筑波大学 システム情報工学研究科 サイバニクス研究室の竹内奨氏は、9月7~9日開催の「第9回情報科学技術フォーラム(FIT2010)」で手指に装着して把持動作を支援する「装着型サイバニックハンド」(図はイメージ)を紹介。自分で指を動かせない片麻痺患者に対しても、把持動作を効果的に支援できる可能性を示した。今後、麻痺部位の積極利用によるリハビリ効果(機能回復)を検証することで、麻痺患者への適用やリハビリ現場への展開を目指す
サイバニックハンドは、手指に装着して物体の把持動作を支援するシステム。その使用により麻痺患者が麻痺した側の手や指を積極的に動かし、関節の拘縮の防止や麻痺症状の改善につながる。すべての手指の関節動作の支援は難しいため、現システムでは円筒状の物体の把持動作を支援するようにしている。
把持動作の支援は、屈曲方向は弾性体の復元力により、伸展方向はワイヤー駆動によりそれぞれ行う。フレーム先端部に付加したワイヤーを、手の甲に配置したモータで巻き取ることで指の第1~第3関節を連動させて伸展する。屈曲と伸展の切り替えは、麻痺のない側の手でプッシュスイッチを操作して行う。
片麻痺においては、指の屈曲はある程度できるのに対し、自発的な伸展は難しいことを踏まえ、このような構成にした。また、弾性体の復元力により駆動するため、把持対象の形状に馴染むように把持できるうえ、把持中にモータを出力しなくてもよいという利点もある。計測・制御のために人指し指の各関節部にはポテンショメータを設置している。
実験では計16の関節を有する、手指を模したモックアップを製作し、これにサイバニックハンドを装着してペットボトルの把持動作を行った。指の各関節をペットボトルの形状に馴染むように把持できることが確認された。
今後は、麻痺患者にサイバニックハンドを装着してもらい、把持動作の支援の有効性ならびに手指の積極利用によるリハビリ効果を検証する。また、生体電位(表面筋電位)信号を利用した制御方法の開発にも取り組む。生体電位センサは手指ではなく、手首よりも腕側に配置する見込みとのことで、適切な配置位置をほぼ把握できているという。
■関連サイト
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