本連載では、「ロボット」という切り口で起業した各地のベンチャーを紹介した。ロボットやRT(Robot Technology)要素部品の開発に限らず、教育サービスやコンサルテーションなどを幅広い業態を取り上げてきた。そして、ロボットのユーザー企業となるアサンテも取り上げた。
同社は、床下点検ロボット「ミルボ」を中心に構成される各種システムの導入により、業務プロセスの革新を図っている。さらに、10年がかりのプロジェクトとして取り組み、経営革新につなげることを目指している。具体的な成果が出てくるのはこれからだが、顧客価値をきちんと捉えた各種システムの導入や、サービスプロセスのリエンジニアリングを視野に入れた取り組みなど示唆に富む内容が多い。本連載 最終回となる今回は、改めてアサンテの取り組みを紹介する。
なお、本稿は同社のプロジェクトに関係しているロボットビジネス推進協議会 幹事の石黒周氏の知見を参考にまとめた。
顧客価値創出に寄与するプロセス
アサンテは、シロアリ防除では業界第2位の企業である。1位はサニックスであり、両社の売上げには開きがあると言われている。シロアリ防除サービスでは、すべてのプロセスを人が担っており、売上げを決定するのはサービス品質と人員数である。そのため、アサンテではトレーニング(人材教育)によりサービス品質の向上を目指すとともに増員にも注力しているが、これだけでは売上げを飛躍的に向上させることは難しい。また、これらがコストアップにつながっているという側面もある。
そこで、各種RT(Robot Technology)の導入によりサービスプロセスを刷新し、経営革新を図ろうとしている。そして、“次世代シロアリ防除サービス”業へと変貌を遂げることで、業界内でのプレゼンスをより高めようとしている。
シロアリ防除サービスのおおまかな流れを説明しておくと、一般家庭へ訪問し、事業PRや床下点検を勧めることから始まる。興味を持った相手には点検を実施し、家屋の状況報告と併せて、改善に必要な処置と費用について詳細な説明を行う。希望があれば見積りを行う。
契約に至れば、建物構造や被害状況などの詳細を技術スタッフへ申し送る。技術スタッフは再確認しながら、狭い床下や天井裏などへ一連の薬剤処理を行う。
保証期間中は定期的に顧客を巡回し、シロアリの再発生などに対処する保守点検を行う。このアフターサービスを保証期間満了まで実行してシロアリ防除サービスが終了する。
なお、実際の防除サービスは、さらに細かく、かつ複雑なサブプロセスから構成されることを断っておく。
同社では、シロアリ防除ロボット開発のプロジェクトメンバー(*1)とともに、このような一連のサービスプロセスを洗い出し、収益の向上につながるプロセスを抽出して、作業の変革を図ろうとしている。プロセス全体の再構成を睨みつつ、各種RTをどのようなタイミングで導入すれば変革が達成できるのかを検討している。
その一例が、営業効率や作業品質を向上するためのRTの導入である。
床下点検ロボットと連動した映像配信システムの導入により、顧客の安心感や信頼感の獲得につながり、成約数のアップが期待される(*2)。また、床下点検ロボットに薬剤ノズルを搭載することなどで、作業員の手が届かないような遠い個所や手が入らないような狭い個所でも散布でき、施工(防除作業)精度の向上も期待される(*3)。
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開発中のシロアリ防除システムの一例。2007年に神奈川県の鎌倉宮での実証実験で公開したシステム。作業員との協働作業を前提に開発しており、作業員の能力拡張を意識したシステム構成になっている。 |
| (a)シロアリ防除ロボット「ミルボⅠ」 | (b)協働ロボット | |
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| (c)壁内作業ツール | (d)コントローラ |
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| (a)シロアリ防除ロボット「ミルボⅢ」。写真右は、実際の点検の様子。なお、「ミルボⅡ」は防水性やノイズなどの安全基準を検討するために試作され、「ミルボⅢ」の安全対策に活かされている。 | (b)コントローラ。「ミルボⅠ」と同様、2本のレバーで操作できるシンプルな構成にしている。万一に備えて、コントローラ中央部には非常停止ボタンを搭載している。 | |
| 2月に大阪市の四天王寺聖霊院での実証実験で公開したシロアリ防除ロボット「ミルボⅢ」。ミルボⅢは作業員の代替を目的に開発しており、床下点検および薬剤噴霧の両機能を搭載している。 | ||
同社では、施工後5年間は年1回の定期点検を無料で行うことを保証しており、万一、保証期間内にシロアリの発生が確認された場合は、無料で再処理を行っている。施工精度が高まれば再処理の実施回数が下がり、収益の改善につながる。そればかりか、顧客との信頼関係の構築にもつながり将来、施工が必要なときに再度、アサンテを選択してくれることも期待される。
現在は、まず顧客価値の創出に寄与するプロセスへの各種RTの導入の検討を進めており、上述のような取り組みを進めている。同時に、作業チームの負荷を軽減し、作業効率のアップに寄与するプロセスへの各種RTの導入も検討している。そのうえで、各種RTを導入したサービスプロセスへと再構成(リエンジニアリング)を行うことを狙っている。
そのときは、現在の複雑なサブプロセスを縮約した、より効率的なものになっていることが想定されている。すでに同社では、各プロセスが抱える課題を整理し始めているという。
各種RTの導入によりサービスプロセスの革新を図っている
シロアリ防除に限らず、サービスは一連のプロセスを通じて顧客に価値を提供するため、RTを導入する場合は、プロセス革新を睨みながら導入を進めていかなければならない。その際は、段階を経て取り組むべきであり、同社の進め方はその一例として参考になるところが多いと言えよう。
なお、同社では、2010年頃には開発したシロアリ防除ロボットシステムを実作業に適用する意向を示している。2008年度は、三ヶ日総合研修センターでの運用を通じて機能検証などを行い、同時に、現在のシロアリ防除の作業プロセスの見直しもすることを予定している。詳細は、飯柴正美常務取締役へのインタビュー記事(http://robonable.typepad.jp/news/2008/02/20080219-2010-8.html)および、2月19日に大阪市の四天王寺聖霊院で実施した実証実験のレポート記事(http://robonable.typepad.jp/news/2008/02/20080220-irs-55.html)を参照いただきたい。
(注釈)
*1:アサンテのシロアリ防除ロボットの開発は、「サービスロボット市場創出支援事業」の採択事業として進めた。アサンテでは、これを起点に10年がかりのプロジェクトとして、RTを活用した次世代シロアリ防除サービス業への転身を図ることを企図している。
参加企業・団体は、アサンテ(受託事業者)、アサヒ電子研究所(通信システム開発)、国際レスキューシステム研究機構(ロボットシステム研究開発)、RTソリューション(プロジェクト総括・ロボット製造責任者)、MHIソリューションテクノロジーズ(カメラ関連部品製造)、スリーディーデータ(各種計測システムの導入検討・性能試験)、安全工学研究所(安全工学に基づく安全認証指導)。さらに、以下はアサヒ電子研究所と再々委託というかたちで参画している。ナカタテクスタ(ロボット本体製造)、スリーS電器製作所(制御部品製造)。
*2:厳密に説明すれば、サービスにおけるフロントステージとバックステージを意識したシステム構成をとっている。点検・防除作業の映像配信はフロントステージに該当し、これにより顧客の安心感や信頼感の獲得に結び付けようとしている。また、肉体労働となる床下点検・防除作業はバックステージに該当する。施工精度のアップなどサービス品質の向上により、結果として、顧客満足度の向上につなげるという側面もある。
*3:シロアリ防除には薬剤を付着したシロアリが、それを巣に持ち込むことで巣ごと撲滅するタイプのものが利用されている。散布後の1~2週間後になって効果が出てくる。このような薬剤を用いているため、散布するポイントはベテランの勘と経験に依存しており、作業の多くをロボットに置き換えることは困難だという。
■参考文献
1)石黒周:「石黒周が語るロボットビジネスの明日」、ロボットビジネス開拓記、ロボットラボラトリー、http://www.robo-labo.jp/,2007年.
■関連サイト
㈱アサンテ
http://www.asante.co.jp/
NPO法人国際レスキューシステム研究機構
http://www.rescuesystem.org/
(有)RTソリューション
URL http://www.rt-solution.jp/
NPO安全工学研究所
http://www.safetylabo.com/
㈱アサヒ電子研究所
http://www.aelnet.co.jp/
大阪府立工業高等専門学校
http://www.osaka-pct.ac.jp/











































松本 茂樹 Matsumoto Shigeki代表取締役



