慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科の桂誠一郎専任講師らは、人の動作をデジタル保存し、再現が行える「モーションコピーシステム」(写真はイノベーション・ジャパン2009出展製品)を開発した。マスター・スレーブシステムにより動作の保存・再現を行う。人の動作における力覚および触覚情報を再現することができ、熟練技能者の技能伝承や遠隔医療や遠隔治療、ネットワークを介した力覚・触覚コミュニケーションへの応用が期待される。
同システムは、おもに動作を保存するための「モーション保存システム」と再現するための「モーション再現システム」から構成され、マスター・スレーブシステムを用いて保存と再現を行う。動作の保存では、操作者にマスターシステムを装着してもらい、動作における動きと力加減をデジタル情報として保存。保存した動作を、人の代わりにスレーブシステムを駆動して再現する。
マスター・スレーブシステムには、直動アクチュエータを利用(写真)。また、手の動きの動作・保存にはグローブ型のデバイス(動画)を、指先の動作には8自由度の手首装着型のデバイスをそれぞれ介して行っている。
動作の保存ではマスターシステムとなる、直動アクチュエータのエンコーダで検出した位置情報をもとに操作量を推定し、同時に、位置情報を2階微分して加速度を求めることで操作力を推定している(下図)。これにより動きと力加減、つまり力覚と触覚の再現を可能にしている。
今後、生産分野における熟練技能者の技能伝承や遠隔地でのトレーニングへの応用を進める。さらに、力覚や触覚を介したコミュニケーションなど新たなインターフェースの開発にも取り組む。今年7月に開催された「ワイヤレスジャパン2009」で、NTTドコモが音声や映像に続く対話として、マスター・スレーブシステムを利用した力覚・触覚インターフェースを参考出展していたが、桂専任講師らが開発に協力しているという。
■関連サイト
2009.07.24 NTTドコモ、音や映像に続く対話としてマスター・スレーブ方式の遠隔操作を公開
http://robonable.typepad.jp/news/2009/07/20090724-ntt-99.html
2009.01.29 慶大、力覚情報を可視化・解析するシステム開発、ロボへの繊細な力制御にも利用
http://robonable.typepad.jp/news/2009/01/20090129-1353.html