産業技術総合研究所と川田工業は、人型ロボット研究開発用プラットフォーム「HRP」シリーズの新版として「HRP-4」を発表した。川田工業がハードウエアを、産総研 知能システム研究部門が制御ソフトウエアをそれぞれ開発。制御システムにはハードリアルタイム処理(マイクロセックでの処理)を可能にしたLinuxカーネルや、産総研が開発した、RTC(RTコンポーネント)標準仕様のソフトウエアプラットフォーム「OpenRTM-aist」(*1)を採用しており、RTCをはじめとする国内外のソフトウエア資産を利用することで研究開発を高効率に進められる。2011年1月以降に国内外の大学や研究機関に提供を開始する。
価格は、HRP-2〔5年間のレンタルで3,800万円(国内学術研究機関向けのハードウエア価格)〕より安い2,600万円を予定。受注生産する川田工業としては、「年間3~5台の販売を目指す」(五十棲隆勝執行役員)という。
HRP-4は、2009年3月に発表した女性型ヒューマノイド「HRP-4C」の高密度実装技術の適用により身長151cm、体重39kgと、軽量かつスリムなボディにした。様々な方向から対象物にアプローチできるよう片腕7軸の構成としており、全身で計34軸を有する。
また、産業用ロボットの安全規格ISO 10218ではツールセンターポイントの最大動力は80W以下、最大力は150Nという制御下で人との協調運転を許容していることから、人との協調作業に対応できるよう各関節には80W以下のモータを採用した。肩腕の可搬重量は0.5kg。
制御システムには、まずOSにはRT-Preemptパッチを適用したLinuxカーネルを採用。ハードリアルタイム処理を可能とするためのパッチで、標準的なPOSIX API(*2)を用いた実時間ソフトウエア開発とマルチコアプロセッサの利用を可能にしている。
また、ミドルウエアには産総研が開発したOpenRTM-aistを採用。ロボットシミュレータ「OpenHRP3」対応のRTC群や、HRPシリーズの動作制御技術を組み込んだRTC群、音声認識や音声合成などのRTC群に加え、「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」(NEDO)で開発中のシステム設計ツールやデバッガなどからなるツール群「OpenRTP」を利用することができ、これらを任意に組み合わせることで各種ロボットの研究開発を高効率に進めることができる。
今年5月には米Willow Garage社が支援する、オープンソースコミュニティ「ROS.org」で公開されているロボット用基本ソフト「ROS(Robot Operating System)」とOpenRTM-aistをつなぐパッチ(継続的にパッチの調整を行っている)が産総研のGeoffrey Biggs研究員より公開されており、ROSが用意する各種ライブラリを利用できる可能性もある。
2011年1月以降に国内外の大学や研究機関に向け、保守サービスを含めて販売する。なお、発表したHRP-4は9月22~24日開催の「日本ロボット学会学術講演会」で公開する。
■注釈
*1:RTC標準仕様のソフトウエアプラットフォームには産総研のOpenRTM-aistに加え、セックのOpenRTM.NETや韓国OPRoSプロジェクトのOPRoSコンポーネントなどがある。
*2:IEEEによって策定されたオペレーティングシステムが提供する機能をまとめたアプリケーションインターフェースの国際規格。
■関連サイト
2010.09.09 米Willow Garage、プラットフォームロボットを40万米ドルで販売開始、割引特典も提供
http://robonable.typepad.jp/news/2010/09/09willow.html#tp
2010.05.24 OpenRTM-aistでROSライブラリの扱いが可能に、産総研のGeoffrey Biggs氏がROS.orgに統合のためのパッチを提供
http://robonable.typepad.jp/news/2010/05/24willow.html#tp
2010.02.08 知能化プロ、一部RTCをOSSとして公開へ、各種知能化パッケージとして整理・統合
http://robonable.typepad.jp/news/2010/02/08rtc.html
2010.01.29 産総研、OpenRTM-aistバージョン1.0リリース、遠隔からのコンポーネント制御可能に
http://robonable.typepad.jp/news/2010/01/29openrtm.html#tp
2009.11.25 川田工業の上体ロボット、低出力モータの採用とシステムの多重化により安全性確保
http://robonable.typepad.jp/news/2009/11/25kawada.html#tp
2009.11.19 川田工業、人と協働できる新型ロボ開発、ニーズと機能を合致させるビジネスモデル提案
http://robonable.typepad.jp/news/2009/11/19kawada.html
2009.05.29 産総研、OpenRTプラットフォームの動作パターン設計ツール「V0.1」を紹介
http://robonable.typepad.jp/news/2009/05/20090529-openrt.html#tp
2009.05.12 川田工業とGRX、人間との協働作業の検証に役立つ上体ヒューマノイド販売
http://robonable.typepad.jp/news/2009/05/20090512-gri-de.html
2009.04.13 産総研、HRP-2の後継となるHRP-4Rの開発を予定、09年度の下半期には発表へ
http://robonable.typepad.jp/news/2009/04/20090413-hrp-2h.html#tp
2009.03.17 産総研ヒューマノイド研、若い女性のロボット開発、エンターテインメント分野に応用
http://robonable.typepad.jp/news/2009/03/20090317-7667.html
トレンドウォッチ
「ソフトウエアベンダーに引き継ぐか、OSSとしての提供が考えられる」
-UCROAおよび知能化プロの成果物の提供について-
産業技術総合研究所 比留川研究部門長に聞く
http://robonable.typepad.jp/trendwatch/2009/05/ossucroa-acdf.html#tp


