産業技術総合研究所 山田 陽滋
Yamada Yoji:知能システム研究部門 安全知能研究グループ グループリーダー
1983年3月、名古屋大学工学研究科修士課程修了。同年4月、豊田工業大学に助手として勤務する。1992年、工学博士(東京工業大学)に。1993年には豊田工業大学助教授に、同年Stanford University 客員研究員に就く。2004年4月より現職に就く。これまでにロボットのセンサ、通信、知的制御に関する研究や、人間・ロボット共存系による安全・協調技術の研究に従事する。
2007年6月、経済産業省より「次世代ロボット安全性確保ガイドライン」が発表されました。
サービスロボットの安全に関しては、わが国は世界をリードしているとされ、日本ロボット工業会の技術委員会で継続的に議論がなされています。
本連載「その2」では、その審議内容を取り上げ、具体的な検討課題から国際標準化に向けた活動を紹介します。次回の後半では、パーソナルケア・ロボットに焦点を当てて、その国際規格の動向を紹介します。
国際標準化に関する国内審議と検討内容
昨今、サービスロボットの安全確保に関するガイドライン策定が、経済産業省を含む関係団体において、さまざまな観点から取り組まれている。
2007年6月に同省産業機械課が中心となって策定し発行した「次世代ロボット安全性確保ガイドライン(1)」は、人間と共存し、彼らに直接サービスを行うサービスロボットをおもなターゲットとした、次世代ロボットの安全に関する概念規格と位置づけられるものである。この内容に従って、他の技術的なガイドラインがより詳細なグループ規格あるいは製品規格レベルで策定されつつある。
以下に、これらガイドライン・規格策定に関する動向および関連参照規格を紹介する。
まず第1の話題として、「サービスロボットの安全性等に関する国際標準化案作成調査」を紹介する。これは、日本ロボット工業会の委託事業として、2006年度から向こう3年間にわたって予定されている。
その目的は、2006年6月15~16日にフランスで開催されたISO/TC184/SC2総会において、新たなプロジェクトチームISO/TC184/SC2/PT2(以下PT2)がRobots in Personal Care(パーソナルケア・ロボット)に関する安全規格の策定を命ぜられたことから、これに向けて、当該分野ロボットの安全性などについて国際標準案を作成し、すみやかに同PT2で提案することにある。
親委員会である「サービスロボットの安全性等標準化調査専門委員会」の下に、ワーキンググループ(WG)として、「同安全性検討WG」および「同用語検討WG」が設置されている(図1)。
図1 平成18年度の日本ロボット工業会技術部会の組織構成
(太字が現在のサービスロボット安全規格標準化委員会およびWGの構成図になる)
安全性検討WGでは、既述の「次世代ロボット安全性確保ガイドライン」などに基づいて国際標準案を策定することを活動目標としている。同時に、関係機関であるISO/TC184/SC2および関係諸国の状況を調査し、わが国としての具体的な対応を検討する。
初年度となる2006年度には、以下に報告する活動を行った(2)。
まず随時見直すことを前提に、今後3年間の活動ロードマップを作成した。3年をかけて技術的に細部まで踏み込んだガイドラインを作成することになるため、あらかじめ何をいつ検討するのかを議論し、構造的に把握したうえで取りかかることが効率的である、と考えたからである。
このロードマップに沿って、初年度は「3ステップ法」を中心に据える安全性確保の基本的な考え方を再確認した。
3ステップ法とは、まずリスクアセスメントおよびこれに基づいて本質安全設計を行い、次に、安全防護・付加方策を検討し、最後に残留リスクの提示を行う、というものである。
同時に、安全性確保ガイドラインの趣旨と技術詳細への展開の仕方を議論した。その結果、
①産業機械とは異なる体系で捉えたい
②残留リスクをどこまで許すかについて議論する
③リスクベネフィットの議論は1年目にスタートするが、具体事例がリスクアセスメントおよい3ステップ法を反映することを確認できるように複数年にわたって議論をしたい
など、ガイドライン策定に伴う方針案が検討された。
ガイドラインの構成については、機械安全におけるリスクアセスメントの原則:ISO 14121(2)と同様の構成、すなわちPart1に一般原則を置き、Part2で個別の事例を取り扱うガイドラインの構成と同じにするとの方針を固めた。そして、①一般原則の骨子、および②リスクアセスメントの具体事例それぞれについて詳細を検討した。
一方、用語検討WGでは、サービスロボット分野の用語およびその定義などについて、国際標準案の提案に向けた調査検討を行っている。
2006年度には次のような活動を行った。
まず、具体的な実施方針に関する検討を行った後、目標として、用語の整理・抽出の完了を掲げた。
わが国から国際標準案を提案するものとして、基本用語を中心に、わが国のサービスロボット産業の動向を反映した主張ができるレベルの用語定義をした。
その結果、これまでのJISにないものがヒューマンインターフェース関係の用語であるという分析に基づき、最上位機能を「ヒューマンマシンインターフェース」とした。
縦軸に、①共通、②ハンドリング機能、③移動機能、④認識機能それぞれの用語を抽出し、横軸には、2006年度までに定義した人間との接触の度合いで分類した。表1に、この基本用語表の具体的イメージを示す。
表1 ヒューマンインターフェースに関係する基本用語分類表の例
次に、国際標準化という流れでは、用語は安全と密接に関連することから、上位の基本用語として安全関連用語を加えるという方向性が出されつつある。
次年度となる2007年度は、基本用語の評価と不足用語の抽出を行い、また、各用語の定義から概念を明確化することになっている。
2つ目の話題として、2006年度から始動している「サービスロボット運用時の安全確保のためのガイドライン策定に関する調査研究」を紹介する。これは、日本ロボット工業会における別の委託事業である。
サービスロボットの設計上の安全方策が標準化されつつある中で、実際に適用されるさまざまな用途ごとに、基本的かつ共通的な設計上の安全方策だけではカバーしきれないリスクが残る可能性がある。したがって、これらの残留リスクについては、メーカーがユーザーに情報を開示して説明しなければならない。また、ユーザーはメーカーの情報に基づいて安全な運用を行うとともに、メーカーが予期しない危険が発生するような運用の仕方を回避する必要がある。
このような双方に求められる危険回避の必要性をまとめたガイドラインの策定が、上記事業の目的である。
その研究内容(4)として、以下のようなことに取り組んでいる。
まず、実用化されたサービスロボットとして、「愛知万博」で実証運用されたロボットなどを対象にしてケーススタディ行った。例えば、実証現場の要員や観客に対して、どのような注意をしたかなど安全性に関する管理・運用の調査をした。
次に、メーカーがユーザーに開示・提供すべき情報、およびユーザーが遵守すべき事項について、具体的な問題点を抽出した。一般に市販されるロボットに対し、上記のケーススタディを参考にしながら、運用時に安全上問題になる事項を挙げた。
さらに、サービスロボットの安全性と密接に関係する、産業用ロボットの安全性に関するISO規格改定の国際会議に出席して、その動向を調査し、運用時のガイドライン策定の調査研究に反映させた。
(次回「パーソナルケア・ロボットの国際規格動向」に続く)
■参考文献
(1)http://www.meti.go.jp/press/20070709003/02_guideline.pdf.
(2)(社) 日本ロボット工業会:サービスロボットの安全性等国際標準化に関する調査研究成果報告書,pp.1-15,2007年2月.
(3)同上,pp.36-43.
(4)(社) 日本機械工業連合会,(社) 日本ロボット工業会:サービスロボット運用時の安全確保のためのガイドライン策定に関する調査研究報告書,pp.1-4,2007年3月.

