菱田伸鉄工業と立命館大学の金岡克弥チェアプロフェッサー(MMSE)は共同で、風などの外乱下でも安定した機体制御を可能にするロボット飛行船を「目視検査用ロボット浮遊カメラ」(写真)として開発、5月26日~28日開催の「中小企業総合展」で披露した。ラジコン用プロポで操作して、検査したい個所の撮影や目視検査が手軽かつ正確に行える。各倉庫管理や各種インフラの点検など屋内外の用途にかかわらず幅広く提案していく。7月28日~30日開催の「ROBOTECH 次世代ロボット製造技術展」への出展も予定しており、同展では飛行デモの実施を予定する。
金岡チェアプロフェッサーの特許技術「推力伝達ゲートシステム(TTGS)」を実装することで、従来の類似のシステムと比べて高精度な制御を可能にした。
同技術は飛行船などの浮遊移動体を、推力を受ける「本体部」と推力を発生する「効果器部」(スラスタ)に分離し、かつ、その結合部に「推力伝達ゲート」を設けることで、ここで効果器部から本体部に作用する推力を推定できる構成にするのが特徴(図:金岡チェアプロフェッサーの論文より引用・転載)。本体部は推力伝達ゲートのみから力およびトルクが加えられるようになり、風などの外乱や流体の非線形ダイナミクスの影響から隔離することができる。ここでの分離は、機械的でも計算上でもよい。結合部にかかる力およびトルクを推定するセンサには、今回は3軸加速度計と角速度計を搭載するワイズラブの制御ボード「MAVC1」を用いた。
また推力伝達ゲートは、目標軌道を実現するために本体部が受けるべき推力を計算・指令する「推力計画部」と、推力伝達ゲートに発生した推力を効果器部に直接フィードバックし、指令推力を発揮する効果器部を駆動する「推力制御部」から構成される。効果器部は外乱や流体の非線形ダイナミクスの影響を受けるが、このように直接フィードバックして押さえ込むことにより安定した機体制御を可能にする。推力計画部はフィードフォワード制御を行っている。
飛行船などの浮遊移動体の制御は、一般には位置や速度センサの情報をフィードバックし、スラスタを駆動して行う。位置や速度のセンシングは信頼性に欠けるうえ、センサとアクチュエータの応答が遅れるため、外乱下では目標軌道に沿っての制御は困難だった。同技術では、推力の現在値を効果器部に直接フィードバックするため高速な応答が可能となり、外乱下でも高精度の制御が可能になる。
披露したロボット浮遊カメラは、おもにヘリウムバルーンとワイヤレスカメラや電動スラスタ、各種制御ボード、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)から構成され、カーボンフレームで囲んでいる。ワイヤレスカメラが捉えた画像をHMDで閲覧することで、ロボット浮遊カメラの視点で操作および目視検査が行える。
電動スラスタは、右回転と左回転の2種類を2機ずつ計4機を搭載しており、これらの回転力を調整することでXYZ方向に加え、ヨー方向の4軸制御を可能にしている(写真下)。それぞれの電動スラスタの回転数が同じときは、それぞれの回転力で発生した反力を相殺し、回転数を変更すれば、任意の方向に機体方向が変えられる。スラスタの推力を常に揚力に生かすことができ、バルーンを使用しなくても浮遊することができる。
おもな用途には、建物内の内装や汚れの確認、工場設備の目視点検など屋内での用途に加え、コンクリート壁やコーキング(充填剤)の点検、橋梁の目視点検、工場プラントの配管点検など屋外用途も想定。これらの点検作業は広範囲に足場を設置し、場合によっては保温材を解体したうえで実施するため、検査時間およびコストが相当かかる。菱田伸鉄工業では、高効率かつ低コストでの目視点検を可能にするシステムとして、広く売り込みを図る。
公開したロボット飛行船は「ものづくり中小企業製品開発等支援補助金(試作開発支援事業)」に採択され、開発した。
■参考文献
1)金岡克弥 , 川村貞夫 ,“ダイバーロボットの実現に向けて”, 日本ロボット学会誌 , Vol.22 , No.6 , pp732-737 , 2004.
■関連サイト
【再掲】2010.03.24日立エンジ&サービスなど、配管検査システム開発、自走ロボで多様な現場に対応
http://robonable.typepad.jp/news/2010/03/22hitachi.html#tp
2009.09.17 イクシスリサーチ、プラント検査や高所作業に使えるクローラロボット開発
http://robonable.typepad.jp/news/2009/09/20090917-a7ec.html
2008.09.18 日立エンジ&サービスなど、配管腐食を診断するロボットシステム開発へ
http://robonable.typepad.jp/news/2008/09/20080918-cc3e.html
2008.05.27 山口大、腐食厚誤差0.05mmの鉄筋コンクリ非破壊検査システム開発
http://robonable.typepad.jp/news/2008/05/20080527-005mm-.html


