11月25~28日開催の「2009国際ロボット展」にて、川崎重工業、ファナック、スイスABB、そして安川電機がパラレルリンクロボットを出展し、各種デモを披露した。
安川電機は、参考出品として試作機を公開した。ファナックのパラレルリンクロボット「M-1iA」の好調な販売を受けて開発したもので、仕様は明らかにしていない(写真撮影不可のため画像はない)。各種サーボモータを開発するモーションコントロール事業部(埼玉県入間市)モーションドライブ技術部が開発を担当しており、同社内の要素技術を活用して急遽開発したようだ。北九州の本社工場に開発を移管し、2010年4月以降の製品化を予定している。
試作機は、川崎重工業のものと同等の動作範囲を有しているが、ロボット展での反応などを踏まえて用途に適した仕様に変更するという。
川崎重工業は、最大可搬重量3kgの4軸構成(オプションで5軸)のパラレルリンクロボ「YF03N」(写真上)を出展した。同機構の採用により高速でのピック&プレースが可能で、サイクルタイムは可搬重量1kgで0.27秒、3kgで0.45秒。動作領域は直径1,300mm×高さ900mmm。
丸洗いが可能で、かつ食品機械用油脂類の使用により食品や薬品、化粧品などのピック&プレースやパッキング、箱詰めなどの用途に適している。ロボット展では、自社開発の視覚センサとの併用によりコンベヤ上を流れる袋入り食品を高速でピッキングし、整列するデモを披露(動画1)した。
ただ、これらの分野に向けて販売したものの、売れ行きは芳しくないという。原因は、もともと食品や薬品、化粧品メーカーなどとの付き合いが希薄であり、「十分な販路を確保できていない」(川崎重工の説明員)から。一方で、太陽電池パネルの搬送用途での引き合いがあるほか、展示会中に小型電子部品のピック&プレースの用途でニーズが寄せられており、ターゲット分野の再考が求められている。
ファナックは、組立やピッキング作業向けの小型ロボット「M-1iA」(愛称「ゲンコツ・ロボット1号」)を10台配列し、内蔵した視覚センサにより電子部品の組み付けや小型部品の組立が行えるのを披露(写真下)した。
ゲンコツ・ロボット1号は、ハンド部が1軸の計4軸タイプと、ハンドに3軸を搭載し、より複雑な作業が行える計6軸タイプの2機種があり、首の回転速度は4軸機で毎秒3,000°、6軸機で毎秒1,440°と高速動作が行える。いずれも可搬重量は0.5kg、動作領域は直径280mm×高さ100mm。4軸機は高速ピッキングに、6軸機は組立作業に適しており、6軸機ではプリント基板モジュールを斜めから実装したり(写真下)、文房具を認識して箱詰めしたり(動画2)、さらには、力センサとの組み合わせによりギヤの位相合わせをしたりするデモを披露した。
また、新開発の可搬重量6kg、動作領域が直径1,350mm×高さ500mmの「M-3iA」(愛称「ゲンコツ・ロボット3号)も出展した。こちらも手首1軸、計4軸のタイプと、手首3軸、計6軸タイプの2機種があり、ゲンコツ・ロボット1号と同様、複雑な作業が行える。
完全密閉構造を採用しており、粉塵やオイルミストが浮遊する環境でも利用できる。またオプションで、酸やアルカリによる殺菌消毒洗浄ができる表面処理や食品対応の潤滑油の封入に対応しており、食品分野でも使える。
ファナックでは、ピッキングや組立など幅広く利用することができ、新たな需要の掘り起こしに可能性を秘めていることから、これらを重点的に販売していくことを表明している(稲葉善治社長のインタビュー記事を参照)。夏頃には初年度の販売目標3,000台を達成しているが、現在欠番であり、これらの中間の仕様になると見込まれる「M-2iA」の投入により、さらなる販売が期待される。
そのほか、スイスABBもパラレルリンクロボット「フレックス・ピッカー」を出展していた。
今年度に入ってパラレルリンクロボが相次いで上市されたのは、スイスABB社が保有していた基本特許が2007年8月に日本で満了を迎えたから、とされている。すなわち、米国特許第4976582号「空間で要素を運動させて位置決めするための装置」であり、パラレルリンクロボの基本特許とされる。1985年にスイスで最初に出願された。一方で、川崎重工の担当者の説明によると、「2008年後半に米アデプトテクノロジーが保有する関連特許権の存続期間が満了を迎えたから」と説明がなされている。見解の相違が見られるが、少なくとも、先行企業の関連特許が満了を迎えたことに加え、自動車分野以外での新たな用途開発に迫られたことが、開発に背景にあると言える。
動画1 川崎重工業のパラレルリンクロボ「YF03N」のデモ。高速なピック&プレースが 行えるのがわかる。繰り返し位置決め精度は±0.1mm、角度繰り返し精度は±0.1°。
動画2 ファナックのパラレルリンクロボ「M-1iA」によるデモ。内蔵した視覚センサで 文房具を認識して箱詰めを行っている。
■関連サイト
2009.11.27【トップインタビュー2】いまは、まずゲンコツロボを拡販する、ファナック・稲葉善治社長
http://robonable.typepad.jp/news/2009/11/27fanuc.html
2009.11.24 ファナック、パラレルリンクロボの新型機を開発、可搬重量は10倍超となる6kgに
http://robonable.typepad.jp/news/2009/11/24funuc.html
2009.10.20 富士経済、12年にパラレルリンク市場は136億円、パワーアシストは58億円に拡大と予測
http://robonable.typepad.jp/news/2009/10/200910202012136.html
2009.07.31 ファナック、小型パラレルリンクロボットの専任組織発足、販売体制を強化
http://robonable.typepad.jp/news/2009/07/20090731-f367.html
2009.04.17 川崎重工、パラレルリンク式ピッキングロボ発売、軽量リンクにより高速化
http://robonable.typepad.jp/news/2009/04/20090417-1ff8.html
2009.04.03 ファナック、小型組立多軸ロボットを発売、手作業並みの俊敏な動作を実現
http://robonable.typepad.jp/news/2009/04/20090403-a272.html