日本工業大学 機械システム学群 創造システム工学科は、ゼットエムピー(ZMP)と原田車両設計、znug design(ツナグデザイン、根津孝太代表)と共同で、身長126cmと大型の教育用ヒューマノイドを開発した。同学科が実践する「応用から基礎へ」の教育システムに組み込むことで、学生の学習意欲の向上や実社会を意識した工学教育に役立てる。また、2010年度に取り組むボランテイア授業に利用することで、学生のコミュニケーション能力などの向上につなげる。
同大学では、2004年にZMPの2足歩行ロボット教材「e-nuvo WALK」を35台導入し、1年生から1人1台の教育環境で2足歩行ロボットに触れさせている。初めに最終目標となる2足歩行ロボットを提示することで関心を高め、工学の各専門分野や、数学や物理などの基礎を意欲的に学習させるようにしている。同大学では、この教育システムを「応用から基礎へ」(写真1)と表現している。また、学習した工学理論を実社会に役立てる「実工学」を掲げていることから、e-nuvo WALKの発展系として、実世界に有効なインタラクションが行える大型サイズのロボットを開発、導入を決定した。
開発したロボットは、126cm(身長)×45cm(幅)×30cm(奥行き)と小学校低学年に相当するサイズ。重量は15kg。関節自由度は、頭部3自由度、片腕3自由度、片脚6自由度の計21自由度を有する。センサ類はカメラのほか加速度センサ、ジャイロセンサ、障害物検知センサ、距離センサ、焦電センサを搭載。そのほかプロジェクション機能や会話機能も持つ。
授業では、米Microsoft社の「Microsoft Robotics Developer Studio(MRDS)」を利用していることから、作成した制御プログラムをMRDSの物理シミュレータなどでの検証、e-nuvo WALK上での動作確認を行った後に、開発したロボットに実装するという使い方を想定している(動画1、写真2)。2010年度には、これらの中間サイズに相当するヒューマノイドの開発も予定している。
また、2010年度から取り組むボランティア授業「ロボットボランティア」でも利用する。これは学生がロボットとともに小中学校を訪問して授業をしたり、介護福祉施設でパフォーマンスをしたりすることを通じて、「ロボット工学の現実社会への適用を意識させ、コミュニケーション能力を養う」(同学科の中里裕一准教授)というもの。搭載したプロジェクション機能や会話機能を用いることで、例えば授業で、板書での説明が難しい詳細な図を表示して理解を促進したり、先生を務める学生とのやり取りを通じて学習意欲を喚起したりできる(動画2)。あたかも教師を“サポートする教師”として活用することができる。
併せて、ヒューマノイドはノンバーバルコミュニケーションが行えることから、立体的なメディアの1つと捉え、ICT(Information Communication Technology)教育にも役立てる。具体的には、授業での演出シナリオなど教師用のコンテンツの作成に取り組む(写真3)。また、学内での画像処理や音声処理などの成果を実装することも考えている。
同学科は、2009年4月に「システム工学科」から名称変更して新設された。上述のロボットボランティアは2年生の後期から選択科目として取り組むものであり、2010年度からスタートすることになる。今回の開発は学科創設に関わる予算として計上したもので、開発費は約1,200万円。大学としてはオープンキャンパスなど大学広報としても利用することで、受験数の拡大につなげることも考えている。
ZMPからは、開発ほかインターンシップの受け入れやメンテナンス方法をはじめとする企業ノウハウの教示などが提案されたことから、開発を委託したという。
動画1 開発した大型ヒューマノイドの歩行の様子。MRDSの物理シミュレータ上(写真4)で作成した制御プログラムの検証、e-nuvo WALK上での動作確認を実施した後に、開発したロボット上に実装するという使い方を想定。なお、大型ロボットへのMRDSへの適用は初という。
動画2 記者発表では、ロボット自身による紹介から、授業での利用を想定した掛け合いまでを披露した。ICT教育のコンテンツとしての用途も目指す。左は創造システム工学科の中里准教授。
写真1
日本工業大学が実践する「応用から基礎へ」の教育システム。1年生から2足歩行ロボットに触れさせることで感動を与え、数学や物理などの基礎を意欲的に学習させている。開発したロボットによりこのシステムを強化する。同大学では、この5年間でe-nuvo WALKのメンテナンスに約300万円を費やしている。それだけ積極活用している。
写真2
MRDSの物理シミュレータ上での検証、e-nuvo WALK上での動作確認の後に、開発したロボットに実装する。e-nuvo WALKと開発したロボットとの中間サイズのロボットの開発も進めている。
写真3
教師としての利用は学生から提案されたもので、授業での演出シナリオなど教師用のコンテンツの作成に取り組むことでICT教育にも役立てる。
写真4
MRDSの物理シミュレータ上での検証。ロボットの力学的な挙動を確認したり動的な制御をシミュレーションしたりできる。
写真5
外装部品の取り付け構造。大腿カバーは複雑に動作することから、筋肉に追随する皮膚のように、3個所をベルトで固定する方法を採用している。軽量化を図るため肉抜きなども行っている。これらは粉末焼結法のラピッドプロトタイピング装置を用いて製作した。
■関連サイト
2009.10.03甲南大、Webからデータベースを自動生成して質疑応答をする対話ロボ披露
http://robonable.typepad.jp/news/2009/10/20091003-ff2e.html
2009.07.27 ZMP、ロボ教育フォーラム開催、学習意欲・座学の理解力の向上を狙った例が目立つ
http://robonable.typepad.jp/news/2009/07/20090727-zmp-d4.html
2008.12.02 近大、ZMPの2足歩行ロボ教材を使った、大規模人数によるロボット競技会を公開
http://robonable.typepad.jp/news/2008/12/20081202-zmp2-2.html


