ロボットの目的の1つが、危険な作業を人間に代わって行うこと。崖や高所などの建設現場は危険が多く、ロボット技術が寄与できる領域いえる。山間地が多いわが国では線路や道路を敷設するため、山の側面を削ってコンクリートで固めるのり面(人工斜面)工事が必要になる。のり面工事では崖崩れを防ぐため、コンクリートに穴を掘って金属棒のアンカーボルトを打設して補強しなければならない。従来、この削孔・打設作業は滑落の危険を抱えながら人が行っている。
ヘビのような動きなど様々な形態で移動するロボット研究で知られ、「機構学」の権威でもある東京工業大学の広瀬茂男教授らの研究室が、こうした課題を解消しようとしている。広瀬教授らは4本脚で自由に動き回るロボ「TITAN(タイタン)」シリーズを開発しており、これを建設現場向けに仕立てた。4足歩行を採用したのは「クローラや車輪は、のり面のコンクリートを傷つける」(広瀬教授)ため。場所や状況に応じて適正な移動手段を選べるのはロボットの移動を長年研究してきた実績があるからこそといえる。
初めて建設作業用に改良したタイタンは1994年に東急建設と共同開発した「TITAN VⅡ」。重さは60kgで、垂直に近い急斜面を崖の上部に固定した2本のテザーを巻き取りながら歩き回る。そして、のり面にボルトを打ち込む作業向けに進化させたのが大昌建設などと2003年に開発した「TITAN XⅠ」(写真)だ。
TITAN XⅠはエンジン式油圧駆動で、重さは7t。最大長10mと大型だが、トラックの荷台に乗るように工夫している。大昌建設のクローラを使ったボルト打ち込み機の技術を融合した。トラックで現場に運び、本体にあるクローラでのり面近くまで移動する。ワイヤをのり面上部に伸ばして人手で固定する。ウインチでワイヤを巻き取りながら4本脚で移動する。
傾斜を把握しながら適切な牽引力で上下に移動し、のり面形状のデータと3点のコーナーキューブで位置と姿勢を見つつ、のり面に傷をつけないように脚を動かす。エンジンが常に水平になるようにしており、穴を開けるドリルも高精度で位置制御する。打ち込み機では傷を治すといった後処理が必要だったが、これが不要になるためコスト低減につながる。
2008年に山梨県南アルプス市で実証実験し、良好な結果を得た。製品化が待たれるが、「現在、機械的な課題は解決した。後はソフトウエアの改善のみ」(同)としている。防水処理や制御回路なども更新し、来年をめどに実用化される見込み。
■関連サイト
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