で初めて、光速度不変の原理に基づく相対論的効果であるサニャック効果(*2)を捉えたという。
今回の成果は、半導体RLG角速度センサチップの実現性を検証したもの。現在、実用化されているRLGは高価かつ重い、量産化が困難という欠点があるため、半導体チップ上に集積化できれば、量産化や小型化が可能な高精度角速度センサが実現できると期待されていた。しかしながら、半導体レーザでは非線形相互作用が強く、困難とされていた。
今後の研究課題としては、正確に角速度を測定するため、サニャック効果により生じる時計回りと反時計回りの光の周波数差を検出する必要がある。将来、角速度センサチップが実現すれば、ロボットやクルマ、携帯電話端末などへの搭載は可能になる。また、GPSと協調することで、GPS信号が届かない地下街や建物内、トンネルなどでも、航空機のように自律的な位置情報検出ができるという。
■注釈
*1:レーザ媒質の非線形効果により生じる現象。特に半導体レーザでは、時回り光と反時計回り光がエネルギーの奪い合いをし、どちらか一方しか発振しなくなる現象が生じる。さらに時計回りと反時計回り光との間の周波数差がなくなる現象も生じる。これらの作用のため、半導体をレーザ媒質とするリングレーザジャイロの実現は困難であると考えられてきた(ATR説明より)。
*2:回転するリング型導波路において、時計回りの光と反時計回りの光に、回転角速度に比例する位相差が生じる効果。リングレーザジャイロでは、その位相差を時計回りの光と反時計回り光との間の周波数差として測定することにより、高感度な角速度の検出を行っている(ATR説明より)。



