大阪大学と国際電気通信基礎技術研究所(ATR)知能ロボティクス研究所は共同で、人の存在感を効果的に伝えられる小型の遠隔操作型アンドロイド「Telenoid(テレノイド)R1」(写真は阪大の石黒浩教授〔右〕とイーガーの黒木一成会長〔左〕)を開発した。人として認識できる必要最小限の外観と動きを備えるのみだが、操作者の仕草などを効果的に表現することができ、その人が側にいるような存在感が伝えられる。遠隔対話型のメディアとして、クラウド・コンピューティングを組み合わせることで通信教育やデイケアサービス(動画1、2)などへの応用展開が期待される。
販売は、組込みシステム開発を手がけるイーガーが行い、「AvatarNT(アバタント)」の名称で遠隔操作システムとともに提供する。価格は、Telenoidと同じ仕様で研究用の「AvatarNT R1」が300万円以下、廉価版の「同P1」が約 70万円を予定。受注生産となる同R1は10月より販売を開始し、今年度は10台の販売を目指す。2011年度以降は、両方を合わせて100台の販売を目指す。
石黒教授らが開発した遠隔操作型アンドロイド「Geminoid(ジェミノイド)HI-1」や「Geminoid F」の遠隔操作システムを継承しながらも、人として認識できる必要最小限の外観と動きを備えるのが特徴。これらでは実在する人の外観に近づけることで特定の個人の存在感を伝えていたが、Telenoidは男性にも女性にも、あるいは幼児にも高齢者にも見え、幅広く遠隔操作者の存在感を伝えることができる。 またGeminoidでも利用している、顔トラッキングシステム(いわゆるFaceAPI)で捉えた遠隔操作者の表情や仕草をTelenoid上で再現することができ、より強く存在感を伝えることができる(写真左)。眼や口の動き、首の傾け方など(ノンバーバルコミュニケーション)を通じて知人の記憶が喚起され、あたかも側にいるような感覚をおぼえることによるものと推定される。
人の存在感を効果的に伝えるデザインとしながらも、脳科学的および認知科学的な検証はこれからで、実験を通じて最適なデザインへと変更する。シリコーン製の外皮を用いるなど、人の生々しさを表出した外観のため不快な印象を与える可能性もあるが、「見慣れてしまうと、むしろ忘れられない、やみつきになるデザイン」(石黒教授)という。
サイズは、AvatarNT R1とP1ともに、550mm(幅)×220mm(厚み)×800mm(高さ)と、やや大きめの赤ちゃん程度。重量は、R1が約5kg、P1が約4kg。動作個所は、R1は眼(上下・左右)、口(開閉)、首(上下・左右・斜め傾げ)、手(前後)。P1は眼(左右)、口(開閉)、首(上下・左右)、手(前後)を予定。例えば、首を斜めに傾げる動作をなくしても“うなだれる”といった表現ができるかどうかといった検証したうえで動作個所を決定するという。いずれも電動モータで動作する。
R1ではFaceAPIによる遠隔操作システムで仕草などを伝えるが、P1では価格を抑えるため、他システムで代替することにより仕草を伝えるようにする。また外装についても、シリコーン製の外皮のR1に対し、P1では布製の外皮を用いることで低価格化につなげる。
R1については、製造販売および遠隔操作システムの開発はイーガーが、メカ機構の開発はヴイストンが、外装の開発はココロが、それぞれ手がける。イーガーではロボットを(テレビ、携帯電話、携帯音楽プレーヤーなど、パソコンに次ぐ)第5のメディアと捉えており、「AvatarNTとクラウド・コンピューティングを組み合わせることで、遠隔操作による新たな在宅サービスにつなげたい」(黒木会長)という。
動画1 Telenoidを介しての在宅介護サービスの一例。
動画2 Telenoidを介しての在宅介護サービスの一例(続き)。こちらではTelenoidの腕を見ながら腕まわりの運動もしている。
■関連サイト
2010.07.03 東大など、光りや揺れで何気ない気持ちやひと言が伝えられるコミュニケーションロボ発表
http://robonable.typepad.jp/news/2010/07/04uxxu.html#tp
2010.04.05 阪大など、表情豊かなアンドロイド発表、アクチュエータなど削減し取り扱いを容易に
http://robonable.typepad.jp/news/2010/04/05kokoro.html#tp
2010.02.17 イーガー、段ボール製マネキンロボット展示、衣服を着用した展示で訴求力など検証
http://robonable.typepad.jp/news/2010/02/17eager.html#tp
2010.01.11 イーガー、ロボットの仕草を交えた広告宣伝効果を検証、年内には広告ビジネス開始
http://robonable.typepad.jp/news/2010/01/11eager.html
2009.12.03 イーガー、ダンボールロボ販売へ、百貨店やアパレルに向け200体の販売を目指す
http://robonable.typepad.jp/news/2009/12/03eager.html


