神奈川県が主催する「ロボLDK」は、一般の方が「ロボットがいる暮らし」を提案するコンテストです。
11月25日に「第4回大会」(http://roboldk.jp/contests.html)が開催され、徐々にですが参加者の傾向が見えつつあります。
また、来場者へのアンケートを実施しており、興味深い結果を得ています。
連載最終回となる今回は、これらの内容から、一般の方がどのようなロボットを求めているのかを考察します。
ロボLDK(*1)とは、ロボットを使って暮らしの中の1シーンを表現してもらうコンテストである。「暮らしの中で、ロボットでこんなことができたらいいなあ~」というアイデアを、ロボットとのかけ合いにより(寸劇形式で)表現する。
舞台は4畳半の空間で、持ち時間は3分程度。使用するロボットは市販、自作を問わない。アイデアの市場化の可能性や独自性、ストーリーのおもしろさを競い合う(*2)。
第1回大会では「キッチン」と「リビング」の2つの課題が設定され、前者では、ステージに流し台や調理台、ガス台、テーブル、冷蔵庫、食器棚などを配置した、一般家庭のキッチンを再現し、そこで多様なシーンを想定した発表がなされた。後者では、ステージにソファーなどを設置し、人とロボットが一緒に過ごすひとときが発表された。
第2回大会では、「キッチン・リビング」と「教室」が課題だった。2年目の第3回大会以降は、テーマ設定はしていない。
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| 第1回大会優勝のチーム「ロボファミ」。ロボットとオセロで対戦した。課題はリビング。(写真提供:神奈川県) | 第2回大会優勝のチーム「杉浦ブラザーズ」。ロボットが習字を披露した。課題は教室。(写真提供:神奈川県) |
対話は音声認識を求めている!?
コンテストで提示されたロボットのアプリケーションに言及すると、バラエティに富んだな提案がなされているのが特徴である。
他のロボットに関連するコンテストでは、「ドアを開ける」「新聞を持ってくる」などハードウエアに関する課題設定がなされているのに対し、ロボLDKではそうした設定がないからだと考えられる。
上位入賞者のテーマを振り返ると、第1回大会では「ゴミの分別と献立のアドバイス」郵便物などの保管と期日管理」が、第2回大会では「高齢者の食事支援」「母の愚痴の相手と家事アドバイス」が、そして、第3回大会では「ロボットが記憶力を診断」「ロボットが代わりに学校に行く」が提案されている。まだ実施回数が少ないこともあり、これらから一般の方が求めるロボットのアプリケーションを判断するのはかなり難しい。
しかし、インターフェースに目を向けると、明確な傾向が見えつつある。
興味深いことに、参加者のほとんどが音声対話を前提としたコミュニケーションを行っている。
人同士が対話をする場合、一定程度の距離感を保ってコミュニケーションをとる。自分と同様に、対話相手の自我(他我)を感じ取り、相手の心を害さないように配慮しているからであろう。
ロボット(ヒューマノイド)は人と同様に身体を持つため、感情移入しやすく、自我を宿す存在として見ることができる。ゆえに、ある程度の距離感を保てるよう、音声対話によるインターフェースを提案しているのではないかと考えられる。
また、ロボットに対して「動いて何かをする」存在として捉えていることも、その理由に挙げられる。
動く相手に対して指示を出すのであれば、非接触で行う方が望ましいわけで、結果、一般的なインターフェースであるタッチパネルやキーボードは対象外になったと推測される。
もちろん、ロボLDKは寸劇形式で提案されるため、演出という側面があり、また、言葉で命令しないと発表内容が観客に伝わらないということもある。さらに、これまでに映画やアニメなどコンテンツで描かれた高機能なロボットの影響もあるだろう。
これらを加味したうえで判断しなければならないが、少なくとも、家庭内のロボットには非接触で、しかも音声で対話するという関係性が求めていると言える。
防犯への関心が高い
前節では、コンテスト参加者の傾向に触れたが、次は、コンテストの来場者に実施したアンケート調査をもとに、一般の方がロボットに期待していることを考察する。
ロボLDKは、たまたま通りかかった買い物客も取り込めるよう、地下街などのオープンなスペースで開催している。その狙い通り、アンケートの回答者の6割程度(61.3%)がロボLDKを知らない人たちが占めた。ロボットに関心がある人とそうでない人の両方をうまく取り込んでおり、標準的な消費者を対象にアンケート調査が実施できていると言える。
(回答者プロフィール)
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| アンケートの回答者は、男性が56%、女性が44%とななった。また、10代未満から70代以上まで、幅広い年齢層が参加していることも伺い知れる。ただし、1シートに複数人分の回答をしているケースがあったため、各質問の回答総数は一致していない。少なくとも、460名前後の人が参加したと推定される。 | |
おもな質問内容は、次の通りである。
① 問1「今後、どのような機能を備えたロボットが欲しいですか? または、使いたいですか?」
② 問2「人間からロボットへの指示の仕方としてどのような機能があると良いと思いますか?」
③ 問3「ロボットの大きさ(サイズ)はどのくらいが理想ですか?」
④ 問4「「あなたが購入できるロボットの価格を教えて下さい。」
⑤ 問5「ロボットを日常生活で使う際に重要なことは何だと思いますか?」
まず、①で明らかになったのは、「防犯」「介護」に役立つ機能を求めていることである〔図1(a)〕。①の回答を優先順位順に整理すると、この傾向は顕著になる〔図1(b)〕。おそらく犯罪の凶悪化など社会情勢を反映したのであろう。図1には現れていないが、特に30代、40代、50代の女性の方が関心が高かった。
子供が学校に通い始め、また自分が外出して留守にする機会が増える年代であり、防犯に敏感になっているからであろう。「防犯」「介護」に関連する「留守番」機能が3位にランクインしたことを考えると、余計にそう思われる。
なお、「防犯」と答えた方の中には、自分がボケてきてカギを閉め忘れていないかという不安から、選択した人もいたという。
図1(a) ロボットに求める機能は「防犯」「介護」「留守番」「掃除」の順番になった。
図1(b) 優先順位により分類すると「防犯」と「介護」が圧倒的に選ばれていることがわかる。
次に、②のロボットへの指示の仕方では、「音声入力」が多数を占めた(図2)。
複数回答となっているため全回答数の50%にとどまるが、選択率では75.4%にも上る。ロボットという未来を感じさせるものである以上、従来と異なる方法で指示を与えるようになりそうだと、多くの方が認識している結果と思われる。
また、前節で紹介したように、コンテストの参加者のほとんどが音声による対話を提案しているが、実演内容に違和感を憶えなかったので、そのまま選択している可能性もある。
③のロボットのサイズについては、「小学生くらい」が6割程度を占め、続いて「ネコくらい」が1/4程度の回答を得た(図3)。「大人ぐらい」は8.2%にとどまった。
ロボLDKのセットは6~8畳を想定したサイズになっている。ロボットには近藤科学の「KHR」シリーズが用いられることが多く、そのサイズは35cm前後である。このサイズのロボットと人とのやり取りを目の当たりにすると、せめて小さな子供ぐらいのサイズは欲しいという心理になったと推測される。
しかしながら、小生1年生と言っても平均身長は115cmもあり(*3)、それよりもひと回り小さい「wakamaru」(100cm)ですら、発売当初「日本の家のサイズに馴染まないのでは?」という声があがっていた。小学生ぐらいのサイズは、実際に目の前で見ると、かなり大きいのである。そう考えると、やはり実演での印象に影響を受けたと思われてならない。
図3 理想的なロボットのサイズには「小学くらい」が多く選ばれた。
④の購入価格に関しては、「5~10万円」が30.7%、「5万円未満」が25.7%と、10万円以下を希望する回答が半数以上を占めた(図4)。
最も多かった「5~10万円」という価格帯は家庭用ゲーム機とほぼ同じである。まだ家庭用のロボットに対して実用的な印象がなく、エンターテインメントや癒しといったイメージが強いことから、同類の製品と比較して選択したと思われる。
しかし今後、パソコンのようにビジネスでも家庭でも必需品という地位をロボットが獲得すれば、それ以上の価格でも受け入れられるだろう。
図4 10万円以下の価格を希望する声が多かった。
安全性が最も重視される
最後に、⑤の回答では、「安全性」がトップになり、選択率は7割近くに上った(図5)。
昨年は夏以降、家庭用シュレッダーによる子供の指切断事故がよく取り上げられ、機器の安全性への関心が高まっていた。その影響を受けたものと判断される。
2位以下の「機能」「使い勝手の良さ」「メンテナンスのしやすさ」「価格」は、どの機器にも共通して上位にあがると思われるが、「静音性」が22.8%の選択率を獲得しているのが興味深い。洗濯機や掃除機ほどの大きな音は発しないが、常時モータ音や車輪が床を走り回る音を出すことを考えると気になるのだろう。
一方、「ブランド」は、ほとんど選ばれなかった。
ソニーのロボット事業からの撤退以降、家庭用ロボットからイメージできるロボットのブランドがないということを示していると思われる。
見方を変えれば、いま多くの人に受け入れられるロボットを提供することができれば、家庭用ロボットにおけるトップブランドとしての地位を即獲得できると言える。ぜひとも、そのようなブランドが現れてほしいものだが・・・。
図5 「安全性」への関心が非常に高かった。
今回は、ロボLDKで実演された内容とアンケート結果から、一般の方が抱いているロボットのイメージ、求めている機能などを紹介した。ロボットへの指示などコミュニケーションには音声対話が求めていることが認められた。そのほかの内容については、一般を対象としたアンケートであるため設問内容が抽象的なものとなり、判断が難しい。
今後、コンテストおよびアンケート調査の回数を重ねていくことで何らかの傾向が現れ、ロボットの開発に役立つことを期待したい。
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本記事の詳細は、11月26日発売の
「機械設計」12月臨時増刊号
『ロボットビジネス勝利の方程式』
特集2「ロボットのいる暮らしを考える」
で、紹介します。どうぞご期待下さい!!
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■関連サイト
ロボLDK
http://roboldk.jp/
ロボットのいるくらし
http://robonable.typepad.jp/books/
(注釈)
*1:住宅の間取りを表す「LDK」とロボットを足し合わせて「ロボLDK」とネーミングした。神奈川県も「ロボット特区」を取得しているが、福岡、大阪と比較すると、ロボット関連の施策に取り組み始めた時期は遅い。そこで、独自の方向性を出すということからソフト面を重視し、ロボLDKを開催した。サービスロボット市場で最もウェイトを占める生活分野でのニーズをいち早く見出すことで、先行する福岡、大阪を追い越したいという。
*2:運営に関しては、コンテストに知的財産の専門家を交えることを検討しているという。シナリオの中で提示されたロボットの使い方をどのように保護していくのかという疑問が提示されることがあり、企業の方が参加できない原因の1つになっているからである。また、ロボットの動作が著作権になり得るのかどうかも議論したいという。
*3:文部科学省の「平成17年度 学校保険統計調査」によると、小学生男子の平均身長は、1年生が116.6cm、2年生が122.5cm、3年生が128.2cm、4年生が133.6cm、5年生が139.0cm、6年生が145.1cm。小学生女子の平均身長は、1年生が115.8cm、2年生が121.7cm、3年生が127.5cm、4年生が133.5cm、5年生が140.1cm、6年生が146.9cmになる。



