電動アシスト自転車の2010年1~6月における国内累計販売・出荷台数が20万台超となり、上半期として初めて2輪車を上回ったことがわかった。健康志向や環境意識の高まりを追い風に販売を伸ばし、通年での2輪車超えもほぼ確実となった。
自転車産業振興協会と日本自動車工業会の資料によると、2010年1~6月の国内累計販売・出荷台数は、電動アシスト自転車が20万6,774台で、2輪車の19万4,147台を超えた。電動アシスト自転車は、2008年に原動機付き自転車の販売台数を上回ったが、2輪車全体を抜けば通年で初となる(図)。
坂道の上り走行など既存自転車の弱点を克服しながら2輪車より安く、かつ乗りやすいことが高齢者や女性、学生らユーザー層を広げた。
電動アシスト自転車は健康志向やガソリンの高騰などを背景に個人需要が伸びているほか、環境対策として企業や自治体の導入が進んでいる。買い替え需要が中心の2輪車と比べ新規購入比率が高く、一層の市場拡大が予想される。
業界に先駆けて電動アシスト自転車「PAS」を発売したヤマハ発動機の2010年1~6月の販売台数は4万8,000台(前年同期比18%増)。同社調べによる市場伸び率の3%強を大幅に上回った。幼児2人同乗タイプ(写真、6月発売のSリトルモアリチウム)などの投入によりユーザー層を拡大し、テレビCMの再開など積極的な販売促進活動も功を奏した。官公庁や企業ニーズの取り込みを狙って2009年12月に開始したリースシステム「パスクル」についても、すでに約40カ所と契約するなど好調だ。
約40%のシェアを持つ最大手のパナソニックは新商品を積極投入している。5月に女性をターゲットにしたスポーツタイプを投入。主婦や高齢者以外の新たな顧客層の開拓を目指す。7月には、ブレーキ時に発生するエネルギーを再びバッテリーに蓄積し、1回の充電で最長97kmまで走れる回生充電機能を搭載した新モデルを発売した。
また、三洋電機の2009年度の販売台数は前年度比50%増と大きく伸びた。2010年度も「伸びは鈍化しているが、4~6月は前年同期を上回るペース」(広報部)と手応えを感じている。4月発売の新モデルは回生充電機能を強化。発電動機の回転速度の変化とペダルを踏み込む力を総合的に判断して充電量を制御し、平地走行中でも効果的に充電する。今後は「自転車販売店だけでなく家電量販店にも販路を広げる」(同)考えだ。
電動アシスト自転車の躍進を受け、同事業から撤退したホンダも再参入する意向。まずは2011年をめどに急成長している中国市場に新車を投入する。現在の勢いで需要が拡大すれば、国内市場に再参入する可能性もありそうだ。
なお、モビリティロボットの実証実験特区の申請を受けたつくば市は低炭素交通システムの構築に向け、例えば近距離移動では自転車とモビリティロボットなどをシェアリングすることを明らかにしている。電動アシスト自転車が販売台数を急速に拡大する中では、モビリティロボットが使える分野は弱者の移動支援や観光といった特定サービスに限定される可能性が高く、同市において、モビリティロボットにどのような価値を組み合わせるのかが注目される。
■関連サイト
2010.07.08 つくば市、低炭素交通システムの構築に向けモビリティロボのシェリングシステムなど構想
http://robonable.typepad.jp/news/2010/07/08tsukuba.html#tp
2009.04.01 セグウェイジャパン発足、横浜市などに次世代交通システムとしてSegwayを提案
http://robonable.typepad.jp/news/2009/04/20090401-segway.html
ロボナブル2009年12月特集
2009年版ロボットビジネス番付 -今年の注目記事から独自評価!-
【東横綱】「Segwayによる未来都市交通モデル」(セグウェイジャパン)
http://www.robonable.jp/monthly/2009_12/p2.html
トレンドウォッチ
高齢化社会、環境問題など社会システムから議論を
―搭乗型移動ロボの普及に向けた提言(モノづくり推進会議 ロボット研究会 公開討論会より)―
http://robonable.typepad.jp/trendwatch/2010/03/post-100317.html