愛知県産業技術研究所は、1月8日、9日開催の「あいち次世代ロボットフェスタ2010」で、肘を対象にしたリハビリ動作を、理学療法士に代わって行う「リハビリ支援ロボット」を公開。一定動作を繰り返す既存のCPM(Continuous Passive Motion)装置と異なり、理学療法士の動きに近いリハビリ動作が行える様子を披露した。今後、安全性の確保などに取り組むものの実用化は未定としており、センサを実装する「装具のみを切り離し、リハビリ効果を検証する計測システムとしての提案も検討したい」(基盤技術部の牧俊一技師)という。
公開したロボットは、リハビリ動作を計測するカメラ、6軸力覚センサと3枚の認識マーカを搭載した装具、装具と連結した6軸垂直多関節ロボット(安川電機製)、計測・制御を行うパソコンから構成される。カメラで認識マーカを追跡することで動きを計測し、同時に、力覚センサで患者に加えられる力を計測することで、理学療法士のリハビリ動作を教示する。
ロボットと装具との接続には電磁クラッチを使用しており、リハビリ中に力覚センサで過大な負荷を検知したときは、接続を解除するようにしている。力覚センサは、装具内では療法士側のアウターシェルと患者側のインナーシェルとの間に設置している。
今回の開発は、1台のカメラで理学療法士の動作を計測する光学式教示システムにより実現した。計3枚の認識マーカからカメラが最も見やすい1枚を随時切り替えて計測することで、複数カメラでないと困難な遠近、左右上下の傾きを認識することができる。
具体的には、あらかじめ3枚のマーカのマーカ重心点を定義しておき、カメラで捉えた認識マーカの平面パターンと既知の平面パターンとをホモグラフィ行列変換(平面投影変換)を行うことでマーカ重心点を推定する。例えは、計測した認識マーカ上の点の間隔が大きいときはカメラと認識マーカとの距離が遠く、逆に、小さいときは距離が近いことになる。測定対象を他の認識マーカに切り替えたとしても、指定したマーカ重心点を推定することができ、このように多面で認識マーカを捉え、かつ30フレームごとに位置姿勢を計測することで複雑なリハビリ動作の計測を可能にしている(動画)。
原理上、計測精度を向上するためには認識マーカが大きい方が有利だが、「できるだけ目立たない認識マーカを使用してほしいという現場の要望を受け、公開した仕様になった」(牧技師)。小さな認識マーカを使用した場合、計測精度を上げるにはカメラの解像度を上げるというトレード・オフの関係にあり、現時点ではかなり近い距離で計測を行っている。
開発したロボットは、装具を切り離して利用することもでき、加えられる力と肘の曲がり方やリハビリ前後の肘の曲がり方など従来、理学療法士が感覚的に捉えていた角度や力を数値化することができる。計測したデータの変化をリハビリの前後で比較・参照することによりリハビリ効果の検証に役立てることもできる。安全面などを考慮すると、計測システムとしての実用化の方が可能性が高く、「このような提案も検討したい」(同)という。
動画 リハビリ支援ロボットによる動作。教示した動作を再現している。6軸垂直多関節ロボットの使用により理学療法士が実施する複雑なリハビリ動作を可能にしている。
■関連サイト
2010.01.07 愛知県産技研、リハビリ支援ロボ開発、理学療法士の動きをカメラで計測・教示
http://robonable.typepad.jp/news/2010/01/07aichi.html
2009.09.11 産総研などリハビリ体操補助ロボット開発、2010年度には短期リースで提供
http://robonable.typepad.jp/news/2009/09/20090911-2010-6.html
2009.07.08 日本医大とイクシスリサーチ、装着が簡単なリハビリ用電気刺激装置を開発
http://robonable.typepad.jp/news/2009/07/20090708-4f50.html
2008.11.19 東工大 チューブアクチュエータを利用したリハビリ支援装置開発
http://robonable.typepad.jp/news/2008/11/20081119-b4b8.html
2008.03.10 愛知県産技研、2009年度をめどにリハビリ支援ロボ実用化へ
http://robonable.typepad.jp/news/2008/03/20080310-2009-7.html
アクティブリンク 受託R&Dを軸に“松下の子会社らしく”大きく成長していきたい
http://robonable.typepad.jp/robot/2008/03/rd-6795.html