東京大学大学院 情報理工学系研究科の中村仁彦教授と高野渉講師の研究室は、仏Aldebaran Robotics(アルデバラン・ロボティクス)社の「教育パートナーシップ・プログラム」に参加し、同社の研究用ヒューマノイド「NAO(ナオ)」を30台導入して研究および教育に活用することを発表した〔写真左が中村教授、右はBruno Maisonnier(ブルーノ・メゾニエ)CEO〕。2010年5月よりスタートした制度で、中村・高野研究室が初めての参加となる。導入価格は非公開だが、同制度への参加により低価格で購入することができ、かつ同社の基金より資金的な援助が受けられる(オプションにより価格は変動するが、教育機関向けには1体当たり214万円程度で販売されているという)。
中村・高野研究室では、人とロボットが言葉と身体を使って自由にコミュニケーションできる研究などに役立てるほか、今年度の冬学期より工学部機械系3年生を対象にした授業でも活用する。
同制度は同社に加え、研究者や教育関係者からなる委員会が申請内容を選定したうえで参加を認めるもの。ロボット自身が学習したり人の行動を真似て自身に取り込んだりする、いわば知能の創発につながる中村・高野研究室の申請内容を評価し、プログラムへの参加および支援を決定した。
冬学期より実施する授業では受講生全員にNAOを与え、芸術系の講師に指導を仰ぎながら身体の姿勢や動きの表現の美しさを考察する。ディスカッションや身体と認知に関する参考図書の閲覧、プログラミングを通じて論考を深めていく。また研究では、人を理解し人と自由にコミュニケーションできるロボット技術の構築につなげる。
記者発表会では、その研究の一部として運動記号と言語推論を結びつける数理モデルの構築により、ロボットが言語推論をして運動生成するデモを披露した。具体的には、35の運動記号と59の言語(うち35個が動詞)持たせたロボットに音声入力をし〔音声認識エンジンにはJulius(ジュリアス)を使用〕、分類された運動記号の統計モデルにもとづいて入力言語に近い運動記号を推論し、確率の高い上位4つの運動を生成させた。ここでの「分類」とは、より上位の概念でまとめられたものと捉えてほしい。デモ(動画:デモ1)では、左側のNAOから入力言語に最も近い(確率が高い)と推論した運動を披露した(右側のNAOは「水を飲む」という入力言語に最も近い動作を行っている。なお撮影の都合上、4番目の行動を行っている、最も右にいるNAOは映っていない)。
このような言語と運動記号を結びつける数理モデルの導入により、「どのような言語が入力されたとしても、統計的な分類を通じて、生成される運動をある領域の中に確実に取り込むことができる。入力言語と行動とを関連づける際のポイントになる」(中村教授)とし、自ら運動を生成して人とのコミュニケーションを行うロボットの実現につながることを強調した。
今回のデモでは、NAOの扱いに慣れていないという事情から、音声認識および運動記号の推論は外部PCで行い、生成した確率の高い上位4つの運動プログラムを4体のNAOに通信してそれぞれの動作をさせた。
Aldebaran Roboticsとしては同制度の拡大を図るほか、中村教授の同意が得られれば研究成果を今後のNAOの開発に役立てたり、ユーザーコミュニティと共有したりすることも検討するという。また、「2011年のはじめには日本語を認識できるNAOの提供を始めるほか、アプリケーションの拡大に向け、身長1m強のサイズのNAOの開発にも取り組む」(Bruno Maisonnier CEO)という(動画:デモ2は同社によるデモ)。
日本総代理店を務めるアールティでは、(サービスやアプリケーションの開発状況により)「将来的にはNAOを家庭向けに提供することは十分あり得るとし、コンシューマ向けへの事業展開も構想している」(中川友紀子社長)という。
■関連サイト
2010.03.25NAOが世界中の研究機関で支持されるわけ仏Aldebaran RoboticsメゾニエCEOに聞く
http://robonable.typepad.jp/news/2010/03/25nao.html#tp
2010.03.12 仏Aldebaran Robotics、NAOによる安定化制御を披露、押されても安定して歩行
http://robonable.typepad.jp/news/2010/03/12aldebaran.html


