つくば市経済部産業振興課の中山薫課長は、7月6日開催の「つくばロボットフォーラム2010/ロボット研究会地域討論会inつくば」(主催:つくば市、モノづくり推進会議)で、今年1月に認可されたモビリティロボット実証実験特区の計画を紹介。【1】安全・安心な社会、【2】低炭素交通システム、【3】交通弱者のモビリティ確保」の3つの切り口から、モビリティロボを活用した社会システムの構築に取り組むことを明らかにした。各種モビリティロボの有効性や安全性、社会受容性を検証した後、シェアリングシステムなどの社会実験の実施につなげる。
つくば市は昨年11月に、「モビリティロボ公道走行実験特区」を提案し、今年1月にわが国で初めて実証実験特区として認定された。実験エリアは、つくばセンター地区とつくばエクスプレス研究学園駅周辺の2個所を想定。いずれも歩道の幅員が広いうえ遊歩道が設置されるなど実証実験の実施に適している。また、モビリティロボにはSegway(セグウェイ)などの立乗り2輪タイプと、自律移動機能を備える電動車椅子など座乗りタイプの2種類を想定している。
実証実験では、上述の3つの切り口から取り組む。【1】については、すでにSegwayが空港や展示会場など施設内警備に活用されていることを踏まえ、街のパトロールや児童の見守りなど屋外警備に拡張する。安心・安全な社会の構築につなげる。
【2】では、電動モビリティの特徴を生かし、環境に配慮した近距離移動手段としての可能性を検証する。さらには、長距離移動はガソリン車で、市街地の移動など中距離移動は電気自動車(EV)で、近距離移動は自転車やモビリティロボでという具合に、適正に使い分けることで低炭素交通システムの構築につなげる(写真1)。
そして【3】では、自宅から病院などの公共施設、商業施設への移動など、高齢者をはじめとする交通弱者の一定エリア内の快適な移動を検証する。
これらの実現に向けては、2段階で取り組むことを予定しており、まずは防犯パトロール実験や通勤モニター実験、高齢者モニター実験などを実施し、モビリティロボの有効性や安全性、社会受容性などを検証。次に、シェアリングシステム(写真2)とタウンセキュリティシステムを構築、検証することで上述の【1】~【3】につなげることを予定している。
前者は、市内の数カ所で乗り捨て可能なレンタルスタンドを設置することで、研究学園駅から数km以内は電車やモビリティロボ、もしくはバスやモビリティロボによる移動を定着させ、低炭素交通システムを確立する。後者は、モビリティロボにGPSロガーやドライブレコーダを付加し、監視カメラなどの情報を組み合わせることで、管理サーバにより一元管理できるシステムを構築。安心・安全な社会の実現につなげる。
いくつかの問題により、いまだ実証実験に着手できていないが、今年中には「安全性を担保することで実施につなげたい」(中山課長)という。
なお、つくば市では「ロボットの街つくば」推進プロジェクトに取り組んでおり、特区認定と生活支援ロボットの安全性検証研究施設の誘致に重点的に取り組んできた。いずれも成功したことから、モビリティロボの実証実験は「同施設と連携を図りながら取り組む予定」(同)という。
写真1 低炭素交通システムとしての可能性。各交通システムの特徴を踏まえ、適正に使い分けることで構築する。
写真2 シェアリングシステムのイメージ。市内の複数個所に乗り捨て可能なレンタルスタンドを設置して、環境配慮型の近距離交通システムを構築する。
■関連サイト
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トレンドウォッチ
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―搭乗型移動ロボの普及に向けた提言(モノづくり推進会議 ロボット研究会 公開討論会より)―
http://robonable.typepad.jp/trendwatch/2010/03/post-100317.html