新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」の第1回中間評価(8月24日実施)の概要を公開した(写真は成果の一部が公された「2009国際ロボット展」でのNEDOブース)。開発した知能化モジュール群(RTコンポーネント:RTC)の使用時の課題やRTCを活用した事業化、その公開方法、今後の国際展開に向けた活動などに対し、評価委員から質問および実施者から回答がなされた。評価委員からはおおむね高い評価を得たが、プロジェクト内でソフトウエア品質管理に関する話題が上らなかったことや、各研究開発項目でバラバラに取り組んでいる印象を受けるといった課題や意見があがった。
まず、RTCの利用に関する課題では、プロジェクトリーダの東京大学の佐藤知正教授から回答がなされ、実際の利用に耐えられるようなロバスト性および完備性が求められるとし、典型例をもとにしたタスクを実行して取り組む考えが示された。様々な環境で利用できるようなロバスト性の確保には際限がない開発になるからで、サブワーキンググループで議論を重ねており、タスクおよびアーキテクチャを含めて検討している。典型的な(タスクの)例が1つ確立されれば、「波及効果はあるのではないか」(同)との見方がなされた。
また、これに関してはRTCの統合性も重要であり、RTミドルウエアのプラットフォーム上でかなりのレベルで動作できることから、マニュアの整備により対応しているという考えが示された。
RTCを活用した事業化については引き続き、佐藤教授が回答し、RTCをそのまま使ってサービスを提供するベンチャーの登場を期待する一方、効率的な開発や差別化を目指すロボット開発企業にとってはRTCの中身(ロジックなど)を知りたい(つまり、制御やアルゴリズムのブラックボックス化を許容しない)というマインドが起きると予測。ビジネスベースで展開する場合は「全部自分でつくり直すのだろう」とし、ゆえに、マニュアルの整備は同プロジェクトでは必要であり、また「大事な成果」。結果、(ロボット)サービスに結び付くとの考えも示された。
また、RTCの公開方法については、産業技術総合研究所 知能システム研究部門の比留川博久部門長から回答がなされ、大学あるいは公的研究機関で作成したRTCは「オープンソース」で開示し、それを参考に作成あるいは改良するという使い方がなされる。一方、企業が作成したRTCは「バイナリ供給」になるとの考えが示された。ただし、単にRTCを組み合わせて動作させるのは難しく、例えばセックが北陽電機のレーザ測域センサなどに向けたRTCを販売しているように、RTCを試してみたり改良したりして購入に至るのではとの見方がなされた。
オープンソースでの公開は、GPL(GNU Public License)とBSD(Berkeley Software Distribution )の中間に当たる「MPL(Mozilla Public License )(*)系のライセンスがいいだろう」とのことで、仮に大学がオープンソースで提供するにしても商売をしてもよいという「ライセンス設定にしたららどうか」と勧めているという。
そして、今後の国際展開に向けた活動に関しては、仮に連携するのであれば、米Willow Garage社が無償配布に向けて準備を進めている基本ソフト「ROS(Robot Operating System)」か、独ミュンヘン工科大学を中心にしたプロジェクト「FP7」になるとしつつも、当面は密接な連携にならないとの考えが、比留川部門長より示された。後者は国家プロジェクトであるため「問題はない」が、前者は真意を判断にくく、ある段階で有料になるかもしれないという危険性があるからで、RTミドルエアをROSと統合するのではなく、ゲートウエイやブリッジを用意して「相互運用性を確保するやり方でやろう」(比留川部門長)という方法が示された。また、韓国とは覚書(MOU)を締結しているが、こちらとも当面は様子を見るという。
評価委員からは同プロジェクトの意義や取り組みに対し、おおむね好意的な意見がなされたが、ソフトウエア品質管理への言及のなさ、ソフトウエアエンジニアリングの導入、普及に向けたパートナーづくりの必要性といった課題が挙げられた。さらには、各研究開発項目にて各企業や研究機関が培ってきた技術を用いて、バラバラに取り組んでいるような印象を受けるといった指摘もなされた。
同プロジェクトは、次世代ロボットに必要な基盤技術の確立を目指したもので、おもにソフトウエアプラットフォームの開発およびソフトウエアの再利用性の向上に向けた開発と、RTミドルウエアによる知能化ソフトウエアモジュール群の開発から構成され、2007年度から2011年度まで5年間にわたって実施される。
■注釈
*:Mozilla Foundationによって開発されたソフトウエアに適用されているライセンス。他者が、MPLが適用されたソフトウエアを他のソフトウエアに組み込んで新たなソフトウエアを開発した際、そのソースコードの開示は要求しないが、MPLが適用されたソフトウエア自体を改変して新たなソフトウエアを開発した際は、そのソースコードの開示を要求する。
■第1回「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」(中間評価)分科会
http://www.nedo.go.jp/iinkai/kenkyuu/bunkakai/21h/chuukan/6/1/index.html
■関連サイト
トレンドウォッチ
学会発表で理解する 次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト
-着々と進むRTM化、目標の完遂には再利用技術研究センターの活動がカギに-
http://robonable.typepad.jp/trendwatch/2009/10/rtm-4e27.html
「ソフトウエアベンダーに引き継ぐか、OSSとしての提供が考えられる」-UCROAおよび知能化プロの成果物の提供について- 産業技術総合研究所 比留川研究部門長に聞く
http://robonable.typepad.jp/trendwatch/2009/05/ossucroa-acdf.html
2009.07.27 富士通、物体の3次元位置や動きを認識するロボット向け画像処理モジュール開発
http://robonable.typepad.jp/news/2009/07/20090727-3-4c38.html
2009.07.16 三菱電機と京大、セル生産ロボシステムの高度化技術を開発、ブレーカの組立で実証
http://robonable.typepad.jp/news/2009/07/20090716-18bb.html
2009.05.29 産総研、OpenRTプラットフォームの動作パターン設計ツール「V0.1」を紹介
http://robonable.typepad.jp/news/2009/05/20090529-openrt.html
2009.05.27 前川、知能化プロのリファレンスハード紹介、来年度には無償の貸し出しを予定
http://robonable.typepad.jp/news/2009/05/20090527-5922.html
2009.04.01 セグウェイジャパン発足、横浜市などに次世代交通システムとしてSegwayを提案
http://robonable.typepad.jp/news/2009/04/20090401-segway.html
2009.02.10 富士ソフト、自律型移動ロボット事業に参入、ロボット愛好家向けにテスト販売へ
http://robonable.typepad.jp/news/2009/02/20090210-6331.html
2008.10.16 NEDO、知能ソフトウエア再利用性向上技術の開発、産総研と富士ソフトに委託
http://robonable.typepad.jp/news/2008/10/20081016-nedo-4.html


