NHKは映像と音声に加え、触感を伝えるテレビを実現する一歩として、仮想の物体に触れた感覚を人に与える装置(「視覚障害者向けマルチモーダル提示システム」の一部)を試作した。力覚提示する複数の専用装置を統合制御することで、物体に触れているかのような感覚を指先と手のひらにもたらす。また、仮想物体表面と指先の距離に応じた“引力”も感じさせることで、目に見えない仮想物体に手を近づけさせる仕組みも備える。視覚障害者のテレビ視聴支援や、実際には触れられない美術品の質感を確かめながらの鑑賞などに応用できる。
NHK放送技術研究所が装置を試作した。力覚提示をする専用装置はワイヤやモータ、センサなどから構成。試作機は専用装置を4台組み合わせた。各装置のワイヤを親指と人指し指、中指、手のひらに取り付けて使用する。
まず物体の形状や表面の状態などの情報を3次元スキャナなどで取得し、パソコンで3次元の仮想物体を作成。その情報を専用装置に伝達する。装置を使う人の指先と手のひらに取り付けたワイヤの張力により仮想物体に触れた感覚を表現する。力覚情報は指先と手のひらの位置に応じて毎秒1,000回更新する。仮想物体の大きさや形状、固さのほかザラザラ感やツルツル感などの質感も伝えられる。
試作機では、仮想物体自体は目に見えない。そのために「ワイヤを取り付けた指先以外で触ろうとしてすり抜けてしまう」「角や突起物の知覚が難しい」「触らないと物体の位置がわからない」などが問題となる。その解決策として仮想物体との距離を感じる力を発生させ、吸い寄せられるように導かれて仮想物体に指が触れる仕組みも実装した。
なお、開発した試作機は27日~30日開催の「技研公開2010」で初披露する。円錐やリンゴなどを仮想物体にしてデモを行う。
■関連サイト
2009.10.02 慶大、人の動作を保存・再現するシステム開発、遠隔医療や技能伝承などに応用
http://robonable.typepad.jp/news/2009/10/20091002-229e.html
2009.07.24 NTTドコモ、音や映像に続く対話としてマスター・スレーブ方式の遠隔操作を公開
http://robonable.typepad.jp/news/2009/07/20090724-ntt-99.html
2009.01.29 慶大、力覚情報を可視化・解析するシステム開発、ロボへの繊細な力制御にも利用
http://robonable.typepad.jp/news/2009/01/20090129-1353.html