富士重工業は、農林水産省の「次世代園芸ロボット技術導入検証事業」で取り組んだ「薬剤注入ロボット」を開発した。土壌消毒に使用する薬剤を自律走行して自動的に薬剤を注入する。レーザ三角測量によりビニールハウス内での位置や方向を認識し、状況に応じて自律走行を行う。危険を伴う薬剤散布時の農作業者の安全性の確保や作業の大幅な省力化が期待される。自律走行のほか遠隔操作走行、手動走行の3タイプを用意しており、遠隔操作走行は2010年10月以降に200万円以下の価格で発売を目指す。おもに大規模企業農家をターゲットにしており、これら3タイプで計200台の販売を見込む。
写真1 本体側から見た薬剤注入ロボット。レーザ三角測量センサによりレーザを投光し、ビニールハウスの支柱に設置したリフレクタで反射したレーザ光を検知することで、リフレクタのある方向と距離を三角測量で計測。登録したリフレクタの座標位置と照合することで方向と位置を算出する。
写真2 薬剤注入部から見た薬剤注入ロボット。鎮圧ロータを介して駆動するポンプにより薬剤を吐出。薬剤は最大40リットル、20リットル缶を2個搭載でき、4条分を一気に散布する。
開発したロボットは、収穫後の樹木を除去し、耕作後に行う薬剤注入で利用する。おもにロボット本体部と薬剤注入部から構成され、本体の移動機構には地雷除去ロボットの油圧制御技術を、走行制御には屋外清掃ロボット「ロボハイターRS1」の直進制御技術を活用している。
具体的には、クローラ方式を採用した移動機構にはHydro-Static Transmission(油圧駆動変速機)を採用。直結した油圧ポンプにより油圧モータを回転・駆動することで、柔らかな土壌でも走行できる駆動力を確保している。また、25°の登坂性能を有しており、道坂を利用して軽トラックの荷台に搭載することができる。
走行制御は、試作機では直進移動時はジャイロセンサを利用していたが、レーザ三角測量のみで行う。全方向にレーザを投光し、ビニールハウスの支柱に設置したリフレクタで反射したレーザ光を検知することで、リフレクタのある方向と距離を三角測量で計測。あらかじめ登録したリフレクタの座標位置と照合することでロボットの方向とYY座標を算出する。直進やターンなど状況に応じた走行が自律的に行える。
薬剤注入部は、鎮圧ロータを介して駆動するポンプにより薬剤を吐出する。薬剤は最大で40リットル、20リットル缶を2個搭載することができ、4条分を一気に散布することができる。直進移動時のみ下方に降りて薬剤を吐出し、旋回時は上昇する。注入量の調整は専用ノブで簡単に行えるなど、使い勝手の良い設計にしている。
併せて、遠隔制御走行タイプの開発にも取り組んでいる。自律走行タイプではレーザ三角測量センサのほかサーボ系電磁弁が必要となり、価格は800万円程度になると予想される。このタイプではセンサ類が不要となり、ON-OFFタイプの電磁弁を使用できるため、200万円程度に抑えられるという。
また、用意した遠隔操縦装置は特定小電波を使用し、無線利用の許可など申請手続きを不要にし、パワーオン・フェールセーフ機能など安全機能も搭載している。同社では、このタイプが最も多く販売できると見ており、150台程度の販売を期待している。
土壌消毒用薬液には、害虫駆除が行える酸化作用の強いものが使用される。散布時には吸引を防止するために防護服や防毒マスクの着用が必須となり、農作業者にとっての負担が大きい。また、園芸農家の大規模化が進展しており、少人数で行うには負荷が大きい。薬剤注入ロボットの利用は、農作業者の安全性の確保および作業の省力化につながると期待される。
なお、同ロボットの本体重量は試作機が400kgだったのに対し、350kgにまで低減している。溶接技術が大きく寄与しているとし、「クリーンロボット部最大のノウハウは制御技術ではなく溶接技術にある」と、クリーンロボット部の青山元部長は説明する。
■関連サイト
2009.03.31 富士重工、開発中の薬剤注入・散布ロボに地雷除去ロボと屋外清掃ロボの技術を応用
http://robonable.typepad.jp/news/2009/03/20090331-677b.html
2009.02.05 富士重工、農業ロボット投入へ、不整地を走行し土質改良を行う
http://robonable.typepad.jp/news/2009/02/20090205-a765.html
ロボナブル2008年6月特集「農業ロボット企画 第1弾 ロボティクスがもたらす農業革新」
「PART1 農作業の省力化・効率化に寄与するか!? 最新!主要農業ロボットの技術動向」
http://www.robonable.jp/monthly/2008_06/p1.html#p002

