菱田伸鉄工業と立命館大学の金岡克弥チェアプロフェッサー(MMSE)は7月28日~30日開催の「次世代ロボット製造技術展 ROBOTECH」で、風などの外乱下でも安定した機体制御を可能にするロボット飛行船「目視検査用ロボット浮遊カメラ」の試作機を展示。理論通りの安定飛行に向け、あと一歩の技術レベルに到達していることを明かした(動画)。制御ボードにH8マイコンを搭載するワイズラブの「MAVC1」を使用しているがシステムの応答性が悪く、制御が不安定になっていると推測されるため、現時点では安定飛行が行えないという。今後、システムを見直すことなどで改善を図る
展示したロボット飛行船は、金岡チェアプロフェッサーの特許技術「推力伝達ゲートシステム(TTGS)」の実装により、従来の類似のシステムと比べて高精度な制御が行えるのが特徴。
TTGSでは、推力を受ける「本体部」と推力を発生する「効果器部」(スラスタ)に分離し、かつ、その結合部に「推力伝達ゲート」を設けることで、効果器部から本体部に作用するすべての推力を推定できる構成にする。本体部は推力伝達ゲートのみから推力(力およびトルク)が加えられるようになるため、どの程度の推力を発生すれば推進できるかを確実に推定することができる。
また、推力伝達ゲートにおける制御ソフトは、目標軌道を実現するために本体部が受けるべき推力を計算・指令する「推力計画部」と、推力伝達ゲートで推定した推力をスラスタにフィードバックし、推力計画にもとづく指令推力を実現する「推力制御部」の構成にする。効果器部は、外乱や流体の非線形ダイナミクスの影響を受けるが、このように推力を直接フィードバックし指令推力を即座に発生するため、高速な応答が可能になる。結果、外乱に強い機体制御になる。
ただしTTGSは、もともと水中ロボットを前提に考案されたものであり、空中におけるシステムの挙動は、水中よりも遙かに速い。また、推力伝達ゲートシステムを実装する制御ボードには3軸角速度計と3軸加速度計を搭載するMAVC1を設置し、3軸加速度計でスラスタ推力を推定しているが、H8マイコンをベースにしており、挙動の速さへの対応が難しい。60msecでシステムを動作させているため「センサのフィードバックがワンテンポ遅れ、制御が不安定になっていると推測される」(金岡チェアプロフェッサー)という。現在の試作機では飛行させるほど挙動が不安定になることから、今回の展示では飛行デモは実施しなかった。
今後の対応としては、まずは浮動小数点演算を使っているのを固定小数点演算のみに改めることで処理能力の改善を図り、それでも応答性の改善につながらない場合は、搭載している制御ボードの変更を検討するという。すでに現状のスラスタで十分な推力を得られることを確認できており、重量のある制御ボードを積載できることから、それを刷新する可能性が高いという。
TTGSでは、「ある程度の制御コンピュータの速度をセンサの正確さが求められ、現状の試作機ではそれが不足していたことから、その確保を第一に改善を図っていく」(同)という。
動画 推力伝達ゲートシステムを(TTGS)および制御を実装しているため、機体を傾けると推力を発生させて機体を安定姿勢に保とうとする。出展した試作機は、システムの応答性に問題があり、機体制御が不安定になるため、理論通りの安定飛行が行えない。
■関連サイト
2010.05.29 菱田伸鉄工業と立命館の金岡研、外乱下でも安定制御が可能なロボ飛行船を公開
http://robonable.typepad.jp/news/2010/05/27mmse.html#tp
連載「モノづくりを、サービスを変革する挑戦者たち」
第2回 飛行船とは思えない!「超」安定制御が可能な目視検査用ロボ飛行船を提案
― 菱田伸鉄工業 菱田 聡さん
http://robonable.typepad.jp/roboist/2010/05/post-100531.html#tp


