T-D-F代表
1985年、京都工芸繊維大学 工芸学部 意匠工芸学科(現造形工学科)卒。同年、松下電器産業に入社。デザイン部門に在籍し、プロダクトデザインを基盤にAV機器、インタフェース、ロボットなどのデザインに従事する。2002年に退社し、フリーランスのデザイン事務所T-D-Fを設立する。ロボットデザインやインタラクション・デザインを中心にさまざまなかたちでデザインに関わる仕事に携わる。2005年の「愛・地球博」ではプロトタイプロボット展に出展したロボットデザインを手がけている。また現在は、日本ロボット学会誌(http://www.rsj.or.jp/JRSJ/index.html)の表紙イラストデザインも手がける。
ダンスをしたり走ったりする高機能なロボットが続々と登場している。ところが、それらと関わることで、生活がどのように変わるかがほとんど見えてこない。「そうした役割は、ロボットデザインこそが担うべき」と力説するT-D-Fの園山隆輔さんに本来、ロボットデザインが果たすべき役割について語ってもらう。
「ロボットが走るということは技術的に素晴らしいことです。ただし、それによって『私たちの生活がどう変わるのか?』というところまで見せてあげないと、走っただけで終わってしまいます。その役割を担うのが、プロダクトデザインだと思うんです。『このロボットがあなたの家にやって来ると、あなたとこんな関係を築くのですよ』という具合に、単に技術や機能を形にするだけなく、人とモノとの関係性も見えるようにすることが必要です。本来、プロダクトデザインはそのような役割を担っていると思うのです」
T-D-Fの園山隆輔さんは熱く語る。
園山さんは、プロダクトデザインに携わる傍ら、「日本ロボット学会誌」(http://www.rsj.or.jp/JRSJ/index.html)の表紙イラストの作成も担当している。一度は目にしたという方は多いだろう。イラストでは毎回、特集テーマで紹介されている技術が一般化されることで想定される生活シーンが描かれている。そうしたこともあり、園山さんは関係性という言葉を意識的に用いる。
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園山さんが手がける日本ロボット学会誌の表紙デザイン。特集テーマで紹介されている技術が一般化されることによって、想定される生活シーンが描かれている。2007年発行の「動作理解のための知的なしくみ」(Vol.25 No5、左写真)と「環境知能化」(Vol.25 No.4、右写真)。日本ロボット学会誌(http://www.rsj.or.jp/JRSJ/index.html)より引用・転載。 |
プロダクトデザインの原点
確かに、園山さんの言う通り、プロダクトデザインは人とモノとの関係性を示す役割を担うのではないかと思わされることがある。
例えば、炊飯器が発売され始めた頃、その外観はお櫃のような形をしていたと言われている。これなら、初めて見る人でも、どのような機能を持つのかが容易にわかるだろう。また、購入することで自分の生活が便利なることが容易に想像される。最近は、「700系のぞみですか?」と言いたくなるような、斬新な流線型のデザインをした炊飯器が出回っているが、それは、すでに生活に浸透し、誰もがその関係性をわかっているから許容されているだけである。
園山さんは言う。
「ロボットのように新しいモノが登場したときには、プロダクトデザインにより人とモノとの関係性を見せてあげる必要があると思うのです。そうでないと、『これがあれば、こんな暮らしが送れるなあ。だから購入したいよね!』という話に結び付かないと思うんです。
ロボットが生活の中に入り込むことができずに、いまだに見せ物的な扱いになっていますが、デザインで関係性を示せていないことに原因の1つがあると思うんです。ロボットを見せ物小屋から商談の場へと出してやる役割を、プロダクトデザインが担っているんです」
ただし、ロボットデザインに関係性を付加するためには、まずそれで提供したいことを考えなければならない。園山さんが、神奈川県が主催する「ロボLDK」(ロボットのいる暮らしコンテスト)に深く関わっているのは、そうした意図があってのことである。
また、園山さんはロボットデザインを通じて、プロダクトデザインを見直すきっけにならないかとも考えている。
プロダクトデザインには芸術的な側面があるが、芸術と異なり、必ずユーザーが存在する。ユーザーは使うことによる生活の変化、メリットを期待している。ところが今は、すでに多くのモノが普及し、それをモディファイするようなモノづくりがなされている。先に述べた炊飯器のように、生活の変化など、人との関係性を形に付加していくという意識が希薄になりつつある。そのため、ロボットというまったく新しいモノのデザインに当たると、関係性が見えないものをデザインしてしまうことになる。
「単に技術を見せるのではなく、ロボットを利用する(一緒に過ごす)ことで築かれる関係性を見せてあげることが大切です。そして、それを担うのがプロダクトデザインです」と、力説する園山さん。ユーザーにロボットとの関係性をきちんと見せることが、ロボットの普及には不可欠であることを示してくれる。
園山さんは、自戒も込めて言う。
「ロボットのデザインは特別に扱われがちですが、プロダクトデザインそのものなんです。人とモノとの関係性を示すことは本来、プロダクトデザインが果たすべき役割です。
ロボットという新たなモノに直面して、それを強く意識するようになっています」
擬人化はロボットデザインには必須か?
また、擬人化という側面からロボットデザインを特別視する人が多い。しかしここでも、園山さんは関係性という観点から明快に説明する。
「例えば、身近なモノである炊飯器とクルマでも、思い入れ、愛着は違うはずです。使い込んだクルマに名前を付けるなど相当な愛着を持たれる方はいるでしょうが、炊飯器に名前を付ける人はいないはずです。それは、機能や耐用年数を含め、それぞれとの関係性が異なるからです。ロボットの場合、その特性から感情移入や人格化がしやすいだけの話だと思うんです」
ただし、ロボットをどのように定義するかにより、その特性は異なる。
「ロボット」という言葉は「食べ物」「乗り物」というレベルの括りに相当し、それが指す範囲は広い。「癒しロボット」「会話ロボット」があれば、「レスキューロボット」「建設ロボット」などもある。そして、それぞれの人との関係性は異なり、愛着や思い入れも変わってくる。「ロボットデザインでは、こうした言葉の定義も含めてデザインしなければならないのです」と園山さんは強調する。
園山さんは、さらに続ける。
「ロボットは興味を惹くテーマなので、映画やドラマ、小説などさまざまなジャンルで描かれてきました。ここでは、擬人化ないしはキャラクター化することで、おもしろく描かれてきました。このように、コンテンツ主導によりロボットが認知されたという背景があるので、擬人化するようになっています。また、そうする方がわかりやすいという効果ももたらしています。
でも、擬人化やキャラクター化は、ロボットデザインにとって必須のものではありません。やはり、どのような関係を築くものなのかを整理し、デザインしなければならないと思うのです」
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園山さんは、関係性という観点からロボットデザインを語り、また、プロダクトデザインの再考にもつながる示唆に富む話もしてくれた。
現在、われわれの周囲を見渡すと、さまざまなモノで溢れている。いずれもモディファイを繰り返すことにより現在の形になった。すでに広く普及していることもあり、人とモノとの関係性は論じられることはあまりない。また、それを感じさせるモノも少ないように感じられる。
これに対し、ロボットはまったく新しいモノである。そのために、ロボットとどのような関係を築いていくのかを考えることが求められている。ただ、それを考えることは、ロボットそのものの存在意義を検討することであり、一朝一夕で解を得られるものではない。
園山さんの話は、ロボットがいまだに見せ物となっている原因の本質を突く話であり、プロダクトデザインの奥深さを感じさせられた。
■関連Webサイト
(社)日本ロボット学会
http://www.rsj.or.jp/
ロボナブル書評コーナー
「ロボットデザイン概論」
http://robonable.typepad.jp/books/2007/07/tesuto.html
(2006年取材)



