IHI は、9月14~17日開催の「国際物流総合展2010」でカゴの中にバラ積みした部品を1つずつ取り出せる「バラ積みピッキングシステム」を展示。レーザ距離センサにより部品を3次元計測し、事前に登録しておいた部品の3次元データと照合することでカゴやロボットハンドにぶつからずに部品を取り出し、加工機に投入したり取り出したりする様子を披露した(動画)。
披露したシステムは、おもに6軸垂直多関節ロボットとロボットハンド、レーザ距離センサなどから構成。レーザ距離センサによりバラ積みされた部品を3次元計測し、事前に登録しておいた3次元データと照合することで部品の位置と姿勢に加え、傾きや重なりを認識することで部品を1つずつ取り出す。さらに、整列機で部品を整列した後に加工機への投入や取り出しも行う。
レーザ距離センサにより部品の傾きや部品同士の重なりを認識できるため、カゴやハンドと衝突しない部品を適切に選択して取り出すことができる(写真右下部、上にある部品は青く表示される)。部品の取り出しミスや、部品や装置の破損を防止することができる。万一、部品の取り出しに失敗したり部品とハンドが衝突したりした場合は、リトライ機能により計測から取り出しまでの作業が行える。これにより上述の一連の作業を自動化することができる。
また、レーザ光により複数個所(デモでは9カ所、計測範囲は800×1000mm)で3次元計測を行うため、周囲の明るさの影響を受けにくく、かつ広範囲で高精度に計測できる特徴も備える。
披露したシステムでは、多関節ロボットには独KUKA製を、レーザ距離センサにはパルステック製をそれぞれ使用。ロボットハンドには、部品の内側から2本のツメで把持するものを開発、使用した。ロボットハンドについては、システム構築時に「部品形状に合わせて開発することになる」(技術開発本部 総合開発センターの藤井正和氏)という。また、3次元計測時にロボットの遊びが発生しないよう、ロボットハンドによりレーザ距離センサを把持する構成としていた。
システムの価格は、重量60kgのワークを可搬できる構成で約1,500万円。2010年度に5システム、2011年度には15システムの販売を目指すとしている(記者発表時)。
また2011年度には、すでにグループ内で利用を始めている「セル生産ロボット」の外販も予定している。同社技報[1]によると、すき間が数μm程度の組立に対応できる力制御や、部品の位置ずれやねじ穴位相などに合わせられるビジョンセンサの利用により、専用の整列機や治具が不要なシステム構成になっている。タクトタイムも人手作業と遜色のないレベルという。ロボットによるセル生産では専用治具を用意したり、タクトタイムが長くなったりするためにロボット化するメリットが見出しにくいとされるが、こうした課題がほぼクリアされているようだ。
■参考文献
[1] 小野一也 , 林俊寛 , 藤井正和 , 柴崎暢宏 , 曽根原光治 , “産業用ロボットの新しい展開” , IHI技報 , vol.49, No.1 , pp33-37 , 2009.3 .
■関連サイト
2010.08.25 IHI、バラ積み部品を衝突させずに取り出せるシステム開発、来年にはセル生産ロボも
http://robonable.typepad.jp/news/2010/08/25ihi.html#tp
2009.12.22 これからの産ロボには「やわらかさ」が必要? 力覚センサレス制御と格安の力覚センサ
http://robonable.typepad.jp/news/2009/12/post-091222.html#tp
2009.12.07 東芝機械とKUKA、柔らかな制御で競演、KUKAは非製造分野での利用も視野
http://robonable.typepad.jp/news/2009/12/07toshiba-kuka.html#tp
2009.09.24 IDEC、セル生産でのチョコ停から自動復帰する手法開発、長時間連続稼働が可能に
http://robonable.typepad.jp/news/2009/09/20090924-idec-6.html#tp
2009.07.16 三菱電機と京大、セル生産ロボシステムの高度化技術を開発、ブレーカの組立で実証
http://robonable.typepad.jp/news/2009/07/20090716-18bb.html#tp
2008.09.22 IHI、高速なピッキングを可能にする3次元形状物体認識技術を開発
http://robonable.typepad.jp/news/2008/09/20080922-ihi3-d.html