2007年度~2011年度の5カ年にわたり「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」が取り組まれている。生産分野や生活分野など状況変化が激しい環境において、さまざまな作業を確実に実施するための知能化技術の開発およびRTM化(RTミドルウエアによるコンポーネント化)に取り組むことを目的としたもので、中間年を向かえた今年度は、学会発表などを通じて、その一端が紹介されている。
今回は、先月開催された「日本ロボット学会学術講演会」で発表された同プロジェクでの取り組みを紹介する。11月25日~28日開催の国際ロボット展でも紹介される予定だが、ここでは同プロジェクトの概要および進捗を把握する機会として参照してほしい。RTM化が進展していることが感じ取られるが、それぞれのプロジェクト間での再利用には課題がある。富士ソフトなどが担当する「RTM再利用技術研究センター」の活動が重要になり、以後、ロボナブルでは同センターの活動内容を紹介することを予定している。今回掲載した記事は、すでにニュース記事でも紹介したが、一部記事では文章および図表を加筆・追加している。
《基盤技術の開発》
(1)ロボット知能化ソフトウエアプラットフォームの開発
◎前川、知能化プロのリファレンスハード紹介、来年度には無償の貸し出しを予定(ROBOMEC2009)
◎産総研、OpenRTプラットフォームの動作パターン設計ツール「V0.1」を紹介(ROBOMEC2009)
(2)ロボット知能ソフトウエア再利用性向上技術の開発
◎富士ソフト、RTC再利用センターの活動を紹介、教育分野に向けたRTCの提供を検討
《知能モジュール群の開発》
(2)作業知能(生産分野)の開発
◎IDEC、2層化RTCを標準化として提案、RTCの再利用性を向上、実装も容易に
◎IDEC、セル生産でのチョコ停から自動復帰する手法開発、長時間連続稼働が可能に
◎三菱電機と京大、セル生産ロボシステムの高度化技術を開発、ブレーカの組立で実証
(3)作業知能(社会・生活分野)の開発
◎安川電機、協調制御モジュールなど生活支援に役立つ知能化モジュール紹介
(4)移動知能(サービス産業分野)の開発
◎富士重工、知能化モジュール提供へ、ユーザー側で清掃ロボの走行プログラム作成可
(5)高速移動知能(公共空間分野)の開発
(6)移動知能(社会・生活分野)の開発
(7)コミュニケーション知能(社会・生活分野)の開発
◎NEC、顔認識や音源方向をもとに話者認識を実現、話者に合わせた対話が可能
◎NEC、音声に対し身振りや仕草が行える知能化モジュールを開発、PaPeRoで検証へ
(2)ロボット知能ソフトウエア再利用性向上技術の開発
富士ソフト、RTC再利用センターの活動を紹介、教育分野に向けたRTCの提供を検討
富士ソフトの小笠原哲也氏は、RTコンポーネント(RTC)の再利用性を高めるために設置した「RTC再利用技術研究センター」を紹介し、RTCの受入確認や標準化に向けた情報提供などに取り組むことを明らかにした。
同センターは、RTC開発者と利用者を仲介し、RTCのライフサイクルを確立することを目的としている。具体的には、開発者から提供されたRTCの受入確認をし、蓄積した情報を利用者に提供するとともに、利用者からの質問やリクエスト情報を開発者にフィードバックする。また、提供されたRTCを実際に利用することで再利用性を検証し、得られた情報を開発者および利用者に展開する。再利用性に優れたRTCの抽出なども行う。
また、開発・蓄積されたRTCを分析し、カテゴリーの分類基準をまとめた「RTコンポーネント」を作成することも予定している。RTCの使用や機能、想定ユースケースなどをもとに分析。ユニーク・共通性、共通パラメータ、粒度を軸に分類基準を抽出し、再利用の向上につなげる。
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RTCのライフサイクルとRTC再利用技術研究センターの役割。 |
このような活動を展開する環境として、三菱重工の汎用ロボット「PA10」、米セグウェイ社の走行ロボットプラットフォーム「Robotic Mobility Platform(RMP)」、前川製作所が同プロジェクトで開発したリファレンスハードの3台のロボットを用意。作業知能の検証ではPA10を、移動知能の検証ではRMPを、総合的な知能の検証ではリファレンスハードをそれぞれ利用し、実際に複数のRTCを組み合わせたり組み替えたりして検証を行う。「似たようなRTC同士の比較やRTC間の関係性などを検証することができ、今後の開発課題の把握に役立つ」(小笠原氏)と期待を込める。
プロジェクト終了後の同センターの役割は未定で、富士ソフトが継続して運営するかどうかは議論できていない。また、RTCの品質保証体制についても未定とのことだが、携帯電話をはじめとする組込みシステムと同様、「ソフトウエアモジュール提供企業が品質保証を行い、それを利用するセットメーカーがシステムテストを実施し、エンドユーザーに対して品質保証および製造責任を負うことになるだろう」(同)という。ただし現段階では、RTC開発者の多くが研究者や研究機関が占めることから、「(これとは)異なる品質保証体系が必要かもしれない」という。
また、実際の開発に使えるRTCがまだ揃っていないことなどを踏まえ、まずは教育分野に向けてRTCを提供し、「複数のRTCを組み合わせることでロボットシステムを組めることを体験してもらうといった用途を想定している」(同)という。
(2)作業知能(生産分野)の開発
IDEC、2層化RTCを標準化として提案、RTCの再利用性を向上、実装も容易に
IDECの米澤浩氏は、ロボットセル生産に向けたロボットコントローラ制御RTコンポーネント(RTC)の開発状況を紹介。メーカーごとに異なるインターフェースの違いをRTC内部で隠蔽する「2層化RTC」により、RTCの再利用性を向上できたことを報告した。異なるメーカーのロボット制御コントローラであっても同一インターフェースでRTCを利用することができ、実装も容易になる。
「汎用機能モジュール」と「デバイス依存モジュール」から構成される2層化RTCのうち、汎用機能モジュールの公開を予定する。そのほか開発した2層化RTCも、三菱電機の産業用ロボット「MELFA」向けロボットコントローラ制御RTCとして提供することも検討する。「ロボット開発メーカーが2層化RTCに追随すれば、そのファミリー展開が可能になり、標準化につながる」(米澤氏)と期待される。
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2層化RTCの概念図。汎用機能モジュールとデバイス依存モジュールから構成される。 |
2層化RTCは、汎用機能モジュールとデバイス依存モジュールの2つを組み合わせることでRTCを構成する。前者は、ロボットとの接続や起動、停止などの各種設定や、基本コマンド動作など汎用的な機能を実装したモジュール。デバイスごとの機能を共通化した汎用的な外部インターフェースと、デバイス固有の要素機能を接続する内部インターフェースを持つ。
後者は、内部インターフェースで規定された要素機能を実装するモジュール。開発者はそれに沿って各デバイス依存モジュールを開発しておくだけで、異なるデバイスでも同様に、汎用機能モジュールを利用することができる。開発したRTCの再利用性の向上につながる。また、内部インターフェースにより、後でRTCの粒度が変化してもデバイス依存モジュールへの影響を防ぐことができる。
RTミドルウエアでは、RTCの粒度の選択が自由であり、また、RTCの外部に公開するインターフェースの決定も自由であるため、再利用性の高いRTC化は各開発者に委ねられる。さらに、再利用性を高めるためには、デバイスごとに異なる処理をRTC内に隠蔽する必要があるが、適切になされていないと、たとえRTC化をしても実際には再利用できないものになる。
2層化RTCは、こうした課題を踏まえての提案である。また、ロボット開発企業がRTCに取り組むと自社製品向けのRTCばかりを開発することが予想されるが、「当社はロボットユーザー企業であり、しがらみがないので標準化に向けた提案になり得る」(米澤氏)という狙いもある。
IDECでは、2層化RTCの有効性を検証するため、三菱電機の産業用ロボットコントローラ制御RTCを開発。同社製6軸ロボットと4軸ロボットに加え、エプソン製4軸ロボット、LEGOで組み立てた3軸疑似ロボットの4種類のロボットコントローラをターゲットにデバイス依存モジュールをそれぞれ開発し、汎用機能モジュールの再利用を検証したところ、RTCデバッガ上から同一の操作により類似の動作が行えることを確認した。それぞれのロボットに向けて汎用機能モジュールを開発する手間がなくなり、開発工数は30%以上削減されたという。
また、ロボットコントローラ制御以外にも、画像処理をはじめとする各種デバイスにも応用することができる。RTC開発者はデバイス依存モジュールを切り替えるだけで、さまざまなシステムを構築することができる。
IDECでは、開発した汎用機能モジュールの公開と、2層化RTCした三菱電機のMELFA向けロボットコントローラ制御RTCとしての提供を検討している。これにより、「共通的に利用できるRTCのファミリー化につなげたい」(米澤氏)という。また将来的には、汎用機能モジュールを定義ファイル化して公開し、「それをインプット情報とすることでデバイス依存モジュールのテンプレートが生成されるような開発ツールの実現を期待したい」(同)と話す。
IDEC、セル生産でのチョコ停から自動復帰する手法開発、長時間連続稼働が可能に
IDECの米澤浩氏らは、ロボット制御セル生産システムにおいて、作業の一時的なエラー発生による停止(チョコ停)から自動復帰する手法を開発。システム自身が画像処理を用いることで、事前に学習した情報をもとにチョコ停状態を判断、復帰動作を行うことより生産を再開できることを、社内実験で確認したことを報告した(写真は同システムのイメージ)。人手を介さずに復帰できるようなチョコ停に適用することで、長時間での連続稼働が可能になる。2010年度以降に実稼働ラインに適用することで、チョコ停の原因の分析とともに画像処理能力の向上を図り、ロバスト性の高い自動復帰手法を目指す。
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IDECのロボット制御セル生産システムのイメージ。 |
IDECでは、2000年4月より兵庫県の滝野事業所にてロボット制御セル生産システムを実稼働しており、スイッチやリレーなど約4,000万個を製造した実績を持つ。
おもに2台のロボットと部品供給トレイ、完成品トレイ、組立治具から構成され、ロボットには、一度に多様な部品を把持できる「千手観音ハンド」が付加されている。部品供給トレイから部品を取り出し、組立治具を用いた組み立て、完成品トレイに並べるという作業を繰り返す。ハンドや組立治具に付加したセンサにより異常の発生を検知できるが、その原因の特定や復帰作業は作業員が行う必要があった。
開発した手法では、ロボット制御セル生産システムの上方に設置したカメラ画像をもとに自動復帰を行う。チョコ停の発生時は「チョコ停自動復帰モード」へと移行し、カメラ画像の取り込みおよび画像処理を経て、復帰に必要な動作と目標座標情報をコントローラに与えて復帰動作を行う。具体的には、(1)カメラ画像の取り込み、(2)異常が発生した作業エリアの検索、(3)異常内容の識別、(4)復帰方法の決定、(5)部品の取り出しミスなどによる異常状態の位置姿勢の計測、(6)復帰動作の実行、というステップで行う。
異常が発生した作業エリアの特定から自動復帰までを行うために、各工程における対象作業エリアのあるべき姿や、復帰対象の異常状態、それからの復帰動作を事前に学習させている。また、得られたカメラ画像をもとに、異常が発生した作業エリアの検索と識別、異常状態の位置姿勢の計測を行うことで、復帰動作の実行を可能にしている。復帰動作にかかる作業の優先順位はチョコ停の分析をもとに決定しており、部品の取り出しミスが64%、部品組立ミスが18%と、「ハンドリングに起因するミスが80%以上を占める」(米澤氏)という。
社内実験では、部品供給トレイからの部品の把持に失敗したことを想定し、また、ロボットハンドに付加したバキューム装置用いて復帰する方法にて実施した。上述の(5)までのステップで部品が裏面状態であることが識別でき、ロボットに目標座標情報を指示したうえで、バキューム装置により部品を吸着、除去することを確認できた。今後は、「実稼働ラインへの適用を通じてチョコ停の原因分析を進め、復帰動作にかかるシナリオをつくり上げる」(同)ことで、ロバスト性の高い自動復帰手法へと改善する。
なお、同手法の開発は、「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」(NEDO)にて「作業知能(生産分野)の開発」として取り組んでいる「世界標準を目指したロボットセル生産知能ハンドモジュール群とマニュアル作業激減知能モジュール群の開発と検証」の成果の一部。「詳細座標補正機能によるチョコ停防止知能モジュール群」「チョコ停時の部品撤去再スタート処理知能モジュール群」「チョコ停の部品撤去・再スタート処理知能モジュール群」などのRTコンポーネントの開発により、チョコ停からの自動復帰動作を可能にしている。
(3)作業知能(社会・生活分野)の開発
安川電機、協調制御モジュールなど生活支援に役立つ知能化モジュール紹介
安川電機 技術開発本部 開発研究所の包原孝英技術担当係長は、九州大学や九州工業大学、産業技術総合研究所などと取り組んでいる作業知能モジュール群の開発を紹介。「協調制御RTモジュール」をはじめ開発した知能化モジュールが、日用品の取り寄せなどの施設内での生活支援に有効な機能を備えていることを報告した。
安川などの開発グループでは、施設内での生活支援を行える知能化モジュールの開発に取り組んでいる。安川は「SmartPal(スマートパル)Ⅴ」の構成ユニットを動作するアームユニットRTコンポーネント(RTC)や腰ユニットRTC、移動ユニットRTC、これらを協調制御する協調制御RTCを、産総研はステレオカメラで作業対象物を把握する作業対象物認識RTCや、それをもとに対象物を把持するハンドRTCなどを、それぞれ開発している。
実施する施設内での生活支援には、冷蔵庫からの物の取り出しや床に落ちている物の取り出しなど日用品の手渡しや取り寄せなどをイメージしており、これらの知能化モジュールを組み合わせることで、カウンターに置かれた物を取り寄せる実証システムを構築し、各モジュールの機能を検証した。
具体的には、SmartPAlⅤにステレオカメラと多指ハンドを付加。日用品にはRFIDタグを添付したアンテナ上に配置しており、管理は、九州大学が環境情報構造化で開発した「TMS(Town Management System)」で行った。また作業指示は、NECの音声認識モジュールの利用により音声対話で行い、あらかじめ用意したシナリオ実行プログラムに従って実行した。
検証では、シナリオ実行プログラムを介して、協調制御RTCに目標とする多指ハンドの位置および姿勢情報を与え、7軸構成のアームユニットと腰ユニット(1軸)を動作して多指ハンドの把持位置までの移動や、ユーザーの前まで移動して日用品を離すといった作業が行えることを確認した。
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協調制御RTCをはじめ作業知能モジュール群の検証で作成したソフトウエアの構成。 |
構築したソフトウエア構成は、協調制御RTCにアームユニットRTCと腰ユニットRTC、移動ユニットRTCが接続されたものとなっており、将来的には、これら各ユニットと各RTCをセットで提供することを想定したうえでの構成と思われる。各RTCの接続や切断が容易であるため段階的なシステムの開発や、部分的な動作試験が容易というが、今回用意した協調制御RTCはアーム7軸、腰1軸の計8軸を前提にした処理を行っている。現段階では、協調制御RTCに各ユニットのRTC組み合わせることで、「柔軟にシステムを構築できるわけではない」(包原技術担当係長)。2009年度以降は、より高度なタスクを行えるよう各知能化モジュールの機能向上に加え、他のアームなどでも利用できるようインターフェースの共通化などに取り組むという。
(4)移動知能(サービス産業分野)の開発
富士重工、知能化モジュール提供へ、ユーザー側で清掃ロボの走行プログラム作成可
富士重工業 戦略本部 クリーンロボット部の青山元部長は、「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト(移動知能の開発)」の開発状況を紹介。自社開発した、オフィスビル清掃ロボット用ソフトウエアモジュールのRTコンポーネント化(RTM化)に取り組んでおり、2010年度以降に「走行プログラム自動生成モジュール群」を開発し、2012年度以降には清掃ロボットに実装することで、RTM化した知能化モジュールも併せて提供する方針を明らかにした。ビルオーナーなどと一体となった清掃ロボットの提供により、清掃事業者などのユーザー側が走行プログラムを作成できるビジネスモデルを目指す。
富士重工では、同プロジェクトに参画する以前よりソフトウエアのモジュール化に取り組んでいる。参画後はその見直しに着手して、体系化がなされているかどうか、独立性を確保しているかどうかなどを検証してきた。2008年度からは、次の段階として産業技術総合研究 知能システム研究部門の指導のもとRTM化に取り組み、5月開催のROBOMECでは「画像によるライントレース」など計8つのRTM化を終えたことを、今年度には「磁気タグ認識」など計7のRTM化に取り組むことを紹介した。
2010年度以降は、走行プログラムの作成を可能にする走行プログラム自動生成モジュール群の開発に取り組むことを予定している。走行経路に従って、または建物のCAD図と連携することによりRTM化した知能モジュールをつなぎ合わせて走行プログラムを自動生成する。これにより、ユーザー側で走行プログラムを作成できるようになるが、この生成ソフトの提供は最終段階としており、それ以前は、富士重工側で作成することを計画している。作成した走行プログラムは、清掃現場で調整した後に富士重工の管理サーバに取り込み、認可したうえでユーザーに引き渡す。このような管理体制により管理サーバと現地PCとのデータの乖離を防止することを予定している。
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富士重工が検討している走行プログラムの管理の仕組み。 |
このような体制を目指した理由は、「そもそもソフトウエアはサービスと同義であり、清掃サービスとして清掃事業者が提供することが望ましく、また、このような提供方法により清掃ロボットの用途拡大が見込まれるから」(青山部長)であり、ビルオーナーなどとともにライセンス販売にて提供することを予定している。また、産業用ロボットと同様、ユーザー側でのプログラムの作成が可能になり、「清掃ロボットの普及につながる」(同)と見ている。ただし、ユーザー側で作成できるのは走行プログラムであり、知能化モジュールの新規作成や論理の変更は不可としている。
知能化モジュールの提供に当たり、信頼性の確保に向けた取り組みにも力を入れている。富士重工では、品質を確保するためにアセンブラでソフトウエアを組んでいることで知られるが、RTM化に当たっては、機能ではなく管理しやすさを優先した粒度で進めている。具体的にはソースコードで100行程度、A4用紙2枚程度の分量の粒度にしている。また、その管理は紙ベースで、しかも総組立図から1つひとつの部品が追跡できるJIS製図基準に倣っており、不具合の発生時には1つひとつのソフトウエア部品から問題が追跡できる。さらに、サービスロボットの設計としてISO 9001の認証取得を受けることで、ソフトウエア開発の可視化および思考の統一も図っている。このような取り組みにより、「富士重工側に問題があるのか、それともプログラムを作成したユーザー側に問題があるのかを追跡できる」(同)という。
加えて、RTM化した知能化モジュールの検証にも取り組んでおり、ツムラの医薬品下流製造工程ラインに導入した搬送ロボットシステムにて、RTM化する以前のアセンブラで組んだソフトウエアと同様の動作が可能か否かを検証している。
ただし、コンパイラの精度保証については現在、検討中とのことで、「生活支援ロボット実用化プロジェクト内で取り組み、策定された基準に従って品質および信頼性を保証することになるだろう」(同)という。
(7)コミュニケーション知能(社会・生活分野)の開発
NEC、顔認識や音源方向をもとに話者認識を実現、話者に合わせた対話が可能
NECの船田純一氏は、話者認識を行うためのRTモジュール群の開発状況を紹介し、顔認識や音源方向などの情報をもとに、現在対話している人物の同定および話者に応じた対話内容の切り替えができたことを明らかにした。音声認識した結果と話者とを関連づけることにより騒音環境下で、また照明条件が変化する環境で、個人に対応した対話の実現が期待される。今後、生活環境での機能検証を通じて、実環境下でのロバスト性の向上に取り組む。
開発したのは、顔認識機能などで識別した人物認識結果とマイクロホンアレイで取得した音源方向の検出結果の統合により発話者を同定する技術。顔認識は話者が横を向いていたり、ロボットが移動したりすると識別が難しくなるが、過去一定期間の顔認識結果を保持し、かつ作成したロボット周囲のマップ上で統合しておき、音源方向の情報を組み合わせることで識別する。発話の瞬間時に顔認識ができていなくても、音源方向を頼りに保持しておいた顔認識結果から話者を推定することができる。
これらの機能をRTM化したのが「話者認識モジュール群」で、「話者認識RTコンポーネント(RTC)」に加え、「人物状況検知アダプタRTC」と「音源方向検出アダプタRTC」の3つのRTCから構成される。「入力モジュールの違いを各アダプタで吸収し、かつ認識アルゴリズムを独立させる」(船田氏)という目的から、このような構成にした。また、他機関で開発されている各種RTCの仕様が異なっていても、「アダプタの変更により仕様の差違を吸収できる」(同)という利点もある。
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話者認識を実現する話者認識モジュール群のソフトウエア構成。 |
人物状況検知アダプタRTCは、「顔認識RTC」の人物認識結果と、「センサRTC」からのロボットのカメラ位置情報、「自己位置同定RTC」からの自己位置情報を入力情報として人物認識の結果を算出する。音源方向検出アダプタRTCは、「音源方向検出RTC」からの音源方向の結果と、センサRTCからのマイクロホンアレイのロボット上での方位情報、自己位置同定RTCからの自己位置情報を入力情報として音源方向を算出する。そして、話者認識RTCはこれらの算出情報と音声認識結果を受け取り、音声認識結果に同定した話者の位置情報などを付加して出力する。
マイクロホンアレイやカメラ位置を考慮したうえで人物認識および音源方向を算出することができ、ロボットが移動したり頭部を振ったりした場合でも、話者認識が行えるようにしている。
検証では、Linux上で動作するパソコンにこれらのRTCを実装し、パーソナルロボット「PaPeRo」と接続してPaPeRoのカメラとマイクロホンアレイを入力情報として用いた。また、認識した話者に応じて異なる対話プログラムを実装した。2人の話者が交互にPaPeRoに話しかけたところ、話者に応じて対話内容を切り替えられることができ、このとき検出した音源方向から話者を推定し、人物を同定していることが確認できたという。
NECでは話者認識モジュール群と併せて、画像認識などで検出した人物に接近し、そこに首を向けるための制御コマンドを出力する「トラッキングモジュール群」も開発している。「トラッキングRTC」と「追跡アルゴリズムRTC」から構成され、前者は上述の顔検出RTCとセンサRTCからの情報を入力情報として用いることで、首を振るためのコマンドを生成する。後者は、差し替えることにより追跡アルゴリズムを随時変更できるように独立した構成としている。
NEC、音声に対し身振りや仕草が行える知能化モジュールを開発、PaPeRoで検証へ
NEC共通基盤ソフトウェア研究所 情報セマンティクステクノロジーグループの近藤玲史主任研究員は、開発中の「仕草合成RTコンポーネント(RTC)」を紹介し、音声合成RTCとの連携(図はイメージ)により、発話音声に対し身振りや仕草を適切なタイミングと単位で合成する機能の開発に取り組んでいることを報告した。今後、同社のパーソナルロボット「PaPeRo(パペロ)」に実装し、開発したRTCの機能および円滑な対話が行えるかどうかなどを検証する。
開発した仕草合成RTCは、発話音声の進捗に合わせて時間配分を調整しつつ同期をとる知能化モジュール。ロボットが発話する前に、音声合成RTCから通知された発話テキストの解析結果と、その発話に要する時間情報を受け取り、それをもとに具体的な動作(シーケンス)を生成する。例えば、「おやすみなさい」と発話する際、「その前に、うなずく仕草を開始する」という記述をしておけば、その動作を生成して発話と同期して実行する。
また、音声合成RTCは発話の途中でポーズ(無音声)をとるといった特徴なども、それに到達する前に仕草合成RTCに通知する。ゆえに音声発話を開始した後に、その進捗に沿って身振りや仕草を実行することができる。
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作成した仕草RTCと音声合成RTCとの連携。 |
このような発話音声と同期しながらの身振りや仕草の実行は、これらの時刻の関係を考慮しながらシナリオを開発しなければならない。容易な作業ではないため時間もコストも要する。このようなRTCが用意されることにより、これらの大幅な低減が期待される。今後、PaPeRoに実装することにより、これらのRTCの有効性を検証する。
ただしPaPeRoでは、例えば、うなずく仕草を実行する場合、首部をピッチ軸(1軸)のみに動かせばよいが、ヒューマノイドでは複数の軸を動かす必要がある。仕草合成RTCに実装したロボットの軸構成や動作内容などを通知するようなRTCが別途、必要になる可能性もある。「現在はPaPeRoを用いて検証する段階であり、まだ検討できていない」(近藤主任研究員)とのことで、検証を通じて必要な検討課題を抽出していく。
NECでは、そのほか自然なやり取りを実現するために、「対話読み上げ音声」により音声合成データベース(DB)を構築して音声合成RTCを構成するという工夫も行っている。
通常、与えられたテキストで音声を生成・出力するテキスト音声合成技術では、別途用意したニュースなどの原稿を、固い発話スタイルで読み上げた音声を録音して用いている。おもにアナウンスやメールの読み上げに利用されるからだが、知能ロボットに適した発話スタイルとは言い難い。
対話読み上げ音声は、人同士の対話テキストのみを抽出し再度、そのテキストを読み上げた音声を収集したもので、その内容や表現には人同士の対話を利用しつつ、不自然ではない範囲で単純化している。具体的には、2名のアナウンサーにアドリブを交えながら、あるお題について対話をしてもらい、このときの対話内容を正解表記に統一したうえでテキスト化。後日、同一話者にこれを読み上げてもらい、そのときに録音したものを音声合成用DBに収録している。2段階の方法で音声を収録している。
少数による予備調査ではあるが、この対話読み上げ音声をもとにした音声合成は、従来のテキスト音声合成技術と比較して『自然性が高い』という評価を得ているという。
■関連サイト
トレンドウォッチ
「ソフトウエアベンダーに引き継ぐか、OSSとしての提供が考えられる」UCROAおよび知能化プロの成果物の提供について- 産業技術総合研究所 比留川研究部門長に聞く
http://robonable.typepad.jp/trendwatch/2009/05/ossucroa-acdf.html
2009.02.10 富士ソフト、自律型移動ロボット事業に参入、ロボット愛好家向けにテスト販売へ
http://robonable.typepad.jp/news/2009/02/20090210-6331.html
2008.10.16 NEDO、知能ソフトウエア再利用性向上技術の開発、産総研と富士ソフトに委託
http://robonable.typepad.jp/news/2008/10/20081016-nedo-4.html
RTミドルウエア 連載講座 業界標準技術を理解する その2
ロボットシステムの開発を効率化するRTミドルウエア
第1回 RTミドルウエアの基礎と最新動向(2007年3月執筆)
http://robonable.typepad.jp/trend/2007/09/rt_rtlevel_9554.html
第2回 インタビュー RTコンポーネントの収集という次の段階に入っています 産業技術総合研究所 神徳 徹雄さん(2007年3月取材)
http://robonable.typepad.jp/trend/2007/09/rt_rt_rt_7ab7.html









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