岐阜県情報技術研究所は、1月8日、9日開催の「あいち次世代ロボットフェスタ2010」で、開発中の水田用小型除草ロボット「アイガモロボット」の最新モデルを公開した。旧モデルより大型化し、かつ低重心設計にすることで走行時の安定性を確保。また、画像処理情報を用いた自律走行制御により圃場の端での効率的なターンも可能にした。実用化の時期は未定だが、販売は共同開発しているみのる産業が手がけることになっており、30万円での提供を予定している。
アイガモロボットは、水田にアイガモを放ち、除草や害虫の駆除などの効果を期待する「アイガモ農法」の実現を目指したもの。本体の左右に搭載したクローラにより条間の雑草を踏み潰したり、また、水を濁らせて雑草の光合成を阻害したり雑草や種に土をかぶせて生育・発芽を抑制したりすることで除草効果を得る。田植え後の苗が活着する約1週間後から、成長して雑草による影響が小さくなる約7週間後までの利用を想定している。
2007年に公開した旧モデルは、サイズが1,000mm(長さ)×400mm(幅)×370mm(高さ)、重量4.5kg。クローラ幅は90mmだった(長さは追加したバランサー部を含むため本体の長さはもっと小さい)。小型・軽量だっために圃場内のスタック(凹凸)の影響を受けやすく、直進性の確保が難しかった。最新モデルは、クローラ幅が150mmのもので、サイズが500mm(長さ)×450mm(幅)×500(高さ)、重量8.6kgと大型化し、左右のクローラ内にバッテリーを搭載した低重心設計にすることで走行時の安定性を確保した。また、このような設計によりモーメント(回転力)による影響にも強いという効果を得ている。
自律走行制御については、旧モデルでは距離センサで得た情報をもとに行っていた。具体的には、本体の左右対称に設置した測距センサで稲列を挟み込むように計測し、左右のセンサの計測波形をほぼ同じになるように走行制御することで稲列のほぼ中央をまたぐようにしていた。簡素な方法だったが、圃場の端でのターンに課題があった。
最新モデルでは、本体の前後に近赤外カメラを搭載し、稲から検出されるクロロフィル(緑色色素)を捉えることで稲列を認識。稲列の終端に差しかかったときは、アゼの形状も認識することでターンができるようにした。ターンは、稲列の終端を認識すると旋回位置まで直進し、次の稲列へと旋回・移動し、稲列をまたぐように進入することで行う(写真1)。スイッチバックをすることで効率的なターンを可能している。また、カメラには偏光フィルタを付加することで太陽光の直射など外乱への対策も行っている。
そのほか、クローラベルト駆動機構は泥が抜けやすい構造に変更することで、メンテナンス性を向上している。
アイガモロボットの開発は、「地域イノベーション創出研究開発事業(*)」(経済産業省)の委託事業として2008年度から取り組んでおり、2009年度末に終了する。「実用化の時期など、おおよその販売価格が決定している以外は現段階では未定」(田畑克彦主任研究員)とのことで、実地試験やモニター販売などを通じて、さらなる改良(写真2)に取り組むという。
写真1 自律走行実験の様子。稲列の終端を認識すると旋回位置まで直進し、次の稲列へと旋回・移動し、稲列をまたぐように進入することでターンを行う。スイッチバックをすることで効率的なターンを実現している。
写真2 検証しやすいよう、本体は2つの画像処理ユニット部(写真左右)と走行制御ユニット(写真中央)の計3つのユニットから構成される。実用化の段階ではこれを1つに集約することを予定している。
■注釈
*:地域において産学官連携による、事業化に直結する実用化技術の開発により新産業・新事業を創出し、地域経済の活性化を図ることを目的とした事業。最先端の技術シーズをもとにした実用化技術の研究開発を実施する。「一般枠」に加え、農林水産業の振興や農林漁村市域の活性化に寄与する研究開発テーマを対象にした「農商工連携枠」も設置しており、アイガモロボットなどが採択されている。平成20年度予算(予算額:74.7億円)では、一般枠は89件、農商工連携枠は29件をそれぞれ採択した。
■関連サイト
ロボットが拓く!あしたの農業
クリーン農業の支援が期待されるアイガモロボット【岐阜県情報技術研究所】
http://j-net21.smrj.go.jp/develop/robot/entry/20090226-10.html (※J-Net21提供記事)
ロボナブル2008年6月特集
農業ロボット企画 第1弾 ロボティクスがもたらす農業革新
プロローグ なるか!農業の工業化!? 次世代農業モデルとの出会いでRT関連技術が普及へ
http://www.robonable.jp/monthly/2008_06/index.html
PART1 農作業の省力化・効率化に寄与するか!? 最新!主要農業ロボットの技術動向
http://www.robonable.jp/monthly/2008_06/p1.html