本連載では、2006年に実施された「ユビキタス街角見守りロボット」実証実験のその後を紹介し、2007年10月からは、「ユビキタス街角見守りロボットモデル事業」として再度、運用・評価が開始されていることを報告した。
2007年度は、総務省からの補助金で運営費を賄えることから、事業モデルの具現性の検証に重点を置いて運用している。具体的には、広告収入の可能性と利用者負担による運用の継続性である。その2点について、また現時点での評価について、大阪市計画調整局 都市再生振興部 情報化施策担当の澄川和典担当係長に聞いた。
なお、同事業の概要および使用したシステム構成については、以下のサイトを参照してほしい。
あのロボットプロジェクトはいま? 実証実験のその後を辿る
第3回 「ユビキタス街角見守りロボット」実証実験:http://robonable.typepad.jp/trend/2008/01/post-e337.html
――2007年度は、広告の宣伝効果の検証が課題の1つと聞きましたが・・・?
2007年度は、総務省の「地域児童見守りシステムモデル事業」(*)の委託事業として取り組みました。運営費を補助金で賄えるため、保護者に送信される連絡メールやSNS(Social Networking Service)サイトへの広告掲載を無料で行い、その宣伝効果を測る予定でした。ところが、運用をしている大阪市立中央小学校の学区内などをきめ細かく営業してくれる代理店の選定に時間がかかり、具体的な検証はできませんでした。
しかし、ここにきてようやく代理店を選定することができ、2008年度の5月頃からは、宣伝効果を検証できそうです。
運用上、広告収入の増減に応じて運営費が上下するのは好ましくないため、代理店とは年間契約を交わしています。
出稿先については、メール配信のエリアが限定されるため、地域の商店などをイメージしています。広告価値を高めていくうえで『地域性』は重要なキーワードになるはずです。ですので、代理店には、出稿の比率が均等になるように要請しています。具体的には、1/3を大阪市立中央小学校の学区内から、1/3を近隣の地域から、残りの1/3を他地域や企業からになるようにお願いしています。他地域からの出稿に関しては、小学生の保護者の方にメールを送信するので、塾や家庭教師に関連するものが考えられます。
「ユビキタス街角見守りロボットモデル事業」の全体構成イメージ。見守りロボットと地域防犯活動との連携による、登下校中の児童の見守り支援機能およびロボットの利用価格などの検証を目的に実施している。
――利用者負担についての検証は、どの程度なされましたか?
現在は、大阪市立中央小学校の学区内だけの運用のため、運営費は割高になっています。500~600万円程度かかっており、そのほとんどをPHSの回線費用が占めています。上述の広告収入では、運営費の2割程度を賄うことを想定していますが、仮にこれを達成しても、月々の保護者の負担は1,000円弱程度にもなります。
2006年に実施した「ユビキタス街角見守りロボット」実証実験では、参加いただいた100名の児童の保護者の方に、月々に負担できる金額についてアンケート調査を行いました。平均すると632円でした。安心安全に関心の高い方の回答でも、この金額でしたので、より一層の負担金額の低減が求められるのは必至でしょう。
メーリングリストなどを自動生成して携帯電話に伝えることで、ボランティア同士で連絡がとれる。2006年の実証実験では、児童にはICタグを携行してもらったが、今回は、無線アクティブ通信タグと一体となったPHS(通話機能なし)を利用している。また、SNSの利用により地域コミュニティの連携・育成を図る取り組みも、今回からである。
――利用負担に関連して、継続的な自律運営の可否も判定されると聞いています。
当初、10月から緊急発報を通知し、ボランティアの方の対応を見る予定でした。しかし、運用当初は誤発報が相次ぎ、通知の開始は2008年2月からとなりました。現時点では、ボランティアの方が駆け付けた回数などの集計はあがっていませんが、同じ方が駆け付けているような印象を受けます。過去の実証実験でもそうでしたが、やはり安心安全に関心のある方と、そうでない方との間でマインドの差がかなりあるようです。
また、SNSの自律運営はまだ活発化していません。PTAのOBなどから構成される「中央小はぐくみネット」の方が中心となって運営して下さっていますが、まだまだといったところです。PHSなどの使用方法がわからない場合は、電話で問い合わせる方が早いということもあり、それで済ませてしまう方が多いことにも原因があります。
――ビジネスとして結実させるうえでの課題は?
やはり最大の課題は運営費です。すでに言いましたように、保護者負担にすると、現状では1,000円弱程度かかります。仮に、アンケートの回答結果の金額に近い600円まで負担金額を下げたとしても、現在利用されている方の約半数は、解約されるのではないかと思います。ですので、可能な限り保護者負担を下げることが必要です。
すでに運用費の20%は広告収入で賄えるので、いまは残りの80%を、どのようにして補うのかを議論しています。協議会の参加団体にて等分に負担できる方向で検討しています。大阪市の運営であれば市で負担できるでしょうが協議会による運営ですので、それは難しいです。
この事業に限った話しではないでしょうが、安心安全に関する事業への取り組みは難しいと感じさせられます。日常的に利用するサービスであれば、ある程度の負担を受け入れてくれるのでしょうが、不測の事態に備えてのサービスですので、そのハードルが高くなります。
とはいえ、求められているサービスですので、広告以外の収入源を見出すことで、参加される方の負担を極力抑えたいです。そして、このような新たなサービスの立ち上げにつなげたいです。
(注釈)
*ICT(Information and Communication Technology)を利活用した、地域児童の見守りシステムモデルの構築・運用・評価を地方公共団体などに委託し、その成果を広く提供する事業。最終的には、モデル事業として全国に展開する。電子タグや携帯電話などを活用した児童の安心・安全を確保するためのシステムを構築し、地域が連携して、その運用・評価を行う。 全国から49件の提案があり、16件が採択された。
■関連サイト
大阪市計画調整局
http://www.city.osaka.jp/keikakuchousei/
大阪都市工学情報センター
http://www.osakacity.or.jp/














